タイムリミット その4
天使を使役するユージ!
圧倒的な異能を誇る魔剣が、輝く時・・・
結界の中で何が起きるのか?
長大なる魔剣から放たれた異能が蒼い光の奔流となって押し寄せた。
黒の3連鬼と揶揄された鋼の鎧を纏う者。
放たれた破壊波動を観た長兄ヌンが弟分二人に命じる。
「ヘット、テット!防御しろよ」
次兄のヘットがニヤリと哂い、
「了解兄貴!」
鎧の装甲を以って防ごうとする。
「なんだよ兄者。こっちから攻撃しないのかよ?」
物足りないと不満を溢すのは末弟のテット。
それでもヌンには逆らえないのか、防御に専念する構えを執った。
「良いか、これは奴の異能を調べるテストなんだぞ。
ナンバー11からしつこく言われてあったんだからな。
地図の巫女も勇者剣士の異能も、我等がモノとする為にな」
「分かってるさ、ヌン兄者」
光が襲い来る前、僅か瞬きする間の会話。
黒の3連鬼と呼ばれる者達が、ユージの異能を図ろうと目論んだのは防御一点張り。
完全に余裕をみせていたようですが?
ドドドドドド!
光の奔流に巻き込まれた瞬間に分からされたのです。
「こ?!こいつはッ?」
「マジかよ?」
「すげぇ・・・・」
自慢の装甲も、自慢だった鎧が破壊波動をもろに受けて。
「俺の鎧に亀裂が入ったぞ?!」
「兄貴!俺は電気系統がやられた!」
「ヌン兄者!俺の鎧が戦闘不能になりそうだぜ?」
余裕をみせていられない状況に陥ってしまった?!
「おいおい、こりゃぁすげぇ破壊力だな」
「ああ、絶対に欲しい」
「奪っちまおうぜ!ナンバー11にくれてやる必要なんてないぜ」
武器としてのサンダルフォンに惚れ込んだ黒の3連鬼。
このままユージを倒して目的を果たそうと?
「待て!この状況ではバレちまうだろうが」
ヌンは弟分を停めにかかると。
「奴がどこで見張ってるかもわからんのだぞ!」
奴・・・つまり主であるナンバー11を指している?
「俺達を此処に手配したのが、奴だってのを忘れるんじゃねぇ」
「そうだった!ちぃいッ」
舌打ちして悔しがるテットも止む無く。
「それじゃぁ兄貴、こいつをどうするんです?」
「決まってるだろう、逃がしてやるんだよ」
ヘットの問いかけに即答するヌン。
「逃がす?そんじゃぁナンバー11には何て言い訳するんだよ?」
末弟のテットが聞き咎めて来ると。
「魔鋼鎧が故障したって言えば良いだろうが!」
「あ、なるほど。機械の所為にすりゃぁ良いんですな」
自分達には落ち度は無かったと?機械に責任転嫁を?
「そういうことだ。
奴が命じたんだからな、勇者剣士の異能を探って来いって」
「なははははッ!さすがは兄者」
黒の3連鬼は、これ以上の戦闘を放棄する構えをみせます。
ユージの放った破壊波動を手にするのが目的に変わったのです。
「しかしよ~。
奴の異能をどうやって奪えるんだよ兄者?」
「そいつは帰還してから考えれば良いさ」
まだ何も思い浮かばないと、ヌンは弟分達に答えるのです。
「だからこの場から退くんだ。
やっつけちまってから慌てたって、どうしようもないんだからな」
このまま闘って勝ったとしても、魔剣を手に出来るとは限らないと考えたようです。
「そんじゃ・・・結界を解いてやろうじゃないか」
ユージを見やり、ニヤリと哂う黒の3連鬼。
果たして狙い通りに事が運ぶのか否や?
爆焔が晴れた跡。
そこには黒の3連鬼が現存していた。
「もう一撃いけるか?サンダルフォン」
「「チャージに懸かるタイムは30秒!」」
主人たるユージに告げられたのは、その間に攻撃を喰らう虞があるとの警告。
「攻撃を喰らうのは不味いな。
守勢にたてば再攻撃のチャンスは図れないかもしれない」
そう、それに・・・
「萌に恐い目に遭わせるなんて、出来っこないだろう?」
俺に攻撃が集中すれば、きっと萌の奴は庇おうとするに決まってるんだ。
下手をすれば・・・最悪だと・・・萌は連れ去られちまうかもしれないんだ。
「死んでもそれだけは赦す訳にはいかないッ!」
奴等が無傷なら、俺に出来ることは唯の一つ。
「攻撃に集中するぞ!
敵の攻撃を受けたって構うな!チャージに全力を尽くせ!」
攻撃は最大の防御とは、良く言ったもんだぜ。
「「了解、我が主よ」」
サンダルフォンも分かってくれたようだな。
俺の護るべき者が此処に居るからってのが・・・さ。
「ユージ?ちょっとあれ観てよ!」
天使に下命してたら、萌が指さしたんだ。
「観てよほら!結界が破れていくんじゃないの?」
天井で廻っていた魔法陣が解き崩れていく。
それを観た瞬間に分かったんだ。
「奴等が・・・逃げて帰ろうとしている?」
敵から眼を離してはならないのは分かっていたんだが、つい見ちまった。
結界が解かれるってことは、黒の3連鬼に損害を与えられた?
もう一度的に眼を向けた時には。
「しまった!どこかへ行きやがったのか?!」
既に姿を確認出来なかったんだ。
戦闘は俺達の勝利に終えられたのか?
「勝ったんだねユージ?」
「違う、奴等は何らかの都合で撤退しただけなんだ」
萌には分からないのかもしれない。
だけど俺と天使には分かっていたんだ。
奴等は俺達をワザと解放したんだってのが。
「次に遭う時にこそが・・・決着をつける刻ってか?」
なぜ俺達を解放したのかなんて分からない。
だけど、近い内に必ずまた。
「今度遭えば、間違いなく最期まで闘う事になるな」
覚悟を悟ったんだ。
本当の闘いってモノの怖ろしさを。
シュンンンンン~
結界から解放された俺と萌。
先に闘いに向かったアリシアが待っていると思ったんだが?
「あれ?アリシアは?」
萌の方が先に探したんだけど、辺りにはニャン子の姿は見えないんだ。
「てっきり待ちくたびれていると思ってたんだけど?」
苦戦した俺達が、時間経過を思って探すんだが。
「おかしいね、ゆー・・・兄。
アリシアの方が先に闘い終えてると思ってたんだけど?」
炎の結界に連れ込んだ相手が普通の人間だったから、簡単に勝利して帰って来るとばかり思ってたんだ。
「そうだなぁ、あいつのことだからうろちょろしてるのかもしれないけどな」
俺だってまさか灼炎王が苦戦してるなんて考えても居ない。
相手が女性だったから、敢えてアリシアに任せたんだけどな。
「そうだねぇ、アリシアが負ける筈がないもの。
きっとアタシ達を探しているんだわ」
後から戦闘に巻き込まれたのをアリシアは知らないだろうからねって、萌が言うんだ。
そうだと思うけど・・・何か心が疼くんだよ。
なにか・・俺のニャン子に良からぬ事が起きてはいないかと・・・
ユージと萌が無事に戦闘を終えられた頃。
もう一つの結界では戦闘が続いていたのです。
灼炎王の貼った結界・・・そこでは?
ゴオオオオオオォッ!
爆発焔がそこら中で巻き起こっているのでした。
一体何が?!
「お~ほっほっ!逃げ回るだけじゃぁ勝つなんて出来っこないわよ!」
鋼の装備を身に纏うダレットが嘲笑うのです。
「今迄よくもまぁ躱し続けられたものね。
さすがはニャン子星人だけあってすばしっこいわ」
結界の空間に浮かんだダレットが地面に這いつくばるアリシアを見下ろしていたのです。
「ニャン子星人は関係ないでしょうに!」
灼炎王の魔法衣は所々が破けて痛々しくも見えたのです。
「機動戦闘服を着るなんて・・・卑怯にも程があるわよ」
ダレットが着ている機械服を見上げて、アリシアが愚痴るのです。
「しかも、それって。
旧型だけど、女神級の官給品じゃなかったっけ?」
保安官補事務所で観たことがあったのです。
機動女神だけが着る事の許される魔鋼鎧って物を目にして。
「ほほぅ?なまじ保安官事務所に所属しているだけはあるようね。
確かにこれは旧式の魔法衣って奴よ、官給品のね?」
官給品をどうして?
なぜ悪の組織であるドアクダーが持っているのです?
「今日は小手調べ的な意味合いで来たから。
この装備だって、十分だと思ったのよねぇ・・・」
そうしたら・・・意外なことにニャン子が手強かった?
「あなたにはびっくりしたわよ。
多寡が属性魔法衣で、ここまで粘れるなんてね?」
見くびっていたと、ダレットは苦笑いを浮かべるのです。
「見損なうな!私の結界さえも破れない癖に!」
挑発するアリシアに、ダレットの笑みが消えました。
「破れない・・・か。
じゃぁ、お遊びはこれでお終いにするわよ・・・馬鹿猫」
売り文句に買い文句。
でしたが、ダレットの言葉は自信に裏付けられていたのです。
「ファンネル!」
それまで機動服に吊り下げられていた戦闘ポッドが腰部分から離れ。
「旧型とは言え、戦闘妖精6体を躱し切れるかしらね?
さっきまでのミサイルなんかじゃなくてよ、馬鹿猫」
ミサイル?!
そんな物の攻撃に晒されていたのですかアリシアさんは?
「対人ミサイルなんて生易しいものじゃないって、知ってるでしょう?
フォトンメーザー砲を装備したポッドからは逃げられなくてよ?」
フォ?!フォトンメーザー・・・って、あのレーザー光線の上を行くやつですか?
所謂、拡散ビーム砲って奴ですね?!
「くッ?!」
知っていたアリシアが唇を噛みます。
それが何を意味していたのか・・・
「黒焦げ猫になれば?!
真っ黒けになっておしまいなさい!」
ダレットが宣言したのです。
この結界を破る方法は、貼った張本人を抹殺すれば済む事なのだと・・・
ユージと萌は図らず逃れられたのですが。
アリシアには危機が?
最終局面で、ニャン子は勝つ事が出来るのでしょうか?
次回は?きっと?
ラストではありませんW
次回 タイムリミット その5
君は・・・生き残れるのか?なんちゃって




