表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機動女神エターナル・レッド ケモ耳ニャン子は俺の女神様?  作者: さば・ノーブ
第3章 Heaven On Earth 地上の楽園
139/144

地上の楽園Heaven On Eath その7

地上の楽園は救われた。


紅き女神によって。


だが、本当の終りには辿り着いてはいなかったようです。

海風がユージの肌を撫でて行きます。


港に吹く海風は、待ち望む者達に何を感じさせていたのでしょう。



「アリシア・・・勝てたのか?」



空に駆け上って行ったアリシアが、空間震爆弾と黒の鎧を宇宙まで突き飛ばして災禍から護ってくれたとも知らずにユージが呟きます。


「あの光はお前だったのか?」


遥か上空で瞬いた光を観たユージは、アリシアが無事に帰って来てくれると信じているのですが。


上空を見上げていたのはユージだけではありません。

萌も、嵐も。シンバや雪華だって。

きっと赤毛の女神が舞い戻って来るのだと信じて待っているのです。


「約束したよなアリシア。きっともう一度俺の元まで帰って来るって」


心地よい海風が、一瞬停まったかと想えば・・・



 ビョゥッ!



一陣の旋風つむじかぜがアイン号を噴き抜いたのです。

まるで嵐が持っていた異能のような旋風せんぷうが、ユージ達の間を通り抜けて行きました。


「アリシア・・・なのか?」


ユージには、旋風を巻き起こしたのがアリシアにも思えたのでした。


「まさか?!アリシアが嵐の異能を使ったのか?」


でも、アリシアなら風は自分の前で停まる筈だと思い直して。


「まだ・・・終わってはいないんだな、アリシア」


女神としての務めが残されているから帰っては来ないのだろうと言ったのです。




  ビョゥッ




旋風は甲板を薙いで、船内へと入って行きます。

風の先端は船槽せんそうへ向けて、グングン船内を巡ります。


船の荷物室・・・船槽にはダレットが隠し持って来たあの船が仕舞い込まれていたのです。



「ユージニア様との約束を果たすの。

 珠子お母様を救わないといけないのよ」


アイン号の甲板で待っているユージには分らなかったのですが、女神アリシアが舞い戻っていたのです、旋風となって・・・嵐の異能を使って風を纏い。


女神アリシアは珠子がユージニアの元へと天使となってでも行くと決めている事を知りません。


並行世界のもう一人の息子の元へ向かおうとしていたなんて知らなかったのです。黒の鎧と闘っていたから・・・



「あの船をこの世界から消してしまえば。

 反物質装置を、どこか違う世界へ転移してしまえば!」


この世界でもアリシアは悲劇が襲うのではないかと危惧しているのです。

珠子によって作動してしまうのではないかと恐れているのです。


「この世界から手の届かない場所に。

 二度と悲劇を繰り返させない為にも!」


アリシアの想いは、古から引き継がれ続けた悲劇を終わらせること。

モエルから延々と続く因縁の終焉。


いつの日にかは起動されてしまうかもしれない、反物質装置の存在自体を消してしまおうと。


「反物質装置さえなくなれば、珠子さんや萌も。

 受け継ぐ人達を、運命の輪から解き放てるんだから」


女神となったアリシアの思い。

それはニャン子星で待っているユージニアの想いと通じているのです。


「斬ってみせます。

 運命の歯車から、ユージニア様も珠子お母様も。

 紅の女神アリシアが・・・断ち切ってみせます!」



 バウッ!



船槽の扉の前で、旋風が停まります。


聖剣エクスカリバーよ!私に力を貸して」



 ギンッ!



薙ぎ払われる聖剣。

厚い装甲で守られていた船槽に、穴が穿かれます。


船槽の中には、錆びついている50メートル程の宇宙船が横たえられています。


「これね・・・モエルさんの箱舟は」


アリシアは箱舟だと言ったのですが、箱舟というよりは錆びついた円盤にしか見えません。

敢えて言うのなら、禁断のアークとでも呼びましょうか。


こんな錆びに塗れた円盤が、銀河の脅威だとはとても思えませんでしたが。


「この中にモエルさんの肉体があったのね」


既に朽ち果ててしまったモエルの肉体は、痕跡すら留めていなかったのです。

冷凍保存容器には、遺体の蔭すら残ってはいなかった。


「いいえ・・・あった・・・のではなくて」


アリシアは宇宙船の内部に入ります。


機動の女神は、聖剣を片手に船内の一部分に目を向けると。


「空気製造機が壊れ、生命維持装置が停まった。

 肉体は朽ちる筈だった・・・そこにモエルさんが居たのなら」


アリシアの前には壊れ果てた機械だけが錆に塗れて転がっていたのです。

モエルが居た痕跡すら無かった・・・のには、訳があるようです。


「モエルさんと勇者剣士ユージニアスは、この地でも子を野に放った。

 私の祖先がそうであったように、地球ちたまにも子孫を残した」


そうでしたね。

アリシアはニャン子星では王女様だったのです。

古から引き継がれた異能を宿してもいたから、神となったユージニアを感じられたのでしたね。


地球では勇人と珠子が子孫として息衝いていた。

その子である有次ユージは、アリシアと同じ血が流れていた・・・だから。


「ユージニア様とユージは同一人物。

 でも、並行世界の二人は、全く違う運命を辿る事になる。

 あなたの子孫は二つの星で生き続けるんですよ、天使モエル」


目の前に微かな輝を感じていたのです。

反物質装置の動力源から漏れる、微かな光を。


「あなたは神に背いて人の味方になった。

 言い伝えではそう言う事になっていますけど、本当なのですか?」


漏れ出ている光へ向けて、女神が問いかけます。


「肉体が滅んだのではなくて、あなたは神に粛罪を遂げたのですね。

 愛しい人を喪う悲しみを知り、神の赦しを得たのですね?

 だから・・・天使に戻れたのでしょうモエル・・・いいえ、天使エル


女神アリシアの言葉に、反物質装置の微かな光が揺れる。


「でも、神は務めからは解放してくれなかった。

 装置の番人として、邪なる者達から護り続けているのでしょう?」


ドアクダー達が装置を起動させようとしていたのに、どうやっても動こうとはしなかった。

だからダレット達は地図の巫女と呼ばれる、装置の鍵を必要としていた。

起動させるには伝承にある通り、巫女が必要なのだと思い込んだのでしょう。


「それがあなたへの戒めでもあり、現実でもある。

 何万年過ぎようとも、天使であろうとも。

 自由は手に入らないと嘆いているのですね?」


揺らいでいた光が、女神の求めに応じて瞬く。


肯定するのか、哀しみで泣いているのか。

それとも・・・終わりを求めているのか?


「もうお終いにしませんか?

 あなたは十分に務めを果たして来ました。

 これ以上此処に居るのは無駄だとは思いませんか?」


微かな光に質す女神の手には、聖剣が握り締められています。


「私に断ち切らせて貰いたいのです。

 あなたや珠子さん、それに産み出された萌を名乗る娘だって。

 因縁から解き放たれるべきだと思うのです」


すぅ~っと聖剣を反物質装置に向けるアリシア。


「この装置を停めるのは、貴女をそこから解き放たねばなりません。

 天使エルが装置に居る限り、誰も装置を停めれないのですから」


モエルを天使エルと呼び、装置から離れなさいと勧告するアリシア。


ですが、微かな光は揺れ動いて躊躇しているようです。

それはこの場から立ち退いてしまえば、愛しい人からも離れてしまうと拒むかのよう。


ふぅ・・・と、息を吐いた女神は。


「それでは教えて差し上げます。

 あなたの最愛の方、勇者剣士ユージニアスの御霊は。

 私の故郷ニャン子星に祀られているのですよ。

 遠い宇宙の果てにある星の元まで、お帰りになられておられるのですよ」


この地球で最期を遂げた御霊は、遠路故郷である星に返っているのだと告げるのです。


「それが証拠は、ユージに異能を託された事でもお分かりになれる筈でしょう?

 この地に御霊がおられるのなら、ユージに宿ってでも天使エルの元へ来る筈ではないですか」


女神は天使エルを諭しました。

事実、ユージに勇者剣士を託したユージニアスは眠りに就いた。

約束を交わした愛しい人を護るのを子孫に託して。


魂は既に、始まりの大地で眠っているのだと教えるのです。


「もう、帰ってあげたら良いのではないですか。

 愛しい人の元へ、待ち続けている人の元へ」


女神は聖剣を微かに揺らぐ天使エルに向けると。


「紅の女神が・・・赦します。

 あなたに課せられた宿命さだめから、解いてあげます」


柔らかな光を聖剣から放つのです。


「この装置は私、紅の女神アリシアが消し去ってみせます。

 誰にも手の出せない場所まで送り届けてみせますから」


天使エルを放免する光が、聖剣から迸ります。


微かな光は、次第に輝きを増して行きました。

それは、モエルと自分の名を呼んだ折からの宿願。

遂に神から許しを得た、天使エルの喜びを表すかのように。


「さぁ!

 あなたは最早、自由の身。

 戒めから解かれた天使となって、愛する魂の元まで駆けるのです」


女神に諭された天使エルでしたが、なぜか不安そうに留まっているのです。

その理由は唯一つ。


揺らぐ天使エルを前に、女神アリシアが微笑みました。


「ああ、言い忘れていました。

 装置の起動を司る異能は、萌から引き継いだのです。

 全ての異能を託された折に、受け取りましたから」


そうなのです。

ユージがアリシアに託したのは、巫女の宿命も含まれていましたから。


「だから・・・心配しないで。

 私が必ず装置を安全な場所に送り届けてみせますから」


紅の女神アリシアが、断言したのです。

自分に全てを任せるようにと。


女神が・・・です。

天使が断る理由がありましょうか。


その言葉で、天使エルは背中の羽根を羽ばたかせます。

金色に染まる天使の羽根をゆるゆると羽ばたかせ・・・


感謝と涙を贈り、空へと羽ばたいていくのでした。


嘗て、最愛の人と出逢った大地へむけて。




アリシアの足元に、一本の羽根が舞い堕ちて来ます。

天使エルが残して行ったのでしょう。


羽根を拾い上げたアリシアが、胸元に差します。


「どうか。どうか幸せに。

 ユージニア様にお逢い出来たのなら、アリシアは女神になれたのだと教えてあげてください」


その顔には、微かな微笑と・・・


「私には帰る事が出来ないかもしれないから」


決死の想いが滲んでいるのでした。

決意のアリシア。

果たして反物質装置の処遇は?


その時、アリシアは決死の覚悟を決めるのです・・・


次回 地上の楽園Heaven On Eath その8

いよいよ!終焉が訪れる?それはアリシアのか、それとも銀河なのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ