第20話 ~王都に到着
モチベーションを上げる為に、二次小説を書いていたらそっちに意識がいってこちらを忘れていた作者です。
笑って下さい。
うひゃひゃひゃひゃ! …OVLにゃ間に合わねぇ!!
旅空の下、のんびりと神殿のある王都へ。のんびりと言っても予定通りに三日の旅、道中が意外とは言わないけど平和でね。…ゆったりとした旅になったわけさ、何の問題もなかった。この先で待つ悪魔にチョイとビビりつつ、魔物の襲撃を少しだけ期待したりしたんだけど精霊達がハンパない。…ずっと俺達の周囲を漂って守ってくれていたよう、お陰様で気持ちが上向きさ。
気持ちが上向いたのと同時に改めて思う、…精霊は偉大であると。この三日間で悪魔に対する恐怖心が初日程ってヤツ、…最初の頃より恐くないんだよね。まぁ…ビビりはするけどそれだけってーの? 何とかなるっていう気持ちの方が強くなった。これも精霊達と共にいたお陰かな? 母上も最終的にリラックスしとるし。見え隠れしていた恐怖の色が薄くなっているわけよ、…本当にありがとう。精霊達には感謝しかないわ、うん。
この旅空の三日間、心にゆとりが出来たのは大きな成果となるだろう。何せこれから婚約者であるエジュル嬢と会うわけで、辛気臭い顔で会うわけにはいかないからな。余裕を持って対面出来るというもの、…エジュル嬢の気分を害することがないように立ち振るわなければ。第一印象が大事だぞ、…俺!
旅立つ前の雰囲気は何処へ? …と思う程に和やかな俺達一行。素質調べの時とは違い、今日は父上と母上がいる。馬車の窓から外の景色を眺めていると、父上達はその途中途中で色々な説明をしてくれる。ほぉ~…、あの豪華な酒場? が王都のギルドでアレが武器屋ねぇ。
…ロゼッタ領のギルドとはえらい違いだね、…何か無駄に豪華。酒場のような見た目だけどラグジュアリー、…鼻に付くな。…冒険者っぽい人を何人か見掛けたけど、雰囲気が見下し系ってヤツ? …気に入らない。やはり王都ともなると、所属の冒険者も調子に乗った傲慢揃いが多いのかね? …貴族のように。
武器屋の他に防具屋やら道具屋やら、色々と父上達の説明を聞きながら景色を眺め続ける。…無駄に豪華な店構えが萎える、…店に入る前に気力を削がれるような感じ? 入りたくないわ。『私の店は貴族様も利用する程の格式ですよ。』と言ってきているような、…王都の店は基本的に合わないっぽい。…だからこそ素質調べん時にネムとダリアは説明してくれなかったんだな、俺の趣味じゃないと知っていたから…。う~ん…、俺のことがよく分かっている二人に花丸をあげたいぜ。
逆にお菓子屋とかは興味がある、あの時もネムとダリアはオススメだと言っていたし。ギルドとか武器屋とかの説明はなく、お菓子屋を中心に軽食系の店は色々と教えてくれたっけ。現に父上達も王都の大きな食事処は高いだけで不味いと言っている、軽食…小さな食事処やカフェ等は褒めているけど。
素質調べ時の二人からの情報、今回の父上達からの情報。合わせてみて評してみればアレだな、大きな店は殆んどがダメで小さな店は良店多し。大きな店は基本金と権力が中心、その二つが全てを決めるってーのが多いらしい。後は店に箔を付けるってのにも躍起になっている、貴族や上級冒険者が利用している格式高い店であると。…俺からしてみればくだらないの一言なんだが、それがこの世界…王都の主流ってーんだから恐れ入る。
小さな店は逆に人との繋がりを大切にしているようで、入りやすいアットホームなのが多いみたい。値段もそれほどではなく、品揃え…もしくは料理の味は良好。貴族や上級冒険者を対象に商売をしているのではなく、近所や職人…旅人相手といったところか。まぁだからこそ店数は少なく、…貴族達に難癖付けられて潰れる店も多くあるとか。
故に王都は基本的に悪趣味な店構えが多い、…街並みは素晴らしいの一言なのにね。…いや、逆にそんな店が多い中で美しいと言える事実が凄いのか? とにかく総じて考えれば王都はダメだ、絶対に俺とは合わない。将来的に考えても王都には住めない、ましてや精霊騎士団には入りたくない。…学園に通うってのは仕方がないことと割りきれる、…が王都にはなるべく近付かないようにしよう。…いやそれだとエジュル嬢と会えなくなるか? …それはダメだ、そこはノーカンでいこう!
因みに神殿関係者へのお土産にと思い、ネムとダリアがオススメと言っていたお菓子屋へと寄らせて貰った。……しかし、その店は無くなっていた。使用人達が身分を隠して情報収集をしたところ、……貴族に目を付けられて潰されたらしい。看板娘であり一人娘であるお嬢さん、三属性持ちでありながらも店を継ぐという目標を持って頑張っていた。しかし三属性ということが貴族の耳に入り、側妃として連れ拐われたとのこと。それを止めようとした父親は無礼討ちにされて亡くなり、母親も同罪として奴隷落ちにされた…と。
…腐りきっていやがるな、…この世界は。一般の…庶民には夢を持つことが許されないのか? 確かに庶民でも多属性は優遇され、無属性は差別されるような世界であると聞いている。だけどそんなことが常識とされている世界でもまともな人がいて、…そのまともな人がこのような悲劇に遭っている。本当にこの世界は歪んでいる、…今回の件もたぶんだが近所か同業者のたれ込みによるものだろう。……せめて、…せめて我らがロゼッタ領だけはそのようなことが起きぬように努めなければ。
…で聞きたくもないが聞いておいた、今回の腐れ行動をやらかした貴族の名を。グロス・リッジ子爵が長男エンバ・リッジ、王都の学園に通う一〇歳…。つーか、我らがロゼッタ領の隣にいる口だけ野郎じゃないか!! …あの腐れかよ、………奴なら納得だ。エロガキで有名だからな、…年上に興味持ちまくりのな! ……あ~っ、やだやだっ!! 年上を侍らすなんて最低じゃね? ……と考えたんだけど、…俺の婚約者も年上だし、それに関する称号も持っているじゃないか。………だが俺は奴とは違う、違う筈だ!!
…エンバの腐れ、…何つーか好き放題やってんな? あのバカのことだ、…調子に乗ってこの先もやらかすとみた。…理由までは分からんけど、何か俺のことを嫌っているんだよな。まぁ俺自身…エンバを嫌っている、隣の領だからたまに顔を合わすわけで。その時に何かとね、…嫌な奴なんだよ。故に俺んとこにもいずれ仕掛けてきそう、後先何も考えないで。……グロス子爵は気の良い人なんだけどなぁ~、…今回の件をどう思っているんだろうか? 気の良い人だけど結局は今世の貴族ってヤツ? …何か気になるぜ。
まぁとにかく覚えておこうか、隣の腐れエンバの名を………。
せっかく気分が上向きになったのにさ、…悪くなっちまったよ。しかしだ、この悪くなった気分に蓋をしなければならない。だって婚約者に会うんだぜ? 神殿は目と鼻の先だし、…というか着いた。
素質調べの時は堂々と正面から入ったのだが、今回は裏口の方から失礼する。堂々と正面から入り、神殿長を中心に歓待されたらどうか? 色々と噂が飛び交い面倒なことになる、いずれバレるにしてもね。今はまだ話題にされるわけにはいかない、俺もエジュル嬢も訳ありの人間なのだから。
父上と母上に続いて馬車を降りれば、タイミングを見計らったかのように神殿長が現れた。めっちゃ笑顔である、共にいる神官達も歓迎ムードだ。
「遠い所へよく来て下さいました、歓迎致しますよミュゼ様。クルゼイ殿とルセリナ殿もご苦労様です、よくぞ無事にミュゼ様をお連れして下さいましたね? …やんちゃなお二人がこうも立派になりまして、…いつ見ても感無量。…私はとても嬉しく思います、…ぐすん。」
神殿長は俺を歓迎し、父上と母上に対しては涙を流して感慨深げに話し掛けている。そんな神殿長に、
「毎度顔を合わせる度、何故に年下であるお前にそんなことを言われなければならない。…え? 鼻垂れのミハイル。」
「クルゼイの言う通りだわ! …そういえば、婚約交渉の時も昔のことを持ち出してきてたわね! 神殿長になったからって調子に乗っているんじゃないの? ……また埋めてあげようかしら?」
鼻垂れ? 埋める? …両親の言葉に目を丸くする俺。そんな俺にハンカチで涙を拭った神殿長が…、
「お聞きになられましたか? ミュゼ様。この二人は私が年下で直の後輩であることをいいことに、…私を振り回したあげく首から下を地面に埋めるような方々なのです。ミュゼ様もいずれは後輩が出来る身です、決してこのお二人のようにしてはいけませんよ? 義理の父となる私との約束です。」
…とか言ってきました。…俺は父上と母上の顔を見る、苦虫を噛み潰したかのような? …ってことは本当なんだ。ひょんなことから両親の昔話を聞けた、内容はアレだがちょいと嬉しい。
そんな軽いイベントをこなしてから俺達は神殿の中へ。神殿長であるミハイル様の足取りが軽い、…スキップをしているまである。…そんなにも娘であるエジュル嬢に婚約者が出来て嬉しいんだな? さっきも義理の父とか言っていたし。…どうやら彼の中では、俺とエジュル嬢が夫婦となっているみたい。
素質調べん時の物腰穏やかな出来る男ってイメージから、ちょいと面白い人って感じに変わった。
俺っちはバカさぁ~…。




