思惑 その1
乗山市にある私立東雲高校2年生の野良有次は、突然舞い落ちて来たニャン子なケモ耳少女アリシアに出逢いました。
ユージの頭上から墜ちて来たアリシアは、自分を異星人だと名乗ったのです。
来訪の目的は、自分の所属している銀河連邦時空管理局の保安官を探し出す事でした。
ですが当初からアリシアはドジっ子ぶりを発揮して、ユージの元に居候する事になったのです。
地球上のどこかに居る保安官を探す・・・顔も名前も判らないというのに。
そんな折、ユージの義理妹萌が二人の前に現れたのです。
反抗する萌の中に芽生えている心を読み取ったアリシアは、二人の仲を取り持つ力になりました。
普段、義理の兄ユージを避けて来た萌でしたが、
アリシアの存在が自分の中にあるユージへの想いを曝け出させたのです。
ユージと萌の間には、過去の出来事がトラウマになっていたのです。
ユージは覚えていないと言いますが、萌はバケモノとの遭遇の最中に観たユージの姿が焼き付いていたのでした。
それ以来、萌の心には義理兄ユージが頼れる人であり愛すべき存在になっていたのでした。
萌を撒き込んでニャン子なアリシアは、目的を果たす為に敵を追いかけました。
敵?
そうです、保安官を見つける為に芝居じみた捕り物を始めてしまったのです。
敵・・・その名は<ドアクダー>という秘密結社。
全宇宙を股にかけている犯罪組織なのだそうです。
その秘密結社員をたまたまユージ達の通う学校で見つけたアリシア。
自分が保安官の補助の助手を務めていると教えて、ドアクダーとの一戦を行う事によって目的を果たそうと考えたのでした。
しかし、先手を打って来たのはドアクダー・シザーハンズだったのです。
ユージが初めて観るアリシアの変身。
機動ポッドからの光によって姿を変えたアリシアは、機動少女と成ってドアクダーを倒したのです。
自らをユージの下僕だと告げ、命令を受ければいつでも機動少女と成ると言い切りました。
不思議な力を持つ機動少女アリシア。
ニャン子な時にはドジっ子なのに、一旦機動少女に成れば別人と化す。
紅い髪が伸び、体つき迄もが大人びる・・・
一旦戦闘ともなれば、異次元の強力さを発揮する。
新米保安官補助手なんて思いもしない程の威力を見せつけたのです。
ニャン子なアリシアが言うには、それはまるで女神級と呼ばれる保安官にも似た姿なのだと知れました。
つまり、ユージの下僕は女神様?
ニャン子なアリシアと機動少女なアリシア。
どちらが本当の姿だというのでしょう?
機動少女が現れた事で、敵の中にも変化が。
地球人に化けた異星人達の中に、ドアクダーの一味も居たのです。
地球を根城にしているドアクダー幹部<ナンバー11>の存在。
男装の麗人<ナンバー11>は、ビジネスと自らが呼ぶ謀を企てていたのです。
この星のどこかに眠る<秘宝>を探し出す為。
そして自分の栄華を極めん為に。
ドアクダー幹部<ナンバー11>の策略が動き始めていたのです。
悪の秘密結社と保安官補助手アリシア。
策動するドアクダーと、ユージ達が如何に係わりがあるのか?
それは未だ謎のままです。
ユージと萌の義理兄妹に訪れた普通じゃない日常。
空から降って来たニャン子によって齎された非日常・・・
ユージはアリシアと一緒に居ることで、なにか面白いことが起きそうだと思いつつも、ドアクダーを警戒していました。
妹の萌は、実家に帰って来たユージを想いながらも、アリシアの存在が自分をユージから遠ざけないかと警戒していたのです。
一方ニャン子なアリシアはと言いますと?
早く保安官を見つけて、自分の星に帰るのを夢みているだけの様でした。
三者三様・・・思いは何処へ?!
始った共同生活を、どう暮らすのか?
少年少女は、それぞれの想いを抱きつつ・・・
「起きるのニャ!起きニャいと・・・こうニャ!」
制服を着たニャン子が吠えてる。
「煩い・・・アト5分・・・」
布団に潜り込んだ俺に、ニャン子の奴が。
「駄目ニャ~!今日はアタシも行くんだニャぁ~!」
吠えるニャン子。
いや待て。
なぜ東雲の制服を着てる?
がばッ!
飛び起きたよ俺。
「アリシア?!どうして萌の制服を着てるんだ?」
萌の制服を着ているニャン子に、俺が質したんだ。
「惚けるニョもいい加減にするニャ!
昨日散々アタシを除け者にしようとしたくせに!」
・・・そうだったっけ?
「アタシが家の中でゴロゴロして待ってるニョが嫌だとゴネたら。
学校に来れば良いって言ったニャぞ!」
・・・そんなこと言いましたっけ?
「普段着で度々忍び込むのは問題があるからって、萌たんの制服を貸してくれたニョだぞ!」
・・・知らん!貸したのは萌だろ?
「兎に角!萌たんが起こして来てって言ってたのニャ!」
あ・・・そう?
で?
時間は・・・まだこんな早いじゃないか?!
先週までなら、まだ寝てるぞ?
もうひと眠り出来るだろ?
「すやぁ~~~~」
「寝るニャぁッ!」
ボコ!
アリシアの飛び膝蹴りが腹にめり込んだ・・・
「おはよう、ゆー兄ぃ・・・って?!どうしたの?」
キッチンでお弁当を造っていた萌が、俺の顔を見て訊いて来た。
「ニャン子に殺されかけた」
「そんな簡単にアルジのユージは死なないニャ」
いや、普通に死ぬかけたぞアリシア。
「アリシアもアリシアならゆー兄ぃもゆー兄ぃだねぇ」
ぷっと吹き出す萌の笑顔。
先週まで、朝一番から拝めることのなかった義理妹の笑顔だ。
「今日からは3人で生活していくんだから、先ずはきちんと朝食を摂ってね」
お弁当箱を3つ用意し終えた萌が、テーブルの上を指した。
そこにはトーストや目玉焼きが置いてある。
「冷めたら美味しくなくなるから・・・」
早く食べてと俺とアリシアに勧めているんだ。
「俺はブラックしか飲まねぇぜ?」
珈琲を淹れてくれと頼んだら、萌は何も言わずにカップを指すんだ。
「お・・・もう出来てたのか?!」
俺がブラックしか飲まないのを心得ていたらしく、真っ黒な珈琲が湯気を立てていやがった。
「ゆー兄ぃは好みがはっきりしてるからさ。覚えやすいんだよね」
ミルクや砂糖を入れない俺の好みをか?
テーブルに着く俺の脇からニャン子が珈琲に興味を惹かれたようで。
「その真っ黒な液体はニャんニャ?」
おや?アリシアは珈琲を知らないのか?
ふむ・・・・
「呑んでみれば分かるよ」
ブラックの渋みを知らないだろうから・・・悪戯心で言ったんだ。
「ふむ・・・香りは善いニャ・・・」
珈琲の匂いを嗅いだアリシアが、舌先で珈琲を嘗める・・・と。
「にゃッ?!苦いニャ苦いニャあぁ~!」
案の定だな。
身悶えるニャン子を観て、俺はVサインを後ろ手に出す。
「何やってるのよゆー兄ぃは!
呑んだことの無いアリシアがびっくりするのは当たり前だよ」
そう言った萌が砂糖入りのミルクコーヒーを差し出して。
「アリシア、こっちを呑んでみたら?」
同じ珈琲でも、甘い味の勝ったカップを勧める。
「ウニャ~~~萌たんありがとうニャ」
そっちも一嘗め・・・
「美味しいニャ!」
今度は頬を緩めてアリシアが驚いたんだ。
「どっちも珈琲なんだけど。
甘味料を入れたら、別ものになっちゃうでしょ?」
「そうニャンか?!萌たんは物知りニャ、感銘したニャ」
コクンと一飲みしたアリシアが、ほええぇ~と顔を綻ばせた。
「さぁさぁ!朝ごはんを食べたら学校へ行くんだからね!」
萌もテーブルについて3人の朝食が始った。
それは宇宙から来たアリシアとの初めて執ったまともな食事だった。
落ち着いて食べれた朝ごはんだったんだ。
そうさ。
これから始まる非日常なんて、思いもしない朝の幕開けだったんだ。
ニャンと?!
アリシアまでが学校へ?!
どうやったら異星人のニャン子が通えるのか?
ユージはどんな謀を廻らせているのでしょう?
次回 思惑 その2
義妹と登校するなんて・・・高校では初めてだったな・・・




