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機動女神エターナル・レッド ケモ耳ニャン子は俺の女神様?  作者: さば・ノーブ
第2章 ブルーブラッド
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ずっと君を護る! その2

ドアクダーに勝利したユージ。


彼の異能を引き継いだ・・・勇者剣士の。

観ている娘達は、一様に心へ想い描いたようです。

「やったのね・・・ゆー君が」


セッカを涼ませながら介抱しているランの前でドアクダーが消し去られました。


「あの剣はユージニアスが持っていた剣だもの。

 彼が再び現界しているのよね?」


ランには金髪を靡かせた少年だった頃の面影と重なって見えたのでしょう。

嘗て自分を救ってくれた少年に宿った勇者剣士(ユージニアスに思えた事でしょう。


「でも・・・違うんだ」


再び出逢えた少年は、自分と同じ年恰好位迄成長していました。

高校生になった野良有次は黒髪で鳶色の瞳だったのです。


「彼じゃない?でもあの剣は彼のモノの筈。

 じゃぁ今、目の前に居るのは・・・どっちのゆー君なの?」


この星で生まれたユージには、異能(スタント)を授かっていなかった筈なのに?

そうなのだとしたら?

・・・魔剣を手にするなんて出来ないと考えたみたいです。


「でも・・・彼は、野良ノラ有次(ユージ)なんだ。

 彼と同じ異能(スタント)を発現させ得るようになった?!」


その意味は測りかねますが、間違いなく剣は審判を下しました。


「一体何があったの?ゆー君は勇者剣士にでもなったのかしら?」


ランはユージニアスを呼ぶ時の愛称でユージを呼びました。


偉大なる恩人と同じ愛称で呼んでしまったのにも気付かず、黒髪の少年に異能が授かったのを喜んでいたのです。


「本当に勇者剣士になったと言うのなら。

 私の願いもゆー君が果たしてくれるのかな?」


剣を片手に佇むユージの背を、ランは頼もし気に観ていました。

妖狐から解き放つと約束したユージニアスの言葉を思い起こして。


「でも、ゆー君の傍に居られるのなら・・・このままでも良いかな?」


少し、ホンの少しですが。

ランはユージに心が動いていました。

嘗てのユージニアスではなく、今生きている少年ユージへと。


「これからも・・・傍に居続けたって良いよね?」


妖狐の異能(スタント)を誇る、旋風の嵐のままで善いかも・・・と呟いてしまうのです。


「だって・・・ずっと憧れだったんだよ?

 ずっと勇者剣士に救われるのを待ち続けて来たんだよ?

 解放されたって・・・追い求めちゃうんだから。

 ・・・君の事を、必ず」


心の中で芽生えたのは?


セッカを介抱しながらランは胸が熱くなるのを感じていたのです。

頬をほんのりと朱に染めて。






王者の剣と思しき魔剣を携える少年の姿。


それは記憶の中の一ページと重なったのです。


「ユージニアス様・・・」


萌と同化しているモエルが、自分でも気づかずに手を差し出していました。


「どうか私の手を取って・・・」


モエルの眼に映っていたのは、陽の光の下に居る勇者。





嘗て  嘗て とある星で勇者剣士と出逢い・・・




「君が全能なる宇宙神の御子みこなのか?」


金髪のニャン子族で、貴公子たる青年が訊ねます。

端正で整った顔立ち・・・獣人にしてはどことなく威厳さえも伺える姿形。

その顔に輝く蒼き瞳が、青年が唯の男ではないと教えていました。


「いいえ、私は目覚めを齎す者に過ぎません。

 全能なる神に付き従う巫女でもないのです」


蒼き貴公子を前に、少女モエルが答えました。


「そうなのか?それにしては邪悪なる奴に狙われているではないか」


青年獣人は葬った敵を顧みて訊ね返します。


「それは・・・私が<宝の鍵>だから」


見詰められたモエルは言い難そうに顔を伏せてしまいます。


「宝・・・か。

 そうだな、確かに君は宝を隠しているんだろう。

 それも宇宙に冠する程の宝を・・・ね」


「ええ?!どうしてそこまで分かるのです?」


言い当てられたと思ったモエルが驚愕したのですが。


「ふむ。君は素直で可愛い子だな。

 こんなに簡単に隠された秘密を暴露してしまうなんて・・・ね」


金髪の獣人貴公子が、ニコリと笑いかけて。


「邪なる奴等から護ったのは、君から溢れる優しさと気高さが気に入ったからなんだ。

 ボクがこの星で邪悪を討ち破る為に勇者になったのも、君のような子を護る為なんだよ」


モエルの前で跪くと。


「先ず名を教えなきゃいけないよね。

 蒼き勇者剣士を冠された男。

 ニャン子族の貴族である<ノラ>を名乗れる蒼き勇者剣士。

 ボクの名は、ユージニアス。ニャン子星のノラ・ユージニアス」


どうして良いのか分からず、立ち竦んでいるモエルへ畏まって名乗りました。


「あ、あの?!どうか御立ち下さいませ」


戸惑う少女モエルは、自分を救ってくれたユージニアスへ手を差し出して立ち上がらせようとしました。





 スッ




その手を取った勇者剣士ユージニアス。


「いいえ、ボクに誓いのキスを。

 ボクの宝の恩名をお教えください・・・捧げたいのです」


「え?私の名を?」


モエルは戸惑い、そして真っ直ぐな瞳で見つめて来るユージニアスへ。


「勇者様も名乗られましたもの。

 私の名は<秘宝の地図を示す巫女>・・・<モ>エルと申します」


「モ?エル?モは真実を顕す神の言葉。

 エルは天使を指す。

 君は天使の如き名を持つ者・・・麗しき名、モエル!」


ユージニアスは少女の隠された名の意味を悟ったのです。


「やはり君は神の御子ではないのか?

 真実を司る天使の如き名が、隠された宝をも示しているようだ」


「いいえ、そうではありません。

 私の中に描かれてあるのは、世界を滅ぼすだけの魔力を秘めた宝。

 その在処と開け方を示した地図の巫女なのですから」


モエルは他人には知らせてはいけない真実を暴露してしまいました。

それだけユージニアスを信頼していた証でもあったのですが・・・


「ははは・・・どうやらこれでモエルとは生涯共にしなくてはいけなくなったようだ」


「な?!なにを仰られるのです?

 共にするべきだなんて・・・

 私のような宿命を背負わされた者と生涯を伴にするだなんて?!」


掴まれていた手がユージニアスへと引き寄せられて。


「誓おうモエル。

 きっとボクが君を護る・・・と!」


誓いを口にしたユージニアスが唇を捧げて来たのです。

白い手に交される決意のキス。




 ぽぉうッ!




勇者剣士が誓いを捧げた手に、誓いの紋章が浮き出ました。


「これでボクは君と共に居なければならなくなった。

 いいや、ボクが君を護り続ける運命を選んだんだ。

 宇宙の果てまでも共に、モエルの為だけに傍に居るって・・・ね」


ユージニアスは出逢った少女に誓うのでした。


「私・・・私なんかと。何故?何故なのです?」


プラチナの髪、翠の瞳・・・白い少女の肌。

か弱き巫女モエルは勇者の言葉に涙を溢します。


「ボクが今あるのは、君と出逢い君に愛を捧げる為だったんだと分かったからさ」


真剣さを映す碧き瞳で、ユージニアスが告白して来たのです。


「お願いだから、ボクを受け入れて?」


最後は自らの願いだとモエルへ頼むのです。


「ええ・・・嬉しく思います勇者ユージニアス様」


拒否されなかったのを安堵したのか、蒼き貴公子が微笑みました。


「ずっと・・・ボクが君を護るから。

 君へ約束するから・・・永遠に共に在り続けると」


蒼き勇者剣士が手を取り立ち上がります。

蒼き瞳に映るのは・・・モエル。

瞬きもせず、ずっと見詰めて来るユージニアス。


二人の約束は・・・今も。


そう・・・宇宙の果てまでも色褪せず。






「運命を受け入れて・・・私と共に」


モエルが萌を通して観ているのは、間違いなくユージニアスの剣。

自らがユージニアスへと願ったように、彼はこの子等に託したのだと知ったのです。


「あなたがこの子達に託すのならば。

 私も萌に委ねても構わないかしら?」


モエルは先延ばしにしようとしていた希望へと手を伸ばしました。

それはユージニアスと共に在り続けてきた巫女の愛とも言えたのです。


「萌も・・・受け入れてくれるかしら?」


王者の剣を手にする黒髪の少年を観て。


「この二人なら・・・私達を安息の地まで導いてくれる。

 ユージはそう考えたのね?

 だから、勇者の異能を授ける気になったのね?」


モエルには見えていたのです。

ユージの手に在る魔剣は、ユージニアスでさえ持つ事が叶わなかった使徒を宿しているのを。


「終末の魔剣。

 最期の剣・・・マルクト・サンダルフォン。

 ユージはいつの日にか宇宙てんをも換えてくれるのかしら?」


大天使<サンダルフォン>を使徒とした魔剣。

完全体になったのなら、威力は脅威を通り越しているみたいです。


「ありがとう、この星で生まれた私達の子供。

 ユージニアスの生まれ変わりの子へ、希望を託しましょう」


モエルは宿り主である萌に何かを授けました。


「きっとユージが護ってくれるから。

 どれだけ闇に閉ざされようと、きっと護ってくれるからね」


萌の瞳が閉じていきます。

それはモエルではなくなる時を迎えた証。


勇者剣士と共に、再び眠りに就いて行こうとする魂。


「いつの日にか・・・私はあなた達に逢える。

 きっと運命から解き放たれて・・・逢える日が来るわ」


最期にモエルが笑いかけました。


二人の運命を信じて。

勇者の異能を託したユージニアスを信頼して。


「その時まで、私達は眠りに就くわね」


今迄干渉してきていた魂が眠りに入る・・・


勇者剣士と地図の巫女が、どこかへ去って行く。




二人の約束・・・


未来への希望・・・


宿命を終わらせる者へ託し・・・






「「勇者剣士の反応が・・・途絶えたわ」」


機動ポットで状況を掴もうとしているニャン子が慌てだします。


「「それじゃあ、私のアルジはどうなっちゃうの?」」


覚醒する筈だったのに、どうなってしまうのかと戸惑い慌てて。


「「その前に!昔の私がやられちゃったら今の私はどうなるのよ?!」」


ああ、タイムパラドクスって奴ですね。


「「こうなったら・・・介入するしかないわ」」


あ・・・それは辞めておいた方が?

もう少し状況を見守られては?


ユージが左手に着けている装置では、ユージの身に何が起きてるのかが分からないようですね。


・・・って?


どうする気なんですか機動少女アリシアさんッ?

モエルとユージニアス。

2人の出逢いが物語の起点のようです。


その一方、外野な娘がうろたえていたのです。

ニャン子なアリシアではなく機動少女なアリシアが?


何に介入する気なの?

まぁ、ポッドから出られないでしょうけどね。


次回 ずっと君を護る! その3

救出される二人。帰還場所を何処へと選んだのでしょうか?

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