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機動女神エターナル・レッド ケモ耳ニャン子は俺の女神様?  作者: さば・ノーブ
第3章 Heaven On Earth 地上の楽園
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悪夢 再び その1

やって来るのは?


熱い!暑い?!


夏休み!


(学生はいいなぁ・・・)

東雲高校二年生の野良有次のらゆうじにとって、今年の夏休みも別段変わった出来事なんて起こり得ない筈でした。

そう、一月前の段階では。



「ぐぉおらぁあぁッ!」


朝から吠えるユージ?


「暑いって言ってんだろぉ~がッ!」


そりゃぁ、夏真っ盛りですもの。


リビングに駆けつけて来たユージは、まるでゆでだこの様に真っ赤な顔をしているんですが?


「あ~おはよ~」


リビングで迎える萌は知らんぷり。


「犯人は何処に逃げやがったんだよ萌?!」


犯人?・・・とは、物騒ですね。


「そこ」


冷静な一言で、萌が指し示したのは?



「ごめんニャァ~~~~~」


ニャン子ひっかけフックに吊り下げられているアリシア?!

何をやらかしたのでしょうか、本人も謝っているくらいですから?


「アタシはゆーが自堕落な夏休みを送らないようにって。

 早く起こして来てって・・・頼んだだけだったんだよ?」


萌さん曰く、いつまで経っても起きて来ないユージを起こしにアリシアを向かわせた?


「そうニャが~・・・起きなかったニャ、ユージは」


「ほほぅ?起きなかったからと言ってイフリートに変身してまで起こすのか?」


・・・それは確かに暑いですな。


「炎の結界まで貼って、俺を叩き起こしたのは何故かを問いたいんだがな?」


「・・・単なる出来心ニャ」


出来心で炎に巻かれるのは・・・堪りません。


「出来心で危うく熱中症になる処だったんだぞ!」


・・・いや、ユージ君。熱中症で済む訳が無いでしょう?


二人の会話を聞いている萌が、クスクスと笑っています。


「萌!そもそもお前がアリシアに起こすように言うから、こんな目に遭ったんだぞ」


笑っている萌にもユージの怒りが向けられるのでしたが、萌は気にもかけずにこういうのです。


「あらぁ~?夏休みだからってお昼まで寝てる方が問題だと思うんですけどぉ~」


「う・・・ぐッ?」


突っ込み返されるユージは、義妹にぐぅの音もでません。


「き、昨日はバイトだったし。深夜放送で海外のニュースを調べていたんだよ」


「で?夜更かしついでにお昼まで寝ていらっしゃったと?」


・・・良くあるパターンですね、ユージ君。


「そうニャ~。アルジは夜更けまでテレビやスマホに執りついてたニャ。

 アタシがこっそり冷蔵庫を漁りに来た3時ごろまで起きてたニャぞ」


そう?そんな時間まで起きていたのなら・・・って?

おい、アホニャン。冷蔵庫を夜中に漁っていたのかよ?


「ふ~~~ん。3時頃迄何を観ていたのだか?

 ねぇ、コソ泥の犯人アリシア?」


あ・・・聞き逃して貰えなかったようですね。


「悲ニャアっ?!うっかり口が滑ったニャ~~~~」


もう遅い。


「夜更かしで起きて来なかったゆー兄とコソ泥のアリシアには、お昼ご飯はあげません!」


「悲ぃいいいいいッ?!損ニャぁ~」


これはアリシアにとって致命的とも言えましょう。

お腹が減って、猫掴み状態のままダラ~ンとのびてしまいました。


「俺は別に良いけど。ニャン子にだけは何か食わせてやれよ萌」


生欠伸するユージが、罪一等を減じてやってくれと頼んで来るのです。


「そもそも原因は俺にあるんだからさ」


ダイニングに建つ萌に詫びるユージが頼んでみると。


「ほぅ?ゆー兄は反省すると言うんだね。宜しい、今回だけは見逃してあげる」


笑う萌が腕を組んで許すと言ってくれました。


「それじゃぁ、二人には素麺そうめんでも食べて貰いましょう」


で、既に用意されている冷えた素麺を出してくれたのです。

初めから何も出さないなんて考えていなかった、優しい萌が笑っていました。


「ほれ、アリシアも感謝するんだぞ」


ユージがニャン子フックから降ろして促すと。


「ありがとうニャ~、萌たん」


食い気を募らせているアリシアが涎を溢して言うのでした。



夏の昼下がり。

喉越しの良い素麺は、りっぱな昼食なのです。

冷えた麺をツユに着け、一息に喉をくぐらせる。


「美味しいニャ~~~」


アリシアも素麺の味が気に入ったようです。


「でしょ~?」


箸を奔らせる二人を前に、萌は嬉しそうに見ています。


「なんだか、懐かしい味がするな」


ユージも気に入ったようで。


「このふにゃふにゃじゃない麺ってのが。

 なんだか母さんの造ってくれた素麺みたいで・・・」


つい、思い出のある夏の味だと言ってしまったのです。


「そ、そう?

 ゆー兄はお母さんが造ってくれた味を覚えているんだね?」


ユージが溢す迄はニコニコしていた萌の表情が、一瞬強張ったのです。


「ああ、もう十年以上になるかな。

 でも、母さんとの夏の思い出と言えば素麺の味とかしかないから」


「そ・・・そうなんだ・・・」


気に留めていないユージが答えると、萌の表情が曇ってしまったのです。


「なんだよ萌。別に気にする事じゃないだろ?」


「だって・・・悲しいじゃん?」


ユージは自分の悲しむべき過去を、萌が気にする事はないと言ったのですが。


「アルジのユージは気付いていないか」


こっそり二人を観ているアリシアは想うのでした。

悲しいと言った萌の中には、秘められた珠子の心が悲しんでいるのだと思うから。


「いつになったら打ち明けるつもりなの・・・珠子さんは」


アリシアは、二人を観ながら思い出していました。

昨日、二人っきりで話し合えた、その最後に訊いた珠子の吐露を。








「ねぇ珠子さんはユージへ、いつになったら打ち明けるのですか?」


アリシアは萌の中に居続ける珠子の魂に訊いたのです。

いつまでも萌のままであり続けて良いのかと。


「このままだったら、きっと後悔してしまいますよ?」


萌という架空の少女でいるのなら、珠子という母は永遠に失われた存在になるのだと。


ですが、珠子の魂は答えるのでした。


「私はもう、本来の姿たまこに戻ってユージに逢わない方が良いのかもしれない。

 この姿のままで、萌となったままで。

 傍に居続けられたのなら・・・報われるかもしれない」


地図の巫女モエルの願いを聴き遂げた時から、珠子の運命は定まっていたようでした。

母として珠子の姿に戻る事は、既に時を逸してしまっているのだと。


「もしも元に戻ってしまえば、萌という娘を護り抜くと言い切ったユージはどうなるの?

 あの子はもう、萌と契ってしまったというのに。

 私が萌でしたなんて言えると思う?」


「そんな?!

 なぜ珠子さんは姿を変えてでもモエルの願いを聴き遂げようとしたのですか?」


拒絶する珠子へ、アリシアが訳を訊ねると・・・


細く微笑んだ萌の顔で、母の魂が教えました。


「未来を変えたかった。

 あのままでいたら、待っているのは希望の消えた未来あすだったから」


「ま、まさか?!御存じだったのですか?」


アリシアは珠子が知っている未来から来たのです。

教えられた歴史では、珠子もモエルにも明るい未来はやっては来ない。

あるのは反物質と化して宇宙の塵と果てる・・・絶望のみ。


「宇宙船の未来予想に因って・・・ね。

 あのままであれば、待っているのはユージをも破滅へと追い込む暗黒な未来。

 破滅を迎える時、あの子は究極の選択を迫られる。

 勇者剣士となったユージに因って、邪悪を滅ぼす最後の手段になるの私達は」


「それが・・・最期の手段だったのですね?」


アリシアは珠子の未来がどうなるのかを知っていました。

歴史では悲劇を回避出来なかったのを知らされていたから。


勇者剣士に覚醒したユージを地球上から連れ出すように命じられていたのも、類い稀な異能を誇るユージを救う為。


アリシアが地球に赴いた訳は、保安官になったユージの願いを聴き遂げる為でした。

自らに因って破滅へと導いてしまった過去を、より良い結末へと変えるのが目的なのでしたから。


アリシアに因ってユージを救い、且つ又珠子をも救う。


その為にアリシアは此処に来たのでした・・・が。


歴史は自分が地球に来る前から変わっていた。

どの時点から?なぜ替えられたのか?


それが珠子の魂に因って知らされたのです。


「あなたは未来から来たのでしょう?

 だとしたら、私が何を願ったのかも分かるでしょう?」


アリシアの居た未来では、地球という惑星は破滅の時を迎えてしまう。

もしも歴史通りに進んだのならば、後僅かで破滅の時がやってきてしまう。


「変わるのなら。

 もしも変えれるのなら。

 勇人さんやユージを守りたいと思う事は罪なことなのかしら」


母としての想いが、今を造ったという。

萌を造ったのはモエルの意志だけではないのだと、珠子は語るのでした。


「罪に問われるのは、珠子さんや巫女を弄ぶ邪悪。

 きっと未来は変えられる筈です、いいえ。

 変えれなければいけないのです!

 その為の機動少女、明るい未来の為の機動女神なのですから」


アリシアは自らの運命に立ち向かおうとしている珠子へ知らせるのです。


「既に私の女神様がお越しになられています。

 嘗ての歴史から書き換える為に、私を此処まで送り込んでくださいました。

 必ず!地球を破滅から護ってくだされますよ」


力強く、そして未来は切り開かれると諭したのです。

運命が変わるのは間違いないのだと。


「あなたが願う様に。

 この星は、この世界は・・・護り抜かれる筈ですから」


絶望やみ希望ひかりに変えたのは珠子だったのだとアリシアは教えられました。


珠子こそが、本当の継承者。

本当の女神の使い・・・天使エルなのだと・・・・







・・・・(=^・^=)・・・・






萌は知らず知らずの内に珠子の影響が出始めていました。


料理だって、家事洗濯物だって。

昔からユージの世話を焼きたがっていた事からも伺い知れました。


秘められ続けて来た珠子の想いが、地図の巫女を継承して尚更に強まって来たのです。


ユージの傍に居たい。

ユージの助けになりたい・・・と。


以前であれば、口喧嘩でもしていた筈なのに。

今はじっと見詰めるだけ、じっと想いを秘めるだけに観えたのです。


彼女もえの本当の心はどこにあるのでしょう。

4年前にドアクダーに襲われた際に初めてユージと出逢った娘の心は?


ときめきを放った少女の心は、珠子だったのでしょうか?



「ユージはきっと解ってくれている。

 アタシがユージを・・・萌がユージを好きなんだって。

 兄としてではなく、独りの男の人として見ているって・・・」


萌と名付けられた少女じぶんは、誰から生み出されたのか。

自分のルーツが誰からなのか。


萌は義母であるアメリアから知らされていたことがあったのです。


自分はアメリアの実子ではないという事を。


「だから・・・母とは認めれなかったんだよ。

 だから・・・ユージをずっと求め続けていたんだよ?」


珠子を宿す?珠子が萌となる?


一人の躰に二つの運命いのちを潜ませるのは、罪作りなのでしょうか・・・

夏の昼下がり。

野良家にもやって来るのは・・・素麺でしたか!


そーめんって、実は作り方によって全く違うんですよね。

堅めで茹で上げると冷やしたときにこしが残るんですよ。

ら~めんとは違って麺自体にはコシがありませんからね。


・・・素麺談義はおいておき。


間もなく現れるのです。

ドアクダーさんが。


だから、今は。

そっとしておいてあげましょうW


次回 悪夢 再び その2

ほんわかしていたら、とんでもないことに?何かが来ます!

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