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機動女神エターナル・レッド ケモ耳ニャン子は俺の女神様?  作者: さば・ノーブ
邂逅の章 堕ちて来たのはニャン子?!
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俺が特異点だっただと?!その3

ニャン子じゃないアリシア。

機動少女アリシアに、俺は戸惑うばかりなんだ・・・


それは萌だって同じだったに違いない・・・と、思う。

熱い湯船に浸かりながら、今日一日を思い返していたんだ。


アリシアがドアクダーをモノの一撃で葬ったんだ、謎の美少女に変身して。


ニャン子な異星人アリシアは、もう一つの貌・・・いいや。

別人の姿を見せた・・・俺達に。


でも、変身したアリシアは俺を特異点だと言うんだ。

変身できたのは俺が居たからだとも教えた。


それに何より、俺だけしか話す事が出来ないみたいなんだ。


「変身する触媒か何かだとでも言うのか?

 アリシアは俺を選んだとでも言うのだろうか」


地球上で俺一人を選んだ?有り得ねぇ・・・


俺は異星人に知り合いなんて居なかったんだぞ。

土安が異星人だなんて昨日まで知らなかったんだぜ?


どうして俺を選んだんだよ?

何もとりえもない普通の高校生の俺を、どうして選んだんだ?


考えたって理由が分からない。


「機動少女とか言ったっけ、変身したアリシアが。

 機動ポットが選んだと言ってたけど、何故俺の上に墜ちて来たんだよ?」


もう一度彼女に詳しく訊いてみたかった。

それに、ニャン子なアリシアは何故もう一人の自分を知らないと言うんだろう。


「アリシアにも訊いてみるか。本当に変身した時の事を覚えていないのかって」


グチグチ考えるのは俺の性分じゃない。

きっぱり訊いて、訳を知らなきゃ治まらない。


「さて・・・もう出るとするか」


湯船を出ようと腰をあげようとしたら、誰かの気配を感じたんだ。

風呂場の表に誰か・・・居るしたら。


「ねぇユージ兄・・・此処に居ても良い?」


曇りガラスの外には、萌が居るようだ。


「テレビ点けたらアリシアが起きちゃいそうで。

 でも、何もしてないと・・・怖くて・・・」


先に風呂を済ましていた萌が、ドアの表で佇んでいる。


「今日の事が本当だって・・・やっと実感が湧いて来たの。

 アリシアの赤毛を観てたら、本当に土安が襲って来たんだって分かったんだよ。

 現実離れした化け物になって・・・アタシ達の前に現れたんだって・・・」


か細い声で話す萌。

いつもの勝気な声とは全く違う・・・けど。


俺は萌の声で思い出したよ。


「怖いのか萌?」


「う、うん・・・怖いかも」


震えているようにも思える少女の声。

記憶の片隅で、萌が震えている姿を思い出した。


まだ義理妹になる前の事だ。

萌は震えながら俺にしがみ付いていた。


暗い星空の下で。

身の毛もよだつ怪異に襲われた後で。


何が起きたのか、正直俺も判っちゃいなかった。

唯、俺は萌を助けなきゃって・・・何かに挑んだ気がする。


それが何だったかは思い出せないけど。

だけど後から萌が言うには、俺が萌を助けたのは間違いないらしい。


しがみ付いて震えている萌を、抱きしめていた事だけは覚えている。


その日以来、萌は一人きりになるのを怖がるようになった。

誰かの傍に居なければ、あの夜を思い出すのではないのか。


トラウマになったあの日を今、思い出しているのかもしれない。



「大丈夫だよ萌。いざとなったらアリシアを叩き起こせよ」


俺は半ば冗談で言ったんだが。


「ううん・・・いざとなったらユージ・・・兄さんの居るお風呂に飛び込むから」


待て・・・今は駄目だぞ、裸だからな。


・・・って。

おいおいおいッ?!風呂から出られねぇじゃねぇか?!


「ねぇ・・・早く出て来てよ」


だから・・・出れないだろーが!


あ・・・怒ったらのぼせそう。


「出るから・・・そこを離れてくれ」


「やだ!怖いもん」


・・・イカン・・・もう・・・目が眩みそうだ。


「のぼせるから・・・服を着る間出ててくれ」


「あ・・・そっか」


やっと理解してくれたか。


「じゃぁ・・・風呂場の外で待ってる」


脱衣場の外に萌が出た気がした。

一刻も早く風呂から出ないと・・・目が回りそうだ。


焦った俺が曇りガラス戸を開けた・・・ら。


「あ・・・」


「えッ?!」


まだそこに居やがったんだよ萌が。


「ぎゃぁッ?!外に出たんじゃなかったのか?」


「みッ?!観てニャいからぁ~!」


萌も萌なら、俺も俺か。


観られたって減るもんじゃないことぐらい分かってるのにな。

男の裸を喜ぶような萌じゃないのも、知っている・・・筈。


「やっぱり、死ねぇ!」


驚愕の表情を手で隠した萌が、手元にあった物を問答無用でぶつけやがった。


あまりにも理不尽じゃないか、我が狂暴義理妹よ。






「ホント・・・起きないね」


「マジで・・・こんなに騒いだってのにな」


頭を押さえて痛みをこらえる俺が、ぶつけた張本人に言ってやった。


風呂場で騒ぎが起こったのに、アリシアは目を覚まさない。


「あの変身が、余程体力を消耗するんだろうか?」


「そうかもね、あんなに変わったんだもん」


別人と化したアリシアを観て、萌もそうかもしれないと相槌を打った。


「起きるまでこのままにしておくべきだよな」


「そうだね、ドアクターもやっつけたんだし大丈夫だよね」


そう答えた萌を横目で見ると、少しばかり身体が震えているのが判る。


ー 怖いんだろうな萌は・・・


風呂場で思った通りなのだと思ったよ。

思い出したくない記憶を呼び覚まされちまったのだろう。


震える萌を観ていたら、後ろの時計が目に飛び込んで来た。


「もう日付を跨いじまったぜ萌。明日もあるんだから寝ようか?」


デジタル時計は既に0時を回っていたんだ。


「う・・・うん。そうしようかな?」


そう言ったけど、寝る場所がない。

普段は俺だけしか居ないアパートに、3人が寝れる場所が見つけられない。


「萌はベットの傍で寝ると良い。俺はその辺で寝るから」


女の子なんだからアリシアとベットルームで寝ると良いって言ったんだが。


「・・・一緒に寝たいって言ったら・・・怒る?」


少しだけ・・・声を落として訊いて来る。

俺が断る筈だと思っているのか、駄目元で訊いたのだろう。


「怒りはしないけど・・・」


断わろうか迷っちまったんだよ。

一瞬の戸惑いを、萌は了解したと思い込んじまった。


「うん!ありがとうねゆー兄ぃ・・・さん」


ぽて・・・っと、萌の頭が俺の胸に添えられた。

心の底からほっとしている萌を感じたんだ。


ー そうか・・・そんなに怖かったんだな萌は?


ほっとした表情を見せられて、俺はそう思ったよ。


「じゃぁ余分のシーツを布くから、萌はその上で寝るんだぞ」


一緒にって言うんだから、女の子の萌を床に寝せる訳にはイカンだろ?


萌の傍で寝てやるからと、俺が布団容れから取り出して来ると。


「もぅ・・・鈍感」


小声で呟く萌が微笑んだよ。





燈を消してから・・・何分が経ったろう?


「ねぇ・・・起きてる?」


やっぱり・・・眠れないようだ萌も。


「ああ・・・」


常夜灯の薄明りの元、萌の背中が見える。


「本当に夢を見ていた気がしたよ・・・昔を思い出しちゃったから」


やっぱり・・・記憶を呼び覚ましていたのか・・・


呟くような小声で、萌が話しかけて来る。


「アタシ・・・ね。

 あの日に観たゆー兄さん・・・ユージの姿を思い出しちゃった」


二人だけの時にしか呼ばない俺の名。

それを使う時はいつも昔に戻っているみたいだ。


「アタシが化け物に襲われた時・・・

 お父さんの研究を奪いに来た奴等の人質に獲られそうになった時。

 ユージが助けてくれたのを、今でもはっきり覚えてるもん」


そうだったような・・・俺には思い出せないけど。


「アリシアみたいな姿じゃなかったけど。

 ユージはアタシを助ける為に闘ってくれたのを、忘れはしないから」


そうだったっけ?


俺が黙って聞いていたら、萌がくるりとこっちに向いた。


「アタシ・・・もしユージが助けてくれなかったら。

 もう生きてはいなかったのかも・・・怖いよ、怖かったんだよ?」


常夜灯でも萌の深緑の瞳が判る。

その眼に湛えた涙さえも・・・


「だから・・・今日の出来事は、あの日の再来にも思えちゃうんだ。

 また悪夢が襲いかかって来たんじゃないかって・・・思っちゃうんだよ」


萌の手が俺のシャツを掴む・・・震える手で。


「大丈夫さ萌。もう怖くなんかないんだぜ?

 俺やアリシアが傍に居るんだからな・・・安心しろよ」


「うん・・・やっぱりユージは優しいね」


義理兄妹になる前の記憶を呼び覚まし、心を恐怖に悩まされた萌。

普段の勝気な姿は影を潜め、か弱き少女に戻っているようだ。


俺の知っている萌・・・数年前の萌は、こんなだった。

日本人には見えない容姿を、周りの悪童は揶揄しやがった。

だから、俺が萌を護る事にしたんだ。

だってそうじゃないか、こんなに可愛くか細い子を護らなくてどうする?


俺も、記憶を呼び覚まされちまったよ萌。


「安心しろよ萌。俺はどんな時だって護ってやるから」


そうだ、それが俺と親爺が交した約束だったんだから。


「うん・・・」


シャツを掴んでいる萌の手の上に重ねてやった。


細くしなやかな少女の手を感じた。


「だから・・・安心して寝ろよ。俺が居るんだから」


シーツから外れた萌の躰が、俺の傍に寄って来ていた。

涙を湛えた瞼が閉じ、安心したのか手の震えも停まった。


「朝になったら、もう思い出すんじゃないぞ」


目覚めたのなら、きっと忘れているさ。

過去の思い出なんかに囚われていたらいけないんだから。


ほっとしたような萌の顔を観ていたら、なぜだか俺も安心したよ。



「す~す~・・・・す~」



萌の寝顔をこんな近くで観るのも初めてだ。

萌の安心した寝顔を観れたのは、もしかしたら。


俺はベットで爆睡中のアリシアが、授けてくれたのではないかと錯覚したよ。


「ホント・・・天から墜ちて来たニャン子神かもな」


女神とは言わないぜ。

女神ならば俺を蹴ったりしはしないだろう?



でも、感謝するべきなのかもな。



「すやぁ~・・・うにゃぁ・・・もう食べれないニャ~・・・・」



寝言さえ溢さなきゃな。

ニャんですか?

アタシを除け者にして?


ニャン子なアリシアが愚痴てますが・・・ほっておきましょう。



機動少女なアリシアさんは、ニャ語を使わないのかですって?

訊いてみましょう。



挿絵(By みてみん)



機動少女アリシア「ニャ語?なによそれは?」


基本的に知らなそうですけど?


次回 昼下がりの怪異 その1

またもや厄介な事になりそうですが?

義理兄妹に迫るのは苦難なのか。

それとも・・・むふふな展開なのでしょうか??

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