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機動女神エターナル・レッド ケモ耳ニャン子は俺の女神様?  作者: さば・ノーブ
第2章 ブルーブラッド
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ずっと君を護る! その3

瓢箪から救出される二人。


ユージの元へ帰るのか、それとも?


ニャン子なアリシアは何処に帰るというのでしょう?

下僕を嫌がっていたから、もしかすると故郷に帰る気では?

魔剣に因りドアクダーは潰え去った。


残されたのは消滅を逃れた琥珀浄瓶。


次にやらねばならないのは、二人を無事に救出するだけ。




転がっている魔法瓢箪を掴み、口先から中を覗き込んでみた。


「おい、アリシアにシンバ。

 無事なのか?返事をしてくれ」


この中に二人が閉じ込められている筈なんだ。


「アルジィ~面目ないニャ~」


「ごめん~、閉じ込められちゃったよ~」


直ぐに二人からの答えが返って来た。

どうやら二人は無事の様だ。


「今、助けてやるから」


そう言った俺だけど、キンギンがばらした解放手段に疑念が湧いていたんだ。


「単に逆向けにしたからと言って解放出来るとは思えないな」


キンギンがうっかり暴露したやり方だけど、何か釈然としない。


「サンダルフォンも言っていたっけ。

 囚われた者が何処に戻るべきかを認識しているかが鍵だって」


俺は二人が何処に戻るべきなのかが分らなかったんだ。


「サンダルフォン、二人にどう話せば良い?」


「「二人が願う場所。

  二人がこれから伴に居たいと望む者の元へ。

  望む者と望まれる者が同じ想いならば・・・道が開けましょう」」


使徒天使サンダルフォンが教えてくれた。

アリシアとシンバそれぞれが望む人って、ここには居ないのではないか?


「もし、遠い宇宙の果てだとしたら?それでも解放されるのか?」


アリシアの望むのは遠い宇宙の果てにある故郷に住む大切な人ではないか?

心の片隅に棘が刺さった気がしたよ。

こんな形でアリシアと別れるなんて・・・辛過ぎるだろ?


「でも、アリシアを助けられるのなら・・・」


瓢箪から解放出来るのなら・・・助ける事が出来るのなら。


「仕方がないよな・・・帰れるのなら、それで良いんだよな」


元々、アリシアは保安官事務所に帰りたがっていたもんな。

こんな辺鄙な星なんかで暮らしているより、出身地まで戻って出直したがってたもんな。


地球に存在している筈の保安官の情報を貰って、手配書とやらを渡せば任務は終わるんだから。


「そうすればドアクダーに悩まされる事も無くなるもんな」


間違いなくアリシアにとって最善の方法だろう。

俺達なんかに関わっているより、この際そうするべきなんだろうな。


でも・・・でもさアリシア。


「アルジの俺を忘れないで欲しい・・・な」


勝手な言い草だとは思うよ。

でも、俺の中でアリシアの存在は無くてはならない程までに大きくなっていたんだ。


「このまま別れる事になっても・・・覚えていて欲しいんだ」


琥珀浄瓶を持つ手が、微かに震えてしまう。

もし、サンダルフォンの教えてくれた通りなら、解放した瞬間に別れが訪れてしまうのだと思って。


「「如何された、我が主よ?」」


手に持った瓢箪を逆向けにしない俺へ、魔剣が促して来る。


「「二人が何処に居るべきか。

  ノラ・ユージも願うと宜しかろう」」


魔剣は促す時、俺をアルジと呼ばずノラ・ユージと呼んだ。


「「二人が望むのが誰か。

  ノラ・ユージも願えば宜しいかと」」


誰を?どこの誰を?

俺が望むのか?俺も願うのか?


「そうか・・・分かったぜ。良く知らせてくれたなサンダルフォン」


そうだ。

アリシアがもしも願ってくれたのなら。


その答えは瓢箪を逆向きにしたら分かる筈だよな。



決めた!

僅かでも希望があるのなら願う事にするぜ。




「アリシア、シンバ助け出してやるぜ!

 今から俺の言う通りにするんだ、分かったな」


了解ラジャーニャ~」

「おっけ」


二人に声は届いている。


一か八か・・・やるしかない。


「瓢箪を逆転させるから、そのタイミングで願うんだ。

 二人それぞれ、想う人の場所へ帰りたいと願え。

 心の中に居る人の元へ帰ると・・・祈れ!」


「ニャ?!どいう意味ニャ?」


アリシアは当惑気味に訊き返して来る。


「どういう意味もない。

 帰るべき場所へ帰りたいと強く願うんだ。

 その人の心と繋がったのなら、道が開けて解放されるんだ」


「も、もしも想い人と繋がらなかったら?」


シンバも不安気に訊き返して来た。


「強く願えば、きっと繋がる筈だ。

 迷わず祈れば心は通じ合えるんだ。

 失敗を懼れるんじゃないぞ!」


俺は祈りは必ず通じるんだって、二人に教えたんだ。


「わ、分かったよ」


シンバは心に期す人を思い描いたようだ。


「アルジ。最後に一つ訊ねたいニャ」


心細げな声で、アリシアが訊ねて来る。


「もしもアタシの想いが届けば、その人は喜んで迎えてくれるニョだろうか?」


そうだよな・・・多分。


「アリシアの想う人が俺だったら。喜ぶだろうな」


少しだけ・・・少しだけ、俺を想ってくれと知らせたんだ。

アリシアが気付いてくれるかは賭けだったけど。


「そうニャ?そうニャったら良いけどニャ」


気付いていないのか、アリシアは不安気に答えただけだ。


もう・・・これ以上時間をかける訳にはいかない。

決意が鈍ってしまうかもしれないんだ、俺の気持ちって奴が。


「さぁ!やるぞ。

 二人共準備はいいか?」


「らじゃ~×2」


二人の声がハモッた。




 すぅ・・・



息を呑む瞬間。


俺は勢いよく瓢箪を逆転させる。


「祈れ!帰るべき場所を!」


叫んだ俺は瞼を閉じた。


そして・・・願った。



 アリシアは此処に居ろ!俺の傍に居続けろ!!



俺の祈り、俺が描いた希望・・・



琥珀浄瓶が運命の瞬間を紡ぐ。



  


   ビシャッ!




目を瞑っていても感じる。

瓢箪の口先から噴き出される・・・捕えていた異能者を吐き出すのが。





   ビュルルルゥッ!




間違いなく二人が吐き出されたんだ。

解放されたのは間違いじゃない、間違ってなんかいない。


助けることには成功した。

だけど、俺は眼を開けれなかった。


もし、目を開けてそこに居なかったのなら・・・アリシアが。


俺は失意で叫んでしまうかもしれない。


「ア・・・アリシア」


噛み締めた口から零れだす名前。


「シンバ・・・」


もしも俺を頼ってくれているのなら、彼女も居て欲しい。



「助かったよアルジのユージ!サンキュ~」


明るいシンバの声が俺の耳を打った。


「いやぁ~、アルジのユージがボクを望んでくれていたなんて光栄だよ」


明るく話すシンバの声だけが聞こえて来た。


確かにシンバが帰って来てくれたのは嬉しいんだ。

だけど。


だけど。


だけど・・・


アリシアの声が聞こえない。


もしかすると、本当に宇宙の果てに帰ってしまったのか?


恐くて目を開けれない。

そこにニャン子が居なけりゃ、俺は・・・





 どす!




不意に背中をどやしつけられた。


アリシア?!じゃぁないな、この手の感触は。


「ゆー兄ぃ。上を向いてごらんよ」


モエルさんから替っていたのか萌に。


いつもなら怒ったような声で教えて来る筈なのに、何故だか優しい声だけど?


「萌か?上ってなんだ・・・」


瞼を開けて萌が居る後ろへ振り返りつつ、上を見上げた。


見上げた・・・よ。


あの日のように。






 「ニャ~~~!」





振って来る。


あの日と同じように。


ニャン子なアリシアが!



「アルジィ~~~!繋がったニャ~~~!」



炎の結界に赤毛の少女が舞い降りて来る。


瞳に焼き付く。

俺のニャン子が、再び舞い降りて来たのが。


「アタシのアルジはユージだけニャぞぉ~!」


思わず手を指し伸ばしてニャン子を待った。

今度はしっかり受け止めてやるんだって・・・


「ありがとうニャ!アタシのユージ!」


飛び込んで来るアリシア。

灼炎王のアリシア。




俺の懐へ・・・舞い降りて。





 ボワッ!




俺はニャン子に焼かれちまった・・・



「あニャ~~~~。燃え尽きちゃったニャか?!」


「アホぉッ!本当に燃え尽きる処だったんだぞ!」


感動の再会の筈が・・・泣けてくるわ!

ま、違う意味でもね。



アリシアは俺を選んでくれた。

俺の願い通りに、此処に帰ってくれたんだ。


俺達の元へ・・・俺の女神として。


勇者剣士の異能を授かった俺の元へと・・・



「ニャンだかアルジのユージが別人みたいに見えるんニャが?

 瓢箪に吸い込まれた後で何があったニャ?」


「いろいろとね。俺がドアクダーをやっつけたんだぜ」


上目使いにアリシアが訊いて来る。

翠の瞳が真摯に見詰めて来る。


「いろいろニャ?そうニャね、ユージは目覚めたんニャね?」


今迄気が付いてなかった事を発見したんだ。

じっと見つめたら、アリシアの眼が誰かとそっくりなのを。


あの子・・・あの子なんだ。


機動少女のアリシアにそっくりなんじゃない。

俺の中で眠る勇者剣士が護ろうとしていた子。


地図の巫女<モ>エルさんに・・・そっくりなんだ。


深い翠。

深い碧。

その奥に潜んでいるのは・・・金色こんじき


黄金の異能を秘めているんだ、俺のニャン子は。


やっとアリシアという子が誰の子孫なのかが分った気がしたんだ。


「勇者剣士とモエルさんの子孫・・・ニャン子星に残された彼等の末裔」


そうだろう・・・恐らくは。


俺が勇者剣士の生まれ変わりなら、アリシアは遠縁の子にあたるのか?


アリシアとユージニアスはニャン子星の出身。


萌はモエルさんを映した子。


だとしたら。


俺が為さなきゃならないのは・・・


「二人を護る。何があろうとも二人を護るのが勇者の務めだよな」


ユージニアスが望んだように。

モエルさんが託したように。


そうなんだ。


俺がやらなきゃならないのは、たった一つ。


「萌、アリシア!

 俺がきっと護るから。

 ずっと二人を護ってみせるから!」


二人へ。

俺の大切な子へ。


「だから、これからも傍に居ろよ!」


決意表明のつもりだったんだ。

勇者剣士の異能を授かり、運命をも受け継いだんだから。


萌はニコリと笑うんだ。

さもお姫様のように・・・


でも、肝心のアリシアは眉をあげて俺に返しやがる。


「それはこっちのセリフニャぞ!

 機動少女に成って主を護るのがアタシの役目ニャんだから!」


言い切りやがるアリシアの顔に翳りは微塵も無かった。




挿絵(By みてみん)



「ニャから!みんなと一緒に居たいニャ!

 みんなと共に・・・そしていつの日にか。

 アルジのユージに勇者ほあんかんになって貰うニャ!」


俺が?アリシアの世界に居る保安官に成れって?


「ブルーブラッドなアルジのユージにニャるニャ~!」


蒼き貴公子・・・ユージニアスのようにか。


「そうよねアリシア。

 ゆー兄ぃは、いつの日にかドアクダーを追い出してくれるわ」


萌・・・いいや、モエルさんの希望と重なるのか?


「そして・・・いつの日にか。

 平和を手にした暁には・・・」


俺は誰を選ぶんだろう?


誰と手を携えて生きていくんだろう?




それは遠い未来のようでもあり、すぐ目の前まで迫っているような気がしたんだ。


希望の未来・・・いつの日にか実現出来るんだ。


二人と交わした約束を果したら!



俺は野良有次。


勇者剣士を受け継いだ男だ。

やはり。

ニャン子はユージの元へ帰って参りました。


機動少女なアリシアより、もっとユージを信頼していたようです。

つまりは、機動少女の思惑は空振りだったみたいですね。


そうなったら、萌ちゃんの立場は?

義妹に甘んじるしかないのでしょうか?


次回。

優柔不断なユージの決心が・・・


次回 第2章最終話 ずっと君を護る! その4

彼は出逢った時からの・・・変わらぬ気持ちを貫くようです。

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