氷結の雪華 その2
雪華さんって?
どんな印象?
そうですね~・・・敢えて言うのなら。
雪女かな?
授業を受けるどころじゃなかったよ。
ずっと痛い視線を感じてたら、気になるのは当然じゃないか。
しかも二人から・・・
窓際に座った雪華さんの蒼い瞳が俺を観ている。
アリシアと並んで座った俺を・・・だ。
雪華さんが俺を観るから、ニャン子なアリシアも俺と雪華さんを代わるがわる見ていやがるんだ。
「いい加減にしてくれよ・・・ホントにもう」
溜息しか出なくなっちまうだろ。
雪華さんがドアクダーに関係する者だとしたら、何かアクションを起こすだろう。
唯何もせず、観るだけなのは勘弁して欲しいんだがな。
異星人であると看破しているアリシアも、こちらから手を出すのは相手の思う壺に為り兼ねないからと
言って、出方を伺う事にしたんだ。
つまり・・・睨みあい。
だけど・・・疲れちまうぜ俺は。
相手が野郎なら、こんなに気にしなかったのかもしれないが。
相手は日本人形のようにも観える美少女だ。
もしかしたらドアクダーの怪人が誰かを模写しているのかもしれないけど、俺は見ず知らずの少女から睨まれた事なんて無いんだぜ?耐性が着いちゃぁいないんだからな。
「昼休み迄後5分・・・耐えるんだユージ」
自分に発破をかけて耐える。
「そうニャ。もう直ぐ萌たんとお昼ご飯ニャ」
傍らで呑気な阿保猫がほざくが、無視を決め込む。
「しかし原住民の授業も面白いニャ。
アタシがロースクールで受けていた数学と同じニャ」
・・・ピクク・・・なんだと?!
「ニャン子星で学生だった頃、飛び級で卒業したニャって教えなかったかニャ?」
・・・そう言えば・・・繰り上げ卒業して保安官事務所務めをしているとか?
「こう見えても大学の単位をクリアしているンニャ。
時空管理局には、アタシよりも幼い子がワンサと居るニャぞ」
そうなのかよ?!宇宙は広いなぁ・・・すげぇなぁ。
「と。そんな優秀なアリシアが何故にこんなドジを踏んでいるんだよ?」
「・・・それは言わないで欲しいニャ」
ズ~ンと落ち込むアリシア。
いくら学業で優秀でも、仕事となると巧くいかないのは世の常だぞ。
「気にしてたのかよアリシア?
でもな、ドジな所があるくらいがちょうど良いって言うんだぜ」
「慰めになってないニャ」
雪華さんの視線を気にしながら、俺達は小声で話し合っていたんだが。
あっという間にチャイムが鳴り出したんだ。
これで昼休みに突入だ。
教師が出て行くと、俺は雪華さんにワザと聞こえるような大き目の声で。
「アリシア、屋上に行くぞ」
「ウニャ?!は、はいぃニャぁッ?!」
戸惑いの声を上げるニャン子には目を向けずに、雪華さんのアクションを待ったんだ。
「・・・・・」
何も言わないし、動きも見せないな。
それじゃぁ・・・
「ニャわッ?」
むんずとアリシアを猫掴みにすると、急いで教室を後にしたんだ。
「ニャにをするにゃ?」
いきなり猫掴みされたアリシアが抗議の声を上げるが、
「黙ってろよアリシア。
その姿勢で後ろが観えるだろ?つけられていないか見張ってるんだ」
だら~んとなってるアリシアからは、俺の後ろが観えている筈。
「俺がカマをかけたのに釣られて、雪華さんがついて来ないか見張ってろ」
「そうニャったか!やるではニャいかアルジのユージ」
首根っこを摘ままれたアリシアが褒めるが。
「しかしなぁニャン子。
お前って本当に猫丸出しだなぁ・・・軽いし」
猫掴みされて動けないアリシアを笑ったんだ。
「軽い?
そうかニャぁ・・・アルジがそう言ってくれるニャら悪い気はしニャいぞ」
片手で軽々と持てるアリシアが軽いのだろうと思っていたんだ。
まるでそこらの猫を摘まんでいるような軽さだったからさ。
「ニャったら・・・もっと食べて重くなるニャ。
重くなったら猫掴みされニャくなるかもニャ」
全く・・・お気楽な猫娘だ。
屋上へと続く階段の角まで来た俺は、すっと蔭に身を隠すと。
「どうだ?雪華さんはついて来たか?」
アリシアを降ろしてつけられていないかを確認する。
「来ていないニャ。どうやらまだ出方を探っている段階みたいニャ」
「ふむ・・・相手が異星人だから、油断は禁物だろ」
暫く様子を観ていたんだが、後を追いかけて来る気配はない。
「もう良いかな・・・だったら萌の待つ屋上へ行くか」
「そうニャね・・・もう大丈夫ニャ」
いくら待っていても仕方がないから、屋上へ登る事に決めた。
階段を登り切り、ドアを開ける。
「もう萌は来ているのかな」
屋上に来ている筈の萌を探す・・・必要もなかった。
「ゆー兄ぃ!こっちこっち!」
ドアを開けて出た瞬間に呼ばれたよ。
萌が手招きして呼んでいたんだ。
その横には親友の春香さんの姿も見えた。
「萌たん・・・嬉しそうニャ」
そうか?別段変わってはいない・・・事も無いか。
先週まで萌はツン状態を貫いて来ていたんだった。
入学式以来だな。
これだけ明るく俺を手招いて来るなんて。
それに、萌と弁当を伴にするなんて考えていなかったよ。
「ああ、お待たせ。
春香さんも来てくれたんだ?」
俺が挨拶すると、春香さんはニコッと笑ってくれたんだ。
「萌のお兄ちゃん、お久しぶりですねぇ~。
何があったのかは聞いていないけど、萌もやっと吹っ切れたみたいだから」
うぷぷと手を口に当てて応えてくれたんだ。
「春香ッ!余計なことを言わないでよ」
途端に赤面した萌が吠えやがる。
萌と春香さんはいつも通りだ。
あんなことがあったというのに、萌は春香さんを疑わなかったようだな。
「あ、そちらの赤毛の方がアリシアさんって子?」
春香さんがアリシアに気付いて訊ねると。
「そ~、ちょっと変わってるけど・・・」
萌が俺とアリシアを指して。
「ゆー兄ぃの下僕なの」
あっさり本当の事をバラしやがった。
「下僕・・・ニャか」
またもやアリシアが凹む。
「だからね・・・安心して良いんだ。
ゆー兄ぃも下僕には手を出さないって言い切ったもん」
・・・おい、萌。
「へぇ~?!結構いけてる女の子なのに?
もしかしてお兄ちゃんって・・・食べず嫌いな方?」
・・・もしもし春香さん?
くりくりと笑うくせ毛の春香さんに悪態を吐かれてしまったよ。
「食べず嫌いニャか、アルジのユージは?」
阿保猫、その食べもんじゃねぇよ。
なんのことやらさっぱり分かっていないニャン子はおいといて。
「萌、弁当は持って来てくれたんだよな?」
腹が減ったと急かしたら、横に置いてあった包みを差し出して来ると。
「じゃぁ~ん!二人分しっかり持って来ました」
いつもならアメリアさんからっと言って、ぶっきらぼうに差し出すのに。
今日は自分が作ったのを誤魔化そうともしない。
「絶対にぃ~美味しい筈だよ!」
筈・・・ですかい?
俺は先日食べた塩辛過ぎる弁当を思い出して冷や汗を掻いたんだが。
「そうニャ~!萌たんは料理の達人ニャから!」
阿保猫は勇んで弁当を受け取りやがった。
「ほら、ゆー兄ぃも・・・」
嬉々として弁当箱を受け取ったアリシアと、手を差し出した俺。
微笑む萌の手に下げられた弁当を受け取ろうとした・・・瞬間だった。
突然、昼間だというのに寒さが襲って来たんだ。
もう夏前だというのに、急に肌寒くなりやがった。
確か、この肌寒さをどこかで感じたんだが・・・どこだった?
・・・つい最近感じた気がしたんだが・・・
瞬間に辺りの温度が急落した気がしたんだ。
急に冬に戻ったような・・・薄ら寒さが襲って来た。
「萌・・・寒くないか?」
差し出している萌に訊いたんだ・・・が。
「え?!」
萌が・・・動かない?
違うッ!これは・・・
「アルジのユージ!大変ニャ!魔法結界に包まれたニャ!」
弁当箱を持ったままのアリシアが叫んで、やっと理解したんだ。
ここがもう、機動少女達の世界になっていたのを。
「ふ・・・ふふふ・・・」
誰かが俺達を観ている?!
「うふふ・・・」
誰だ?!笑うのを辞めて現れたらどうなんだ?!
俺は頭の中で吠えていたんだ。
結界に縛られてしまった機動少女の主として、相手を見つけなきゃならないから。
「そうね・・・現れてあげなきゃ戦えないモノね」
その声は冷たく冷ややかに聞こえる。
少女だと思われるけど、誰なんだ?
それにこの結界の中は・・・凍えてしまいそうな程寒いんだが?
「寒い?でしょうねぇ・・・私の世界なんだから」
声の主を探す内に、聞こえた方角を観たんだ。
屋上にある避雷針の上。
針の先のような場所に・・・居たんだ。
「私は氷結のセッカ。
あなたの命を貰い受けるわ」
俺に対してなのか。
はたまたアリシアを指すのか。
「だから・・・大人しく凍って頂戴ね」
避雷針の上に佇む少女。
悪意の声を放つのは、薄青い髪で紅い瞳をこちらに向ける着物のような服を着た少女。
その子から発せられているのは冷たい異能・・・
え?!
マジでいきなり?
セッカは勝負を挑んできたようです?!
こうなったら機動少女に・・・って?
あ、機動ポットが無い?!
やばいかも・・・・
次回 氷結の雪華 その3
遂にアリシアが?!魔法少女らしく・・・変身するッ!




