本当のアリシア その3
ニャン子なアリシア。
機動少女のアリシア。
どちらにも言えるのは・・・・ドッジ!
カックン・・・
ニャン子の姿に戻ったと思えば。
「ありゃりゃ?また寝ちゃったよゆー兄ぃ?」
今迄機動少女だったアリシアは、姿が戻ると寝息をたてて眠り込みやがった。
す~ す~ すやぁ・・・
さっきまで話していたアリシアとは別人。
機動少女から戻るといつも眠り込みやがる。
「どうするゆー兄ぃ。寝かしておくの?」
うむ・・・なんだか釈然としないな。
いつも魔法が解けると寝込んじまうのだろうか?
「・・・叩き起こしてみろ」
もしも起きないのであれば、魔法の後遺症だとも判断できる。
機動少女を解除したら、暫くは使い物にならなくなると意識しておかねばいけない。
「うん・・・こらニャン子。起きなさいよ」
耳元で遠慮がちに萌が起こそうと声を掛ける。
ぴく・・・
ケモ耳が反応しただけだ。
「生温いぞ萌。俺を起こすくらいの勢いで叩き起こしてやれ」
「え・・・よし!」
促した俺は、ケモ耳少女に手を併せる。
萌の本気は・・・想像を絶するからな。
「起きんかぁッ!このぉ~~~ッ!」
萌の本気・・・哀れニャン子よ。
ドスッ!
萌のボディブローがニャン子へ突き刺さった。
・・・惨いな・・・
「ぎゃニャぁッ?!」
めり込んだ萌の鉄拳・・・目を剥くニャン子。
「ほらっ!これで眼が覚めたでしょ?」
勝ち誇る萌。
うむ・・・初めて見るが。
萌に叩き起こされていた時はこんな目に遭わされていたのか俺も?
「ニャ・・・・きゅうううぅ~」
目を剥いたと思ったが、再び目を閉じやがった。
「あれ?やっぱり魔法で目覚められないんだ?」
アリシアが再び目を閉じたから、てっきり魔法の所為だと思った萌。
俺はアリシアの瞼を無理やり抉じ開けてみたんだ。
一度は眼を開けたんだから、魔法の所為だとは思えなかったんだ。
で・・・確認してみた訳。
瞼を抉じ開けたら・・・白目になってた。
「萌・・・パンチが効き過ぎたんだな。気絶・・・しちゃったみたいだ」
「ええッ?!おかしいなぁ、ゆー兄ぃだったら悶絶しながらも起きるのに?」
・・・いつもこんなパンチを喰らっていたのかよ?
実家に居た時には、殆ど毎朝こうやって叩き起こされていたんだが?
「俺って、萌に鍛えられていたのか?」
「あ・・・はは。そうかも・・・」
で・・・?
被害者アリシアは?
そのまま気が着くまで放置プレイ。
ここはどこかの秘密結社基地。
「管理局が動き出しただと?」
モニターに写り込む黒い影が訊きました。
「はい。こちらは2駒やられてしまいました」
モニターの前に居る者が答えるのです。
深々と椅子に腰かけ、同時通話回線のモニターを観ているのは?
「こんな辺鄙な惑星にもやって来るとはな・・・
我々の組織を壊滅させる気なのは重々承知だが。
で、まだブツは手に入らないのか、ナンバー11よ?」
ナンバー11と呼ばれた者がクスリと笑ったのです。
「あれは見つけるだけでも時間がかかりますのでね」
モニターの影に対してあっさりと断りを入れて。
「本部からの依頼でなければ、手を出しかねるブツですから。
惑星一つの運命を左右する<品物>ですからねアレは」
モニターに向けて、にやりと笑うのでした。
「むぅ・・・確かに手に出来れば脅迫出来よう。
惑星国家を揺るがすだけのブツなのだからな<翠の瞳>は!」
影はナンバー11に、念を押します。
「何としても探し出すのだ。
アレさえ手にすれば、時空管理局も簡単には手が出せなくなるだろう。
そうなれば我等ドアクダーの天下になるのだからな」
通話先の相手は、そのような話には興味がないのか。
影に対して薄く笑いつつ、こう言うのでした。
「それよりも、この惑星にある地下資源を確保した方がビジネスになりますよ。
銀河連邦で枯渇しているボーキサイトを高値で取引した方が現実的です。
下手に<翠の瞳>などに手を出して保安官達に注目を浴びるなど、愚の骨頂でしょう?」
どうやら、ナンバー11の言うビジネスが正論のようですが?
「お前にはのし上がりたい気はないのか?
ナンバー11などという低い位置づけで、満足だと言うのか?」
「はい。位よりも金ですよ、私が欲しいのはね」
モニターの影に対して尊大な態度をとるナンバー11。
自らが欲しているのは金だと言い切ったのです。
「金など位が上がれば、自ずと付いて来るだろうに。
お前はその僻地で暮らすのがお似合いの様だな」
影はあからさまにナンバー11を見下しています。
ですが、笑うナンバー11は。
「そいつはどうでしょうかね。
運良く<翠の瞳>を手に出来るかもしれませんよ。
大金を手に出来れば、追跡者だって雇えるのですからね。
銀河髄一の<蒼き流星>だって呼び寄せられるのですから、金さえ手にすれば」
影に対して自分の考えを披露しました。
「そんな悠長な話をしている様では、他の奴等に先を越されてしまうぞ?」
影は自らが手を下さないというのに、ナンバー11を非難します。
「他の奴等ですか?それなら勿怪の幸いですよ。
見つけた奴等から奪ってしまえば事が足りるのですからね」
悪党の中でも最たる奴なのかもしれないですねナンバー11は。
「・・・そう巧く事が進めば文句はない」
影はこれ以上の会話を打ち切りました。
モニターがブラックアウトし、音声も切れたみたいです。
「愚かな奴。
自分の位を上げる為だけに奔走するなんて・・・馬鹿な男だ」
悪態を吐くナンバー11。
椅子から立ち上がると、執務室から遠望できる夜景を見下ろします。
「先ずはこの星から手に入れれば良いのだ。
この星に<翠の瞳>が隠されているのなら、星自体を我が物にすれば良い。
そうすれば自ずと見つけることが出来よう・・・ふふふ」
ガラス越しに夜景を見るナンバー11。
反射したガラスに映る姿は、金髪でブルーアイ。
長い金髪を結い上げたスーツ姿の麗人。
・・・それがナンバー11と呼ばれるドアクダー幹部だったのです。
悪の組織ドアクダーが蠢き始めました。
ユージ達が異星人と接触し始めたのと時を同じくして。
今迄誰も気が付かなかった世界の秘密が蠢き始めたのです。
異星人が紛れ込んでいる・・・人に化けて。
いいえ。
もしかしたら、物体に化けているかも知れないのです。
隣に居る子が、もしかしたら別人かもしれない。
もしかしたら急に怒りっぽくなった恋人が、異星人かもしれないのですよ?
普通なら猜疑心の塊になってもおかしくはないというのに。
「アリシアは起きたのか?」
ユージと萌は、早くも馴染んでいるみたい。
たったの2日で?
僅か2日でニャン子との生活に馴染んでしまったとでも?
「うん、起きたみたいだよ」
義理妹の声で、ユージはベットルームに呼びかけます。
「起きたのかアリシア?」
「はいニャぁ・・・お腹が痛いのは何故ニャ?
お腹が減り過ぎてるのかニャぁ・・・」
ユージの呼びかけに答えて部屋から出て来たのは、赤毛のニャン子アリシア。
機動ポッドを外して現れたニャン子な少女は、二人に対して無防備な素顔を見せました。
癖っ毛がピョンと撥ねた髪。
寝起きの顔で二人を観ているのは深緑色の瞳。
たゆんと揺れる胸、クルンと振られる尻尾・・・すらりとした足。
機動少女とは見た目も違うニャン子なアリシア。
「起きたのなら晩飯は食えるよな?」
「今度はちゃんと行儀良く食べて味わいなさいよ?」
キッチンから萌が料理を持って来ます。
丸2日、ろくに食べていなかった3人。
やっと落ち着きを取り戻し、漸く温かい夕飯を摂れるようです。
「ニャっ?!ご飯にゃ?」
クンクン匂いを嗅ぐアリシアに、萌が笑います。
「そ~!今度は一品づつ味わって食べてよね!」
気絶させた償いなのか、それとも今度こそ料理の腕前を披露しようとしてるのか。
笑う萌にはもう、アリシアに対する疑念は微塵も感じ取れません。
猫娘で異星人が居る。
自分の造った料理を待っている。
義理兄の横に居るのが、インベーダーを倒した異星人だというのに。
萌には何年も前から知っていた子にも思えたのです。
ニャン子が傍に居る。
自分を召喚者と呼ぶ機動少女が萌の手料理を食べようとしている。
星空から降ってきた魔法少女な異星人。
有次には、傍にいるのが当たり前のように感じ始めていたのです。
赤毛が跳ねる。
紅い尻尾が嬉しそうに揺れている。
義理兄妹の傍に居るのは、異星から来たニャン子な少女。
屈託のない笑みを溢す、ケモ耳尻尾有りなアリシア。
銀河連邦時空管理局の保安官補助手と名乗ったアリシア。
遠い銀河の果てから来たニャン子星人のアリシア。
一旦闘いになると機動ポットからの魔法で変身する。
未だに不明な点も多々あるのだが、信頼するに足る少女に違いない。
ニャン子なアリシアも機動少女なアリシアも、一体どれだけ秘密を抱えているのでしょう?
3人の不思議な共同生活は、今始まったばかり。
まだ敵の正体も目的も掴めては居なかったのです。
始まった新たな世界に、3人は飛び込んだだけだったのですから。
唯、機動ポッドは金色に輝き続けていたのです・・・未来を照らすかのように。
不思議な因縁か?
3人はこうして回り逢ったのです。
機動少女アリシア。
彼女に纏わる真実が日の目を浴びるのは何時でしょう?
これにて第1章を終演します。
次回は閑話的なお話になってます。
次回 銀河の保安官って?
アリシア達銀河連邦の保安官って?どんなの??




