地上の楽園Heaven On Eath その9
アリシアの元に現れたのはミシェル。
・・・と?
お邪魔女神!
自らの終焉を齎す筈だった結界が、聖剣に憑依した女神に因り打ち消された後。
保安官であるミシェルがやって来たのです。
もう一柱の女神を伴って。
蒼き珠の中から、暖かな光が零れて来るのです。
まるで愛を語るかのように、愛を遂げさせるかのように。
引き裂かれる愛を繋ぎ止めるかのように・・・
「そうよ紅ニャン。
あなたが眼にしている方は、審判の女神様の使者を兼ねられてもいるのよ」
ミシェルが胸元の蒼き珠を外して差し出すのです。
握られた蒼き珠から溢れる光を、アリシアへ届けようとして。
「さぁ、あなたも手に取って語られる言霊を聞きなさい」
促すミシェルが珠を差し出し、受け取って耳を貸しなさいと言うのです。
「あなたは再び悲しい結末を迎えようとしていた。
でも、貴女が喪われれば、悲しむ人々がどんなに居るのかを考えたの?
それは嘗ての世界と同じ事を繰り返すだけなのだと、分らなかったようね」
ミシェルはアリシアが装置と共に消えようとしていたのを叱責するのです。
「約束したのでしょう?帰りを待ち焦がれている人達に。
女神が約束を果たさないなんてことが許される筈がないでしょう?」
どこで聴いていたというのでしょう。
女神となったアリシアに、ユージが帰って来いと約束を迫ったのを知っているのです。
その願いに頷いたのさえも、知り尽くしているのです。
「でも・・・反物質装置がある限り、いつまた悲劇の幕が開くか分かりません」
未来に禍根を残すべきではない・・・アリシアはそう考えているのです。
「大切な人達に、再び災禍が訪れてしまうかもしれないのです」
懼れているのは。
「今は一時の平安が訪れたにせよ、再び悲劇の始りが来てしまうかもしれない」
女神が護っていようと、隠していようとも。
いつの日にかは運命の歯車が動き出すかもしれない。
「その時になって後悔しても遅いのです。
喩え装置を完全に破壊出来なくても。
誰かが永遠に葬り去らなければ・・・禍根を残してしまうから」
誰かが願いを捨ててでも。
誰かによって永遠に災禍が訪れ無くしなければ。
「その誰かが・・・私だったというだけなのですから」
蒼き珠の光に答えるアリシア。
差し出された蒼き珠を受け取りもしないで、質すミシェルに想いを伝える事もしないで。
「一つ訊きたいんだけどアリシア。
あなたに装置が破壊出来ると思うの?
それとも隠し続けるだけに留めておく気なの?」
ため息を吐くミシェルが質します。
「並行世界での災禍を鑑みて、貴女の結界では無理だと思う。
反物質装置を破壊しようとした珠子さんと同じ末路を辿る筈よ」
ユージニアを護る為。
母は子を護らんとして悲劇を撒き散らしたのだと言う。
「いくら女神だろうと、あの破壊から世界を護るのは無理。
せいぜい出来ることと言えば、モエルと同じように隠し続けるだけなの」
確かに、アリシアだけの力では無理なのかもしれません。
「結界の中で守ろうとしたって、いつの日にかは破られるかもしれない」
遥かな時は、永久では無いと?
「永遠の守護者とはいかない。
本当の永遠とは、アリシア自身が紡がなければならないの」
「永遠のレッド?!」
ミシェルは、地図の巫女モエルと同じ事の繰り返しだと言いたいのです。
唯一人、いつ果てるとも分からない時に埋もれているだけだと。
それが地上であろうと結界の中であろうが変わらないと言ったのです。
「そう。あなたは永遠を手にしたくはないの?
本当の永遠とは、あなたが愛しい人と叶える未来を指すの。
永劫に続く愛で紡がれた未来こそが、永遠となれるの」
「未来こそが希望・・・」
諭されるアリシアの手に、蒼き珠を載せて。
「あなたは本当の愛を知った。
この星でも、あなたの故郷においても。
願いを叶えられる希望を手にした筈よ」
「私の希望・・・」
ミシェルは蒼き珠へアリシアを託すのでした。
「希望を求めるのは未来があるからこそ。
あなたは希望の女神になりなさい。
今こそ<永遠の紅き女神>となりなさい!」
蒼き珠が輝き、アリシアを包み込んで行くのです。
「「さぁ!私と共に参りましょう」」
珠に宿る女神が微笑みます。
「「永遠の希望と共に」」
愛を司る女神が、アリシアを導きます。
悠久の光を振り撒いて、永遠に語り続けられる始まりの終わりを告げに。
・・・アイシテル・・・
誰かに届けと。
・・・いつの日までも・・・
願いはいつまでも。
永遠なる誓い。悠久なる想い。
叶えるのは自分の心。
遂げるのは永遠なる未来への希望。
「「あなたは彼との約束を果たすの。
待ってくれている愛しい人々の元へ還らねばならない」」
ー そう。私は帰るって約束したのだから・・・
金色の光になったアリシアは、声に導かれて想いを果すのでした。
<アイン>号の甲板で見上げているユージの元へ。
異能を失い、女神となったアリシアを感じることも出来ない人の元へと。
ー ユージ・・・ありがとう。
傍に寄っても声は届かない。
触れようとしても触れてはならない。
もし、女神の自分が少しでも触れてしまえば、
ー 私が触れてしまえば・・・ユージに異能が伝わってしまうから。
また魔力を持つ人になってしまうから・・・
自分が目の前にいるのが伝えられなくても、女神の姿を見て貰えなくても。
哀しくても、我慢するしかないと諦めそうになったアリシアの耳に届いたのは。
「「諦めては駄目。願うのであれば通じる筈よ」」
理を司る女神の声。
そう、女神は諦める怖さを誰よりも熟知していたのです。
「「想い願えば、必ず通じるのですよアリシア」」
促すように、諭すように。
理の女神が語ったのは、ユージに微かな光が燈されたから。
「?!アルジ?その光は?!」
瞬く輝がユージに宿ったように見えたのです。
まるで神のような聖なる光が、ユージに降りたように見えたのです。
眼を見張るアリシアに、そっと呟くのは・・・
ユージの口から零れだしたのです。
「帰って来いよアリシア。
ユージの元へ、ノラーでアルジな俺の元に・・・」
まるで自分を招くかのように。
女神である自分が目の前に居るのを知っているかのように。
「ユージ?!その声は・・・ユージニア様?!」
光を燈したユージと、ニャン子星に居る筈のユージニアが重なって見えるのです。
まるで二人が共に呼ぶかのように。
「「ほらね?奇跡は何処にだって起こるのよ?」」
理の女神は微笑みを浮かべていました。
シロニャン「前書きのお邪魔って何ニョ?」
そのまんまでしょう?
シロニャン「失礼な奴ニャな?!」
そっちこそ!
・・・この後、作者は滅茶苦茶エクセリオ・ブレイカーを喰らったとか何とか?
なんとかアリシアを停めれたミシェル保安官。
そしてニャン子星に居るユージニアの元へ帰るように説得したのです。
そうだとしたら?アリシアはユージに別れを告げねば?
次回 地上の楽園Heaven On Eath その10
君の前には光があるか?君に光が観えるのか?!




