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機動女神エターナル・レッド ケモ耳ニャン子は俺の女神様?  作者: さば・ノーブ
第2章 ブルーブラッド
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Emo~い その2

地の龍を宿した娘。

彼女が言うのは生まれの悲劇。


彼女の想いはいずこ?

異能(スタント)は恐るべき兵器と化す・・・使い方を誤れば。


異能使いは忌み嫌われる存在となる・・・力を乱用したのなら。



自分達の周りに居る異能者が齎す破壊を知ったから、そう感じるんだ。


もしも結界の中ではなく、現界して力を使えばどうなるかを知らされちまったんだ。


敵に対してだけならまだしも、異能が暴走してしまえば世界は悲劇に見舞われるんだってね。



紫髪のシンバが悲しみに暮れている。

伏し目がちにオッドアイを瞑り、震える唇で言うんだ。


「もしも・・・ボクが地龍を使えば。

 また大勢の人が不幸になる、多くの孤児を生み出してしまう」


自らの出生が悲劇だったとでも言うのか?

意図せず異能を使った報いだとでも言いたいのか?


「シンバ、今は異能を制御出来るんだろう?」


俺に質されたシンバが眼を開く。


「出来ていると思うけど?」


不意に質されたシンバは答えるんだけど。

何が言いたいのかが伝わっていないみたいだな。


「それだったら問題ないんじゃねぇか。

 これから後は異能の暴走なんて起きないのなら、誰にも文句は言えないだろ」


「だけどボクは・・・」


ふむ。シンバをトラウマから解き放てるかは分からねぇが。


言っておかないと後悔してしまいそうなんだ。

地の龍を宿して、心が閉ざされそうになっている少女に知って貰いたいんだ。

身に秘めた異能が、彼女自身の役に立つ時が来る筈だから。


「もしもシンバの思った通りだったとしたって。

 意図しない暴走が起きてしまったのは、それこそが天災なんだよ。

 シンバが悪い訳でもないし、異能が邪悪だったのでもないよ。

 今は唯、異能を有効に使えるかが鍵だと思う。

 制御出来ている地龍の異能を、どれだけ他人ひとの為に使えるか。

 それにかかっていると思うんだよ、シンバが償おうというのなら」


口幅ったいけど、俺はシンバという娘が悲しみから解放されるのを願って言ったんだ。


自分が知らない間に起こしてしまった不幸。

それを償う為には、同じ異能を以って為すべきではないかと。


地龍の異能を以って、他人ひとの為に尽くす。

そうすれば、災害に見舞われた人への償いになるんじゃないかと考えたんだ。


「そうなんだろうか?

 ボクは人の為に異能を使う事が出来るのかな?」


「出来るさ。孤児園を護ろうとしていたぐらいだぜ?

 アサシンに身を貶めても誰かを助けようとしていたじゃないか。

 異能使いだから出来ないなんて、言い訳になるだけだぜ」


好き好んで異能使いに産まれた訳じゃない。

与えられた異能を呪ったって解決できない。


だったら、異能を有益に使えば良いんだよ。

人に寄り添い、人の為に出来れば、誰にも文句を言われなくなるからさ。


「そうか・・・ボクにだって出来るかな?」


「さっきから言ってるだろう、出来るって」


励ます意味を込めて言い切ってやった。

より強く、より優しくあれと・・・



「野良君の仰る通りですわ!

 異能使いだって人の子ですもの、少々の間違いは起こします。

 かく言う私も野良君に救われたのですよ」


いや、雪華さん。褒めても何も出せませんよ。


「いっそのことシンバさんも野良君の下僕に成ってみたらいかがです?」


「は?!ゲボク?」


いきなり勧められたシンバが眼を見開いたよ。


「ゲボク・・・って?もしかして君はメイドだったの?」


違うって。


「メイドですかぁ~?それもいいかも知れませんね」


もしもし、雪華さん?


「メイドになってこの人に奉仕しているのか?」


「いやぁ~、メイドなんて思いも付きませんでしたわ」


あのね、雪華さん?


ボケっと二人の会話を聞き流していたら、雪華さんが俺に向き直って。


「御主人様ぁ~・・・とか、言っても良いですか?」


「却下!」


即答だよ即答!


「だ、そうですよシンバさん」


微笑んだ雪華さんが、あっけに取られているシンバに言うんだ。


「野良君はこう見えても勇者剣士を宿らせた運命の子なの。

 きっといつの日にか、愛に目覚められる筈なのよ」


・・・あのねぇ、どこぞの小説ですか?!


あっけに取られているシンバと俺。

と、そこへ乱入者が?!


「そうよ!ゆー兄ぃはいつの日にかハーレムの王になりやがるのよ!」


おい待て萌!言うに事欠いてハーレムだと?!


「だってそうじゃない!

 次々に女の子の居候を増やしやがるんだもん!」


あ・・・それは、そうだけどさ。

単に仲間になってくれる子が、女の子だったというだけだぞ?

俺は意図して居候させているんじゃないんだ。


出来たら静かな生活を過ごしたい・・・ことはないな。

こうなったのも、元をただせば空から振って来たニャン子の所為ではないか。



壁に吊り下げられてオシオキされているアリシアを観た。

萌が急ごしらえで造った、アリシア専用猫掴みオシオキ杭にぶら下げられている哀れなアリシア。

少しばかりドジで、おまけにおっちょこちょい。

でも、憎めない。でも心の底から怒れない。

いつの間にか俺や萌の中で、必要不可欠な存在になっていたんだ。


アリシアがもし現れなかったら?

俺と萌はどうなっていたのだろう。


ドアクダーに連れ去られたのかもしれない・・・萌が。

もしかすると、俺は死んでしまったかもしれない・・・もう一人の俺と一緒に。



「ごめんニャ~~~赦してニャ~~」


泣き声で許しを乞うニャン子なアリシア。

俺が知っている機動少女のアリシアとは、全くの別人にしか見えない。


別人にしか見えないけど。

俺にはこっちのアリシアの方が好きになって来ていたんだ。


あ、好きって言ってもだな、友達の中でっていう意味だぜ。


それはきっと。萌も同じなんだろうな。

怒ると云っても直ぐに許してしまうんだから。


俺達義兄妹の心の中で、アリシアの存在は無くてはならないまでになっていたんだ。


「意地汚い事をしないでよアリシア!」


「はい・・・ニャァ~~~~」


オシオキ杭から外して貰ったアリシアが、萌に何度も頭を下げる姿を見て。


「なんだろう・・・此処に居ると不思議な感覚になる。

 孤児園に居た時みたいに・・・仲間に思えてくるんだ」


シンバが俺達に信頼を持ち始めてくれたようだ。


「そうさシンバ。

 俺達はみんな本当の家族じゃないけど、家族以上に賑やかにやってるぜ」


アリシアや雪華さん、それに義妹もえを指して応えたんだ。


「いいなぁ・・・ボクもここで暮らしたいよ」


本当にそう思ってくれたのなら嬉しい話だよ。


「だ、駄目よ!もう空き部屋は無いんだから・・・

 でも、相部屋で良いのなら・・・此処に居て良いよ」


さっきまでツンケンな反応だった萌が、シンバから聞いた身の上話で叛意したみたいだ。


「そうこなきゃな、萌」


俺は萌の心変わりが嬉しかったよ。

もしも彼女が行き場が無いのなら、無理でも此処に居ろって言う気だったから。


「ドアクダーとの契約を反故にしてくれたシンバを、このままにしておけないからな」


「そうよね、ゆー兄ぃの考える通りだと思うわ。

 奴等の事だから、きっとシンバを捕まえに来る。

 ゆー兄ぃを亡き者にする為、有能な異能者を逃がしたりしないでしょうから」


おいおい、物騒過ぎるぞ萌。

俺が突っ込む前に、脇からニャン子が乗り出して来て。


「そうニャ。シンバにゃんは異能使いの中でも上級者みたいニャ。

 分かっていて仕組んだニョだから、おいそれとは手放そうとしないニャぞ」


そうだぜアリシア、良く分かってるじゃないか。


「つまり、此処にいる方が安全だってことですよね野良君」


雪華さんも、同じ考えに至ってくれた。


「そ、そうなの?ボクには判らなかったよ」


一番肝心要の本人が分かっていなかったか・・・


「袖触れ合うも他生の縁ってね。

 一度乗り掛かった舟だもん、とことん付き合ってあげちゃうわ」


萌がここぞとばかり、あまり正確じゃない言葉使いを披露しやがる。


「他生の縁かどうかは別として。

 シンバをこのままにしては於けないのは正しい発言だ」


言いたかったのは、俺達がお節介焼きだという事。

そして異能使い仲間としても、ほってはおけないんだと言いたかったんだ。


「そうよ!シンバのエモい身の上話を聴いた今なら。

 悪者から解き放つのが、正義の味方ってモノでしょ!」


エッヘンと胸を反らして断言する萌。

エモいかどうかは分からないけど、シンバを仲間と呼べる俺達だからやれるんだよ。


「俺達の手で、シンバをドアクダーから護る。

 仲間を悪者から助けるのが、今やらなくちゃならない唯一つの約束なんだ」


俺はアルジとしても言い切った。

アルジのユージとして、出来ることをやるだけだと教えたんだ。


「まだ出会ったばかりだというのに、ボクを護ってくれるんだ?

 一度は闘う程の関係だったというのに?」


瞬きしながらシンバが質して来た。


「そう!それがゆー兄ぃって奴なの。

 困ってる人や苦しんでいる人を見逃せない、超お節介で優しい男なのよね!」


萌が即答しやがったんだ・・・けどな、超お節介は言い過ぎだ。


「そうなんだ?!じゃぁ、頼りにしちゃうよ?」


萌の言葉で棘が抜けたのか、シンバが俺に手を指し伸ばして来た。



ぐっとシンバの手を握る。

俺達はもう仲間なんだと教える為に。


握手を交わした瞬間、シンバは俺達の大切な仲間になったんだ。

きっと約束を守る。必ず護り抜いてみせる。


「だから・・・安心しろよな」


「ああ、頼んだよアルジ」


お道化て言ったんじゃない。

地の龍使いのシンバは、俺の仲間になったのだから。


俺達と行動を共にする大切な味方になったんだから・・・



はい・・・そうですね。


挿絵(By みてみん)


萌たん・・・やりすぎ。


ユージに仕えるのはどうか・・・と。

さて、シンバはこれからどうするのでしょうね?

孤児園を救えるかはユージ達にかかっていますけど?


次回 Emo~い その3

君は生き残ることが出来るのか?・・・ですって?萌さんどこからそのフレーズを?

萌「・・・知ってるくせに」・・・はい、ごめんなさいW


こっそり・・・次回は番外お風呂回ですW

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