真葵は誰にも渡さない!
今回は若い駿河が主役です。
「ははは! 兄ちゃんは……そうかそうか! こりゃ心を聞かせなくする練習を早く始めた方がいいなぁ。明日は麦多が学校だから夕方からになるか?」
「……え?」
小犬丸さんが笑いながら話しかけてきたけど……
どうしたんだ?
「兄ちゃんは明日から麦多と心を隠す練習を始めろ」
明日から『むぎた』と?
今の小犬丸さんの話だと『むぎた』は学生みたいだ。
若い男……
綺麗な真葵を見れば絶対に好きになるはず!
ダメだ!
それだけは絶対にダメだっ!
変なアイマスクをしても真葵のかわいさは隠しきれないからな。
「ただいまっ! お腹空いたっ! おやつおやつっ!」
ん?
誰か家に入ってきた?
「こら麦多! おやつの前にご飯だ!」
小犬丸さんが笑いながら怒っている?
この声が『むぎた』?
絶対男じゃないだろ。
あ……
居間に入ってきたのは十歳くらいの女の子……?
「えへへ。少しだけ! グミをひとつだけだからっ!」
ショートカットで大きい二重の瞳がキラキラ輝いて……
かわいい……
俺……
バカだな。
名前だけで男だって勘違いするなんて。
「仕方ねぇなぁ。婆さんには内緒だぞ?」
「うわあぁ! おじいちゃん大好きっ!」
「ははは。じいちゃんも麦多が大好きだぞ?」
小犬丸さんは、むぎたに激甘だな。
「えへへ。あれ? お客さん? あ、もしかして今日から一緒に暮らす人?」
「そうだ。前に話しただろ? 『駿河の里』の忍びだ」
「うん! 駿河の里の忍びって本当にいたんだね」
「ははは。じいちゃんは嘘はつかねぇ。隠し事はするけどなぁ」
「ふぅん。って……え? ……そのアイマスク……ぷっ! あはは!」
むぎたが真葵のアイマスク姿を見て笑った?
まぁ確かに困り顔のアイマスクをしてるのに、やたらスタイルが良いからおかしいよな。
「うぅ……やっぱり変だよね?」
真葵が恥ずかしそうにしてるけど……
あぁ……
かわいい……
「あはは! お姉ちゃんって面白いね! 困り顔がかわいいよ!」
「かわいいのかな? 私は小田真葵だよ。はじめまして。お世話になります」
「小田? あれ? 駿河じゃないの?」
「うーん……おじいちゃんが小田なの。それでパパは駿河で……うーん……?」
「なかなか複雑なんだね。おじちゃんもノドカちゃんも複雑みたいだし」
「『おじちゃんもノドカちゃんも』? おじちゃんって?」
「田村ちゃんだよ。『お兄ちゃんって呼べ』って言うからわざと『おじちゃん』って呼んでるんだ。ほら、おじちゃんって構うと面白いでしょ?」
むぎたに下に見られたら俺もこんな風にからかわれるのか?
気をつけないと……




