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機動女神エターナル・レッド ケモ耳ニャン子は俺の女神様?  作者: さば・ノーブ
第2章 ブルーブラッド
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友か下僕か? その1

ドアクダーから金を毟り取ってやるんだ。


それでシンバの願いを叶えてやれるなら、やってやろうじゃないか!

翌日、早々に黒のカードで金を引き出す手筈となった。


萌と雪華さんとが連れ立って金の引き下ろしに向かったんだ。

カードが使えても審査が必要なのではないかと勘繰ったんだ。


銀行に入って数分後。


出て来た萌は心此処に非ずのように見受けたんだけど?



「入金確認を通帳でしましたよ」


雪華さんはケロッと言って除けたんだ。


「もう?!何も疑われなかったのか?」


自分の持つ銀行通帳を見詰めている萌に訊き質してみたら。


「そ~なのよぉ。あまりにも簡単に終わっちゃったんだよ~」


どうやら萌は拍子抜けしていただけみたいだ。


「ほら、観てみ。ゆー兄ぃも」


差し出された通帳に刻まれた0の行進。

丸々2千万円が書き込まれているんですが?


「驚いたというより、何だか犯罪者になったみたい」


そりゃぁ、相手にも由るだろうけど・・・


「大丈夫ですよ萌さん。

 相手はあのドアクダーなんですもの、2千万円ぐらいものともしませんって」


そ、そうなのか、雪華さん?


「宇宙を股にかけている犯罪結社なのですから。

 日本円の2千万くらいでビビる相手ではないってだけです」


ビビるのかは別として、どうして俺達の使いたいままにしてあるのかが問題だよ。


「良く送金出来たよな。

 相手がカードを使用出来ないようにしなかったもんだよ」


ついこの間、カードを使った事でドアクダーを引き寄せる事になったのを思い出していた。

黒のカードを使って居場所を教えたから、攻めて来たんだが。


「今度は家からも離れた場所にある銀行だから。

 使った形跡を残しても、襲われる確率は低い筈だよ」


萌はそう答えるんだけど、俺が言いたいのはな。


「そうじゃなくて。

 金額も桁違いなのに、こうも簡単に送金出来たなんて。

 カードを使えなくしなかった理由が分らないと言ったんだよ。

 それと一体幾ら位までなら引き出せるのかなって思ったんだ」


ドアクダーがカードの停止を申告しない理由って?

どうして俺達が使うがままにしてあるんだ?


いくらなんでも虫が良過ぎて、怖くなっちまうぜ?




「良いじゃない!相手はあのドアクダーなんだよ。

 使っても文句を言われる筋合いじゃないっての。

 きっと今迄散々悪い事で儲けて来た筈なんだから、取り返したって想えば良いのよ」


萌にしては大胆な発言だな。


「そうですよ野良君。

 どうせなら孤児園を助ける為に使ってあげた方が世界の為ってものですよ」


うむむ・・・雪華さんまで。


まぁ、確かに犯罪組織に使われるよりは良いのかもしれないけど。


「薄汚れた金で助けても、感謝されないかも知れないんだぜ?」


犯罪組織から奪った金なんだから、元をただせば綺麗なお金ではないだろう。


「でも、シンバがゆー兄ぃを暗殺して貰うお金よりは良いと思うんだけど」


「う?!そ、それはそうだが」


シンバが俺を殺して貰えたかは知らないが、どっちにしても汚れた金になったという訳か。

出所は同じドアクダーなんだから、この方が良いよな・・・タブン。


「でしょぉ~?深く考えたって金は金。

 使い道を誤らなかったら、お金だって喜ぶんじゃないの?」


釈然としない俺に、萌がきっぱりと言いやがる。

どうせ使うのなら、綺麗な使い方にしてあげれば良いんだと。


「分ったよ、萌の言う通りだよな」



こうして俺達はシンバの欲しがる金額を用立て出来たんだ。

このお金をシンバに渡してあげたら、孤児園は閉園から逃れられる筈だ。

もう人殺しなんて罪深い仕事を背負わなくったって済むだ。

シンバの願いを叶えられると思って、犯した罪の意識が軽くなったよ。





「ありがとう、どうお礼を言えば良いのか」


<びっくりモンキー>で、シンバが集まった俺達へ頭を下げた。


「お礼だなんて。

 袖触れ合うも他生の縁って言うじゃないの」


「そうニャ。アルジのユージに出逢えたのが良かったニョだニャ」


頭を下げるシンバへ、萌とアリシアが応える。


「それに親身になってくれた野良君達もシンバさんを信じたからです。

 あなたが心から孤児園を救いたいと願っていたから、こうして孤児園を救えるのですよ」


鞄に詰められた現金を手に、シンバは首を垂れたまま頷いた。


「良かったなシンバ。

 これでもう危ない橋を渡らずに済むんだよな?」


「うん、みんなのおかげで。ボクは二度と悪事に手を染めないから」


うむ。未遂で済んだのだから悪事を行った訳じゃないだろうし。


「でも、この恩を返すにはどうしたら良いのかが分からないんだ」


「良いよもう。孤児園が潰れずに済むのなら」


本気でお礼なんて求めないよ俺達は。

シンバが犯罪者にならずに済んで、おまけにこの金の出所はドアクダーなんだから。


「ウニャ!シンバにゃんが願いを果し、ドアクダーの懐をつつけたのニャ。

 これはもう一挙両徳とニャったニャぞ」


ニャン子がトンと机を叩いて。


「それに今晩からアタシの晩御飯も普通に戻るニョニャ!」


居候していたシンバが帰るのだからと言って除けたんだ。


だけど。

俺は全てが巧くいくのかが気になっていた。


最後の詰めを怠っていないかと不安に駆られていたんだ。

シンバが手に持つ鞄に収められた金が、何事かを呼び寄せてはいないかと。


「もしかすると、奴等が狙うかもしれない」


そうだろ?

素直にシンバを解放するなんて思えないぜ。


正体を知ったシンバを、はいさようならってほっぽっておく筈もないじゃないか。


「金だけの話じゃない。

 シンバに顔を晒した奴が、黙って見逃す筈が無いとは思わないのか?」


「そうですよね、喩え別人に成りすましているにせよ。

 ドアクダーがシンバさんを放擲するなんて思えないです」


雪華さんもドアクダーのやり口を知っていたから。


「もしかすると、私達から離れた瞬間に狙われるかも知れないです」


雪華さんの言う通り。

悪人は悪人の考えで行動するものだ。

俺達が描く希望なんてお構いなしに破ろうとするだろう。


悪者は他人の想いや幸せなど顧みもしない。

それだからこそ、暗殺者を仕立てて来たんだ・・・シンバという異能者を。


シンバに依頼して来た奴は、異能を知っているのだろう。

俺を始末しようとした奴は、シンバと俺が闘いの果てにどうなろうが構っちゃいない。

共倒れでもしてくれたらラッキーとでも考えたのか。

俺を殺させて、それをネタに脅迫しようとでも考えたのかも。


金も払わず相手の弱みを握り、操ろうとでも考えていたのかも知れないな。

だって、相手は異星からの侵略者達なんだから。



「よし、判った。

 こうなったらとことんまで付き合ってやるぜシンバ」


「そうニャ~、孤児園を助けるのがシンバにゃんの願い。

 金を手にするのが目的ではニャいニョだから、入金するまで見守るニャ」


借金や園の維持費に使う手筈の大金を、シンバが園まで届けれるのを見守ると言った。


「そこまでして貰えるのか?

 どこまでお節介なんだよ君達は!」


顔を挙げたシンバの眼には涙が溢れている。


「ふふふッ!言ったでしょ。

 此処に居るゆー兄ぃは、そん所そこ等に居るお節介とは訳が違うのよ」


・・・萌。他に言い方はないのかよ?


「決まりニャ~!シンバにゃんを護衛するニャ」


ニャン子よ、やっと保安官補助手らしくなってきたじゃないか。


「護衛はお腹がすくニャ。

 ニャから・・・お腹を満たすニャ~!」


いきなりメニューを掴むニャン子を観て、前言撤回と心で悪態を吐いたのは言うまでもない。


だけども、そんなアリシアに誰も怒らなかったんだよなぁ。


「そうよねぇ~」


萌もアリシアと一緒で、メニューに釘付けになってるしW







「明日は学校も休みだから、早めに孤児園へ話を着けなきゃな」


軽く食事を摂った俺達が、店から出ようとしていたら。


「ゆ~~~~~~くぅ~~~んんんッ!」


俺を呼ぶ声が・・・


「もう、帰っちゃうの~?」


制服を着たランさんが現れ出た!


「出たわね狐少女!」


途端に萌の奴が警戒モードになった。


「あらぁ~?義妹もえちゃんも居たの~?」


「ああッ!ウザいぃ!」


真っ向から萌が怒りを露わにする。


・・・のだが。



 すぅッ



萌を完全に無視した嵐さんが、俺にしなだれかかると。


「もう帰っちゃうんだぁ~。

 でもね、まだ帰るのは止しておいた方が良いわよ?」


「え?何故です?」


鳶色の瞳を俺に向けて来たランさんが言うには。


「だってぇ~、あなたを陰から観ている男がぁ~あそこに居るから」


その男に観られないようにそっと指で指し示してくれた。

店の玄関ロビーから程ない処に佇んでいる小太りの男。


「アイツか?」


咄嗟に閃いたのは、シンバを雇った男の事。


「もしかして、ゆー君を狙って来たの?」


「そうかもしれませんし、シンバを狙ってるのかもしれない」


俺かシンバか。

そのどちらをも、狙っているのか?


「ふぅ~ん・・・いけ好かない奴なのね」


ランさんの眼が細くなる。


「妖狐の眷属である私に観られていたのが運の尽きよ。

 私の大事なゆー君に手を下そうだなんて・・・赦せなくなった」


「あの・・・嵐さん?まだそうだと決まった訳では」


単なる勘違いだったらどうするんです?


そこまで言い掛けた俺の背に、誰かがどやしつけて来た。


「トッポイボーヤ君。

 明日はシフトが入れてあるのを忘れるんじゃないよ」


ニヤリと哂う京香先輩。

ランさんが戦闘モードになりつつあるのを知って、停めに来たのだろうか?


「で、言っておくが。

 嵐を使いこなして見せろよ。

 嵐だけじゃない、仲間達を巧く使いこなせるかはお前次第なんだぞ、勇者剣士ユージニアス




 ドクン・・・



京香先輩が呼んだ。


俺の中で眠る奴の名を。



「分かってますよ京香先輩。

 俺には守るべきモノがあるんですからね!」


勇者剣士だけじゃないんだ。

俺にだって力はある。

意を伴にする仲間達が、一緒に戦ってくれるんだ。



だから・・・今晩こそ。


「ドアクダーになんか、負けませんよ!」


シンバを奴から護る!

そして願いを果させてやるんだ。


店の表で佇む奴を見据え。


「街に被害が及ばないようにしますから。

 京香先輩は此処で待っていてください!」


俺達が勝って戻るのを・・・


「ああ、程々にしておけよ」


笑ってくれた京香先輩に、軽くお辞儀して。


「みんな!ドアクダーと戦闘だ!」


仲間へと命じたんだ。


そう・・・挑まれる戦闘から逃げたりしないと心で誓って。


おおっと?!

いきなりですかドアクダーさん?


ユージはこれまで通りに闘うことにしたみたい。

ですが、今度の相手は?!


次回 友か下僕か? その2

とある国から伝わった物語に出てきた魔法の瓢箪。ご存知ですか?

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