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機動女神エターナル・レッド ケモ耳ニャン子は俺の女神様?  作者: さば・ノーブ
第3章 Heaven On Earth 地上の楽園
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宇宙要塞カイツール その3

光が煌く・・・


一つの輝きが瞬けば、何かが失われていくのです。


それが宇宙での戦闘。

その行為は人類が手にしてしまった過ち・・・戦争

攻撃軍である銀河連邦宇宙軍連合艦隊に衝撃が奔りました。


一方的な戦力差だと思われた闘いの、転換点ともなったのです。


小惑星要塞カイツールからの一発が、一隻の巡洋警備艦を撃沈したのが・・・




「打撃警備艦アッシュベル撃沈!」


只の一発で、全長2000メートルクラスの警備艦が沈められてしまったのです。


「要塞との距離3万宇宙キロ!我が方の射程外です」


しかも、敵の砲撃は連邦軍の攻撃距離を凌いでいるのです。

それは、こちらとしては手も足も出せないのを意味していたのでした。


砲撃が只の一発だけなら、対処も可能でしょう。


ですが。


「敵要塞に発光反応アリ!」


第2次砲撃が察知されたのです。


「各艦、回避運動に入れ!」


指揮官が慌てて命じたのは、あまりに時期を失していたのです。

要塞攻略に向けて全艦隊が密集隊形を執っていた為、中央部に位置していた艦は回避もままならず。


衝撃砲の第2撃が2隻の警備艦を捉えてしまったのです。





 キンッ!   グワアアアンッ!




瞬間移動して来た光線が、2隻を同時に貫いて撃破したのです。


「僚艦ハサゥエイ、ブルダリィ大破!」


2隻は撃沈だけは免れましたが、もはや戦闘不能とされてしまった模様です。


このまま回避行動を続けるだけでは、近寄る事すら出来ません。


「我が方の射程圏までは?」


砲撃可能距離まで前進出来るのかを問う指揮官に対し、


「後5000宇宙キロ!全速力でも20分かかります」


索敵士官の回答は、それまでにどれ程の犠牲を払わされるのかを危惧しているようでした。


「艦載突撃艇を突っ込ませますか?」


作戦参謀が、小型の艇での攻撃を進言しましたが。


「無駄だ。

 要塞に近寄れてもダメージを与えることは皆無だろう」


艦隊艇の武装如きでは相手が巨大過ぎると拒否したのです。


「それでは・・・特別攻撃班を募りますか?」


要塞に潜入して内部からの破壊を目指すと、作戦参謀が意見具申を繰り返したのですが。


「今言っただろう。

 近寄る事さえも困難を極めるのだと。

 それに潜入しても破壊出来るとは限らん。無謀過ぎる」


「では如何しますか?」


作戦参謀は次案を考えずに訊き返すのでした。

指揮官に代案がある訳もなく、悪戯に貴重な時間が過ぎてしまいます。

その間にも要塞からの砲撃を受けて、僚艦が撃破されて行くからです。


「味方ミサイル艇母艦爆発!」


艦載艇母艦までもが砲撃を喰らって撃沈され、第1第2艦隊の損耗率は30パーセントに昇りました。


「射程圏内に収めても、要塞砲の脅威からは逃れ得ない」


要塞砲が健在である限り、艦隊の被害は停めれそうにもない。

指揮官は艦隊に装備されている警備打撃艦の主砲だけでは、破壊しきれないと判断を下しました。


「要塞にはまだ他の邀撃システムが存在している虞がある」


要塞砲だけでなく、今だ不明の防御砲火の存在を懼れたのです。


「近寄らずに破壊するのは、我が方もそれなりの攻撃力で挑まねばならない」


結論が出ました。

指揮官は要塞を完全に破壊する戦法を選んだのです。

艦隊で砲撃して叩き潰す当初の作戦を破棄して。


指揮官は、長官席に座っているレミュウス補に振り返りました。


「太陽系破壊砲の使用は認めませんよ」


旗艦に備えられた巨砲の使用は、ミシェル保安官に強く停められていましたから。


「ええ、分かっておりますとも。

 ですが、この際。惑星破壊ミサイルの使用に踏み切ろうと考えます」


指揮官は、レミュウス補の危惧していた通りに許可を求めたのでした。


「本来、あのミサイルは万が一の時に備えて持って来た兵器。

 反次元爆弾を誘発させ無くする為に、最悪の事態に備えてあった。

 このふねの巨砲と同じ目的で・・・」


ドアクダーが巫女を捕えてしまった場合に備えてあったのです。

爆弾を作動させる前に、銀河系の半分を失う前に星諸共消し去るのが目的であったと。


星を消滅させても完全なる破壊が不可能だった場合。


「その時は・・・ミシェル保安官直々に太陽系破壊砲で太陽諸共消し去る。

 そうなれば、私達も生きてはいられないでしょうけどね」


その為の艦隊。

その為の連合艦隊旗艦。


「小惑星要塞をこのままにしておけば、ドアクダーはあの星から脱出し易くなる。

 逃げ出されては、何の為の惑星破壊ミサイルなのか。

 使い時を失った兵器は、意味をなさないというのにね」



レミュウス補が考えを纏めている間にも、艦隊は損害を被り続けていました。


「味方警備打撃艦撃沈・・・艦隊損耗率40パーセント」


ほぼ全滅に等しい被害を受け、艦隊の行動にも忌憚を招く状態に成って来ました。


「レミュウス保安官補、裁可を求めます」


指揮官が座ったままのレミュウスへ、再度認可を求めました。


「小惑星カイツールを破壊しなさい。

 それが本艦隊に下された命令。それ以外なにもないわ」


「ミサイルを発射して宜しいのですね?」


レミュウスが暗に許可したのを、再確認する指揮官。


「宜しい・・・」


レミュウスはミシェル保安官が惑星破壊ミサイルの発射を明確に拒絶しなかったので、自己の判断で裁可してしまったのです。


「全艦隊に発動!

 本艦隊はこれより惑星破壊ミサイルでの攻撃に移る。

 速やかに危害半径からの撤退を命じる!」


惑星破壊ミサイルでの攻撃は、星が消し飛ぶ事にもなるのです。

近寄り過ぎていれば、星の破片に因って甚大なる損害を受ける虞がありました。


「自力航行の出来ない艦は、速やかに放棄すること。

 自沈処理の必要は無いと命じる」


矢継ぎ早に命令を下す指揮官を観て、レミュウス補は一つの危惧を拭い去れずにいたのです。

ミサイルは確実に小惑星を破壊出来得るのかと。

もしも破壊出来なかった場合には、次なる手段を講じなければならないと。


「命じられた要塞の破壊を為さねばなりません。

 確実に消滅できるように執り図らねばならないのですよ」


指揮官へ向けて同じミサイル攻撃ならば、万が一の失敗も許されないと告げるのでした。


「分かっております。

 攻撃には万全を期す所存であります」


艦隊指揮官達は、要塞から邀撃されると踏んでいました。

巨大なミサイルの攻撃を、みすみす赦す筈もないと考えていたのです。


「破壊ミサイル搭載母艦には、何発用意されている?」


この戦闘が企画された折、ドアクダーの内通者が居ると考えられていました。

その為に、本来は1本だけを搭載する艦に対して、装備本数を密かに増やして来ていたのです。


「3発です!」


一発でも十分過ぎる破壊力なのに、3発も装備して来ていたのです。


「ドアクダーもまさか3発も撃ち込まれるとは考えてもいないだろう。

 邀撃システムにも、3発とは入力されてはおるまい」


指揮官は確実に破壊せよとレミュウス補から念を押されたので、


「全弾を撃ち込め。3発を以って小惑星要塞を殲滅せしむる!」


完全なる破壊を目指す事にしたのです。


「了解!ミサイル母艦に通達します」


それで何もかもが終えられる筈なのだと。

それこそが銀河連邦宇宙軍艦隊が無敵と呼ばれる所以なのだと。


でしたが、命令を許可したレミュウスは疑念を払拭できずにいたのです。


「私の異能が警告している。

 この判断が不幸を呼び込もうとしている気がしてならない」」


長官席に座上する保安官補は、モニターを見詰めて腕を組んでいるのでした。





銀河連邦軍の艦隊が撤退を開始したように見えたのです。

航行不能となった艦からは脱出艇が出て行き、撃破された残骸が漂っていたのです。


瞬間転移衝撃砲により、小惑星要塞は堅持されたかに思えたのでしたが。


要塞に配備されていた艦隊は壊滅し、追い打ちをかけることは出来なかったのです。

尤も、銀河連邦軍に追い打ちをかけるなんて無謀に過ぎますけど。


衝撃砲も使用の限度が来ていました。

これ以上の砲撃は、装置の破壊にもつながりかねない程の酷使を続けていたのです。

まぁ、言い換えればそれでやっと追い払えたってことなのですけど。


要塞のレーダー手は、艦隊が遠ざかるのを観て喜んでいたのです。

これで死なずに済んだのだと、もう見張る必要もなくなると・・・


「なんだ?!突っ込んで来る艦がいるぞ?」


レーダーには映ってはいなかったのですが、超望遠レンズに映った影に気が付いたのです。


「警報だ!連邦艦が3隻突っ込んで来るぞ!」


中型の艦影を捉えたレーダー手が、仲間に警告を発しました。

モニターを再度確認したレーダー手の眼に飛び込んで来たのは・・・




 ギュルギュルギュル・・・




頭部を回転させながら飛び来る、巨大なミサイルだったのです。


要塞全体が恐慌状態に陥ります。

巡洋艦の大きさほども有るかと思えるミサイル。

それが3発も飛んで来たからです。


「あれは?!殲滅ミサイルではないのか?」


銀河連邦軍の装備に詳しい者が絶叫をあげたのを皮切りに、


「駄目だ!データには1発だけしか入力されていないぞ!」


内通者からの報告を元にした邀撃システムが、


「何でも良いから撃ち落とせ!」


意味を成していないと恐慌状態に陥ってしまうのでした。


衝撃砲も要塞に備えられていた迎撃システムも火を噴きましたが。


「誰だって良いんだ、人手を貸してくれ!」


コンピューターで制御されていた防御火器では、ステルスミサイルを落とす事は出来ません。

照準器に捉えた画像を目で確認して撃たねば、当てることなんて不可能だったのです。


要塞に配置されていた人員では、手動で発射出来る砲台なんて多寡が知れていました。


「1本だけは邀撃可能だが、残りの2本は・・・」


惑星破壊ミサイルを邀撃できたのは、事前にコンピューターへ入力出来ていたからでした。

砲弾のようにまっしぐらに向って来るのではなく、回避しながら飛んでくるステルスミサイルの邀撃は至難の技を要します。


ミサイルを破壊出来なければ、どのみち要塞の道連れになってしまう。

要塞の中では、死に物狂いに砲撃する者達しか居なかった。

マグレ当たりでも良いと、奇跡にでも縋る気持ちだったでしょう。


最初の1発は要塞迄あと僅かで邀撃されました。





   ド ドドドド!




猛烈な破壊波が要塞迄揺れ動かしてしまう程。


「駄目だ!もう駄目だ!」


衝撃波で火器管制装置が故障してしまった持ち場で、ドアクダー要員が死を前に絶望して果てました。

残りの1発が、至近距離まで迫って来たから・・・


残りの1発?

確か2発だったのでは?


気絶寸前のドアクダー要員には、1発も2発も同じだったのです。



頭部を回転させる破壊ミサイルが、要塞カイツールにめり込んだのは僅か数秒後。


小惑星の岩塊を砕き、頭部をめり込ませたミサイル内部で信管が作動したのです。






  ビシッ!





超高温の熱波が、半径数百キロにまで押し寄せたのです。

もしもマントルが生きている星だったのならば、

内部の核にまで異常な熱波が押し寄せて、たちどころに自壊が始った事でしょう。





 バキバキバキ!




岩塊の小惑星と言えど、これ程の熱波を受けては無事に済む筈もありません。

溶岩と化した岩塊が、周りの地表を巻き込んで焼け爛れて行くのです。


宇宙空間に熱波が漏れ、急速に温度が冷えて行き・・・





 バリバリバリバリ・・・・




内部と外部の温度差によって亀裂が走り、地表が砕けて行きます。





 ズズズズ・・・・バガァアアアン!




亀裂が内部まで浸透した瞬間、自己崩壊の極点である爆発を招いてしまいました。


粉々となる要塞カイツール。

砕け散った小惑星は、岩塊を四周へと振り撒いたのでした。


それが惑星破壊ミサイルが齎した結末。


そして、人類が手に染めてしまった悪魔の瞬間。


一体これまでに何個の星が消されて来たのか。

何万、何億もの命が喪われたというのでしょうか?



戦争を辞めない人類に、神はなんと仰られるのでしょう?





「要塞の消滅を確認」


旗艦で報告を受ける指揮官が、艦長席に腰を降ろしました。


「ミサイルは全て破壊されたのだな?」


「邀撃されたのは1発です」


要塞に命中する寸前で、邀撃されたのは確認済み。


「残った1発の所在が不明です」


「それは仕方のない事だ。

 ステルス性能に依って、レーダーでは捕捉不能なのだからな」


指揮官は気安く言ってしまってから、事の重大性に気付いてしまったのです。


「なんだと?!1発を見失っただと?」


声を荒げる指揮官の後ろで、レミュウス補が瞼を閉ざしていました。


「何としても捕捉するのだ!

 あのミサイルはまだ生きているのだぞ!

 まかり間違って他の星にでも当たれば・・・・」


その時は、カイツールと同じ事に?


艦橋は上の下への大騒ぎに陥ります。

艦隊は全速で現場へと戻り始め、ミサイルの行方を血眼になって求めたのでしたが。


「私は・・・私の下した判断が間違っていたのね」


レミュウス補は、最前から感じていた不吉な予感が的中してしまったと分かりました。


「そして・・・あの星に向かってしまったのね・・・」


一番あってはならない不吉な予感。

それが現実のモノとなってしまったのだと。


「歴史は・・・変えれなかったのかしら?」


全ては、水泡に帰す。


一番恐れていた現実が、再び目の前に?




外れた惑星破壊ミサイルは高速で飛んで行くのです。


太陽系にある水の惑星へ目掛けて・・・・




要塞は無に帰しました。


ですが、戦争は次なる悲劇を呼び込もうとしています。


惑星破滅ミサイル・・・残った1本の目的地は?


ユージ達の居る地球だったのです・・・


次回 ブラックバーニア・アタック! その1

ブラック?バーニア?なんですかそれ?

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