友か下僕か? その3
戦闘開始!
先ずは灼炎王アリシアが向かうのです・・・けど?
炎の結界に戦闘開始のゴングが鳴った・・・気がした。
「一撃で葬ってやるニャ~~~ッ!」
アリシアが勢い込んで突っかかって行くのを、停めもせずにいた。
手に捧げ持った魔法剣の威力を知る俺には、当然の事にも思えていたんだ。
これまでの敵を思い返せば・・・倒せると踏んでしまったんだ。
「喰らうニャぁッ!」
炎を纏う剣が上段に構えられ、灼炎王アリシアが吠える。
だが、相手のドアクターは身動ぎもしない。
いや、良く見たら哂ってやがるのか?!
「気を着けろアリシア!」
俺の声が届いたのかは分からない。
灼炎王のアリシアは構えた剣を振り下ろそうとしていた。
が?!
「ふふふッ!おいニャン子娘よ」
哂うドアクターのおっさんがアリシアに呼びかけたんだ。
「何ニャぁッ?」
振り下ろす寸でに呼びかけられたアリシアは、咄嗟に訊き返してしまったんだ。
その瞬間、おっさんドアクターは口を邪に歪めやがった。
ビュルルルゥッ!
何が起きたのかを理解しようにも、あまりに突然だったんだ。
「ニャアアアァッ?引きずり込まれるニャぁ?」
おっさんの手に持たれた瓢箪のような物から猛烈な渦が巻き出る。
いや?違う。
「アリシア逃げるんだ!」
その渦は吹き出されたんじゃない。
「おっさんの瓢箪に飲み込まれてしまうぞ!」
引き摺り込もうとする異能の竜巻が、アリシアを襲っているんだ。
「悲ニャアぁぁぁぁぁあああああ~~~~」
俺の見ている前でアリシアが瓢箪に引き摺られ・・・
「アルジ~たしゅけてぇ~~~ニャァ~~~」
瞬きする間に瓢箪に飲み込まれてしまった!
パックん!
アリシアを飲み込んだ瓢箪の口に、おっさんドアクダーが蓋をする。
「なっ?!どうなっちまったんだ?」
俺は信じられず、消えてしまったアリシアを探してしまった。
「アリシア?おいアリシア?!」
だが、哂うおっさんドアクダーに気が付いた時。
「キサマっ?!アリシアをどうする気だ」
怒り、そして困惑。
二つの感情が入り混じり、俺の中で爆発してしまいそうだった。
「ぶぁっはっはっ!邪魔者は排除するだけの事だ」
ドアクダーのおっさんから返されたのは、嘲る声と忌み嫌う一言。
「お前達が邪魔するのなら、悉くこの琥珀浄瓶に吸い込んでやるわ」
「琥珀?どこかで聞いた事のある様な?」
ドアクダーが言う琥珀浄瓶とは?
「あの伝説である三蔵法師が遭遇した?
相手を飲み込めるという魔法の瓢箪か?」
金閣銀閣とかいう魔物(実は老子の童子が試練の為に遣わされた姿)が持っていたとされる空想の瓶。
それがどうしてドアクダーが持っているんだ?
「ふ・・・原住民が惧れを抱いて伝説に仕立てたまでの事。
現実に存在していてもおかしくはないとは考えないのか」
なんだって?
先祖の誰かがドアクダーが持っていたのを観たとでも言うのか?
と、その前に。
数千年も前に、ドアクダーが来ていたのか?
「一体お前達は何者なんだよ?
いつから地球に来ていたんだ?どの時代から存在しているんだよ?」
ドアクダーって奴等自体が分らなくなる。
「さぁな、俺には係わりが無い事だから知らん。
だが、一つだけ言っておくぞ小童。
お前が護る<地図の巫女>も同じだというのを・・・な」
萌に宿るモエルさんが?
そんな大昔からずっと?
「そういえば、数万年とか言ってたっけ」
気の遠くなる過去からずっと逃げ隠れて来たって。
「それも今日でお終いになる訳だ。このキンギン様に因って」
嘲笑うドアクダーのおっさんが俺の後ろを指しやがった。
俺の後ろ?
そこに居るのは雪華だけの筈じゃぁ?
「あ・・・萌?!」
危険だからアリシアと雪華さんだけで応戦する手筈だった。
だった・・・のに?
「なぜ結界の中に?」
と、そこに居るのは萌だけじゃなかった。
「みんな?どうして」
倒れ込んだ雪華を介抱するのは嵐。
既に妖狐の異能を纏った白拍子姿に変身している。
「結界の中に居るんだ?」
3人を後方から護っているのは地龍の鎧を纏ったシンバ。
「それは飲み込まれちゃったニャン子にでも訊いてよ!」
萌が俺に返して来る・・・精一杯の強がりを顔に出さず。
「巻き込まれたんじゃないのだけは言っておくよ」
地龍の剣を結界に突き立てたシンバも。
「ゆー君達のお手伝いをしなきゃ・・・ね」
旋風のランが風扇を開いて雪華を扇いでいる。
「少なくてもセッカには少々キツイ場所だもん」
氷の異能を誇るセッカには、炎の結界での戦闘は荷が重かったか。
熱に負けたセッカが半ば戦闘不能状態にあるのを、漸くそこで知ったんだ。
「すまぬ主よ、私には少々暑すぎの様だ」
ランが扇でセッカを涼ませている状態・・・
「そうだったのか、すまないな。
次はもう少し考えてから発動させるよ」
セッカが戦闘不能状態・・・だけど。
「まだ、2対1でこっちが有利だ」
シンバと嵐が闘える。
「でもゆー兄ぃ。嵐さんを闘わせるとセッカさんを涼ませられないよ?」
「う・・・そ、そうだった」
だとすれば・・・シンバしかいない。
でも、シンバは異能戦を戦った例があるんだろうか?
相手は手強いドアクダーなのに、独りで立ち向かえるんだろうか?
俺は知らず知らずの内にシンバを観ていた。
「なんだよその顔は?
ボクが戦えないって思ってるんじゃないのか?」
「あ、いや・・・闘い方を知ってるのか?」
質されて思い出した。
シンバは異能を制御出来るようになったと言っていたのを。
「ボクは地の龍を宿し、邪悪な奴を憎んでいるって言ったじゃぁないか。
今感じるのは、依頼主だったこいつが邪悪そのものになったって。
地の龍が言うんだよ、こいつを滅ぼせって・・・ね」
龍の剣を掴み、俺に言うんだ。
「だから・・・こいつはボクが倒す!」
土色の鎧を纏うシンバ。
地の龍を宿した娘が挑むと言うんだ。
「気を着けろよシンバ。
奴の口車に乗るんじゃないぞ!」
一騎討を停められないと踏んだ俺が警告する。
「分かってるよ・・・」
にこりともしないシンバ。
邪悪なドアクダーを睨みつけ進み出る、地龍の使徒を纏った姿。
「よくもボクを騙したな!
龍の贄になって貰うから!」
龍の剣を正眼に構えて吠えるシンバ。
「ボクの怒りを受けてみろ!<震撃の巨顎>!」
剣を結界に突き立てて放つのは、いきなりの最終奥義?
グガガガガガッ!
猛烈な地震波がドアクダーに向けて放たれる。
結界の地表が割れ、紫の波動が突き進んだ。
「うぎゃぁッ?!」
もろに喰らうドアクダーが揺れでたじろぐ。
「龍に喰われてしまうが良い!」
勝ち誇るシンバが吠えたんだ。
「龍に喰われるなんて嫌だぁ!おたすけ~助けてくださいぃッ」」
泣き声をあげるドアクダー。
だが、その顔には厭らしい笑みが?
「誰が助けてやるもんか・・・あ」
そう。
助けてくれと問いかけやがったんだ、キンギンの野郎は。
途端にシンバの躰が、瓢箪から沸き起こった烈風に巻き込まれた。
「シンバ?!」
「ごめん~ッ!やっちゃったぁ~」
ギュルルル!
しゅぽんッ!
あれよあれよという間に・・・
瓢箪が二人を飲み込んでしまった。
「畜生ッ!」
「ぎゃはは!これで分かったろう!
俺様には勝つ事など出来んっとな!」
キンギンは勝ち誇ったように高笑いをあげやがる。
残された俺達には、奴から二人を取り戻して勝利を収めることが出来るのだろうか?
「だけど・・・やらなきゃ駄目なんだ。
アリシアとシンバを瓢箪の中から救出して、キンギンを倒さないと」
勝ち誇るドアクダーキンギン。
果たしてユージは勝利を収めることが出来るのか?
キィ~~~~
何かが扉を開き始めます。
誰かの中で・・・大いなる者が?!
なんということでしょう。
ドアクダーは見事に気勢を殺いだのです。
かつてこんな見事に闘う敵に遭遇した例がありません!
惚れ惚れする敵役ですね・・・なんて。
おっさんドアクダーを褒めてる暇はありませんから。
何かがやって来ようとしていました。
誰かの中で目覚めを果たそうとしているのは?
次回 ブルーブラッド・蒼き貴公子 その1
遂に?彼が目覚める??いいえ、目覚めるのは・・・<彼>の使徒!




