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詰みたくないので奮闘します~ひっそりしたいのに周囲が放っておいてくれません~【第二部完結】   作者: 橋本彩里
第二部 第二章 学園七不思議

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13.再確認


 その日の放課後、私はルイとカフェテリアに来ていた。

 七不思議の話題も含め今日あったことを話し終えると、うんうんと聞いていたルイが淡く微笑んだ。


「エリー。はい」


 パフェの一番上に乗ったイチゴを差し出され、いいのかなと迷ったのは一瞬のことで、あまりにも美しく光る赤色に私はぱくりと食いついた。


「美味しい」


 甘酸っぱさが口の中に広がり、破顔する。

 たくさん話した後の、水分を含むみずみずしさに喉が潤い気分も上がる。


「それで実際のところどうなの?」


 ルイが腕を伸ばし、動いた際に落ちた私の髪を耳にかける。

 耳に触れたその感触にくすぐったくて首を竦めると、ルイが笑みを深めた。


 腰を浮かせたルイの緑青(ろくしょう)色の明るく鈍い緑の髪は、少し動くたびにふわふわする。

 透き通ったエメラルドの瞳は、木漏れ日の中に空を見上げるような穏やかな気持ちになり一緒にいるだけで安らぐもので、私はルイの持つ色がとても好きだ。


「ふふ。ありがとう。それで実際のところってどれのこと?」


 ルイは聞き上手なので話したいようにあれこれ喋ったので、何について知りたいのかがわからない。

 ネタ的には面白いものはたくさんあるしし、あまり突っ込んでほしくないものもある。


「サミュエルとの真相だよ」

「ルイだってわかってるでしょ? 私とサミュエル様だよ? その日は夕日がとても綺麗で二人きりだったのが、七不思議のこともあって噂になったみたい」


 きゅっと一度口を引き結んでから口を開いたルイに、私はそのことかと表情を和らげた。

 女子寮の噂のこととか突っ込まれたらどうしようかと思った。


「ふーん。でも、サミュエルがエリーを引き止めるくらいだから何か話があったんじゃないの?」

「そうそう。何かあったら頼れと声をかけてくれたの。敬称は外してくれとも言われたわ」


 ものすごく距離が近く顎をくいっとされた状態だったけれど、それは言わないほうがいいだろう。

 なんとなくそれがバレるとルイの機嫌が悪くなるような気がした。あと、マリアにも言わないほうがいい案件だ。


「ああー、なるほどね。ユーグのことがあったからかな。きっとそれを切り出すのに時間がかかったのか」

「そうみたい」


 なかなか要点が掴めなかったので、サミュエルは気を遣いながらそれを話す為に頑張ってくれたのだと思う。

 どのように声をかけようかとずっと考えていたのだろう。


 切り出すまで時間もかかったし、頼れる証明に鍛錬しているところを見せるとか、遠回りだけど効果ばっちりのやり方はサミュエルらしい。

 同じ王子でも、ルイやシモンは話の運びや言葉選びも上手く自然に相手を誘導できるが、サミュエルはそういったところは不器用である。


「イース薬屋店に連れて行きライルと会わせたんだよね。あれからユーグも動いているみたいだし、実際のところ何があったのかサミュエルだけでなく僕もシモンも気にはなっているよ。いずれ報告はもらえると思っていいのかな?」

「ええ。ノッジ様もいずれルイたちに話すことを前提に調べてくれているから」

「なるほどね。ならそれまで待つけど、無茶はしないでね。エリーが傷つくのは嫌だよ」


 ルイには、証明するために必要なのだとユーグをライルに会わせることは告げていたけれど、具体的には話していない。

 私と長い付き合いのあるルイは、私がすることを時に苦笑しながら付き合い、そして見守ってくれる。

 たまに怒られるけれど、それは私が仕出かすからであって頼りになる優しい友人である。


「わかってるわ。無茶しないために今回はノッジ様を巻き込んだもの。ちゃんと報告するから」


 私が断言すると、ルイが長い睫毛を下ろし唇の端で小さく微笑んだ。


「うん。わかった。エリーがエリーらしく、そして僕のそばで元気でいてくれるのが一番だからね」

「私も、ルイがずっとそばにいてくれると嬉しいわ」


 慈しむような双眸はじっと私に注がれており、ルイの気持ちが伝わってくる。


 ――やっぱり、私はルイと、ルイたちと一緒にいたい。


 ルイを初めとした、たくさんの友人が今世ではできた。

 大事に思われて、一緒に過ごす時間は今までにないくらい心がほこほこして、その分情が深くなっていく。


 彼らと知り合った今世を最後まで生き抜きたい。意味のわからない終わり方はもう嫌だ。

 彼らにも充実した時間を過ごしてほしい。

 そのためにも、自分のフラグだけでなく、乙女ゲームの国を巻き込む出来事なんて怖いフラグがあるのなら絶対折ってみせる、そう強く思った。




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