タイムリミット その2
結界に連れ込んだアリシア。
勝利を確信しての行動だったのですが?
今度の敵はかなり・・・やばス
現れた3つの影。
人の形をとってはいますが、ドアクダーの要員だと思われます。
ユージが萌を庇いつつ身構え、天使を呼び出すタイミングを計ったのでした。
3人に因って囲まれたユージと萌。
影から感じられるのは、今迄のドアクダー怪人とは比べものにならない程の悪意。
「その娘を渡して貰おうか、兄ちゃんよぉ」
「大人しく俺達に渡したのなら、考えてやっても良いぜぇ」
「俺達黒の3連鬼に歯向かっても無駄だぜぇ」
抑揚のない声。
何も感情をも表さない、低い声で脅して来るのです。
しかも、自分達を黒の3連鬼と名乗っています。
間違いなく悪意のある男達。
確かめる必要なんて無い程のドアクダー怪人。
唯、影は男の形をとっていて、どんな異能を持つ者なのかが分り兼ねたのです。
3対1。
不利は承知でしたが、ユージは敢然と言い放つのです。
「無駄だって?
俺が萌を手渡すとでも思っているのか?馬鹿かよお前等は!」
にじり寄る3体の影に、歯向かう意思を明らかにしたのでした。
どれだけ相手が強かろうが、どれ程打ちのめされようが。
「死んでもお前等に萌を渡すもんか。
脅したって無駄だって言ってるんだよ3馬鹿ドアクダー!」
喧嘩を吹っ掛けられて、すごすご尻尾を巻くユージではありません。
しかも萌を賭けているのですから、尚更に退く訳にはいきません。
ですが、3つの影からは嘲るような笑いが巻き起こったのです。
「ほぉ~う?馬鹿に馬鹿って言われちまったぜぇ?」
「やんわりと促してやったのになぁ?」
「死んでもだってよ!だったら死んで貰おうぜぇ」
げらげら笑う3つの影。
星明りも月明かりも、そして街灯を受けても。
3つの人影は顔さえも分からない暗さ・・・黒い影を纏っている様に観えたのです。
それを観ても、3体の影が人為らざる者だと分かり得ます。
取り囲まれたユージに迫るドアクダーが、いつ襲いかかるのか?
どんな手で萌を奪おうとしているのか。
ユージは油断なく敵と対峙する・・・右手の紋章をいつ解き放つかを考えつつ。
灼炎王の結界でも、二つの力が対峙していたのです。
片や連れ込んだ灼炎王のアリシア。
もう片方は嘲る男装の女性・・・金髪を靡かせる蒼い瞳のドアクダー。
「剣戟でもする気?
生憎だけどねぇ、私はとっととここから出なきゃならないのよ。
地図の巫女を連れて帰らなきゃいけないんだから」
邪な口元から溢れるのは、灼炎王を倒せるとの余裕が観えます。
「言ってくれるじゃない!
ここから出たかったら私を倒す事ね」
負けじと灼炎王も大剣を突きつけて言い返しました。
「良いのか?本当に滅ぼしてやっても?」
レーザー剣を正眼に構え、男装の麗人が決めつけて来ます。
「ニャン子星人の異能位で、このダレットに勝てると思うのが浅はかだと言ったのよ!」
「そうかしら?やってみたら分かるわよ」
二人は手にした剣を振りかざし合いました。
ザッ!
「!」
「ニャうッ!」
間合いを取る事も無く。
二人が各々に剣を相手へと叩きつけたのです。
ギィンっ!
レーザー剣と大剣シェキナが火花を散らします。
ずざざッ!
互いに第一撃は相手の手並みを探ったようでした。
飛び退いた灼炎王と、何食わぬ顔の麗人。
「その程度の腕前で、次期総統になる私に勝てると思うのが大間違いなのよ」
「煩いっ!」
飛び退いた灼炎王が言い返そうとしましたが。
バサ・・・
纏っていた灼炎王の羽衣の袖が斬られているのが判ったのです。
「な?!いつの間に?」
剣と剣が火花を散らしたのは分かっていました。
それなのに、どうやって?
灼炎王が、眉を顰めて考えるのは。
「ダレットとか名乗ったみたいだけど。
どこかで観たことのある名前だと思うんだけど・・・」
思い出そうとしていたら、もう一つの言葉がヒントとなりました。
「次期総統とか言ってた。
ドアクダーの総統に成れるほどの実力者だってのは間違いなさそう」
この星に来ているドアクダーで、相当の実力者だとすれば?
アリシアはミシェル保安官から渡された手配書を思い出したのです。
それはニャン子となってユージの元へ来た時にも持っていた、ドアクダーを記した手配書でした。
「そうか?!こいつが?
こいつがアルジのユージを苦しめた・・・大幹部ナンバー11なのね?!」
もう一つの未来で起きた惨劇。
そこで暗躍したのはナンバー11と記されたドアクダーだったのです。
自分の栄華を極めんとして、反物質転換装置を稼働させようと目論んだ巨悪。
その存在が目の前に現れた?!
ダレット・ヨッドと名乗るナンバー11の襲来。
遂に本ボシと出遭う事になったアリシア。
ミシェル保安官からヨクヨク注意を受けていたのを忘れ去り、この場で処分すればと考えてしまうのです。
「こいつさえ捕縛してしまえば!
何もかもがハッピーエンドを迎えられるんだ」
敵ダレットがどれ程の力を持っているかも探らず、唯闇雲に立ち向かおうとするアリシア。
「お前さえ居なくなれば!
お前なんて巨悪が居なければ!
ユージ様も珠子さんも、そして左銀河さえもが無事に終えられるんだ!」
幸せな未来に成れる・・・そう考えるのは間違ってはいないのですけど。
相手が唯のドアクダーではないとは、考えが及ばなかったのでした。
「私の結界の中に閉じ込めてやる!黙って戦闘不能になりなさいッ!」
羽衣を斬られた事なんて忘れてしまったのか、灼炎王が大剣を大上段に構えて飛びかかるのでした。
「斬るニャッ!」
しかし・・・
「愚か者め!」
嘲笑うのはナンバー11と呼ばれたドアクダー大幹部。
「その異能ごと、滅び去るが良い!」
レーザー剣に付いていたボタンを押し込み、続けてベルトのバックルを叩きながら吠えました。
ボタンが光を放つと同時に、ダレットが着ていた優雅なスーツが変わり始めました。
「装着!魔鋼装備」
白銀に輝きを放ち・・・
鋼の装甲を纏う・・・
・・・金属製の戦闘服へと・・・
おおっとぉッ?!
掟破りの悪役勝利か?!
敵の戦闘力は計り知れないぞ?
そして現実世界のユージにもピンチが?
次回 タイムリミット その3
勇者剣士の底力を魅せてみろ!




