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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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91:待ち伏せされよう。

 工房へ向かう途中、少し気になっていた事を話してみる事にした。


「そういえば、さっきのギャラリーの中に一人変な人が居たんだけど」


「変? ってのは、具体的にはどういう風にだ?」


「んーとね、あの時周囲を見回してみたんだけどさ。殆どの人が思いっきり引いてる中で、一人だけ恍惚としてる美人さんが居たんだよ」


「あー…… デカい体で、額に二本の小さな角が付いた奴か?」


「大きさは確かに周りよりも頭一つ分は抜け出てたね。角は…… ちょっと解んないや。目を合わせない様に、すぐに視線外したから」


「あれなー…… んー、カトリーヌって名前で、このゲームの中じゃ結構有名な奴だよ。そういえばさっき、後ろに居たなぁ……」


「えっと、それはどういう理由でかな? なんとなく想像はつくんだけどさ」


「うん、多分想像通りだと思う。アレは、かなりの変態として皆に知られてる」


 ですよね。どういう理由でかまでは知らないけど、あの光景を見てあんな表情(かお)してる時点でほぼ確定だし。



「えーっと…… 参考までに、どういう種類の……?」


「何の参考になるんだよ。まぁストレートに言うと、極度のマゾヒストだな」


「現実では味わえない痛みと快楽の為にここに来ていると堂々と言い放つ程の方ですから……」


「うわぁ」


 うわぁ。




「種族が【鬼人】なのも、体力が高ければその分一杯攻撃を受けられるって理由で選んだらしいよ」


「防御力も高いせいで、この辺の敵の攻撃じゃ殆ど痛くないのが少し不満らしいけどな」


「ランダム限定種族じゃないんだから、作り直せばいいんじゃないの?」


 ランダムで決めたんじゃなければ三日の制限は無いだろうし。


「いや、不満とは言いつつそれもそれで良いらしい。取るに足らない攻撃しか放てない敵に囲まれて、ひたすらに死ぬまで嬲られ続けるのも快感だそうな」


「それと、『そのような不満を感じる種族を選んでしまった自分』という屈辱も心地よいそうです」


 もうなんでも有りか。

 まぁ耐久力に関しては一長一短だから、偏ればどっちかの方向で不満は残るだろうけどね。

 逆に私なんて、急所に物理攻撃が当たれば確実に即死するんだし。



「ん? でも、何でそんな人があそこに?」


「そういえばそうだな。いつも外で何かに殴られてるイメージしか無いし、空腹なんて感じる前に死ぬから料理に用はない筈なんだけど」


「そうだねぇ。前に見た時はどうなってたっけ?」


「確か全身を大量のスライムに包まれて、じわじわと溶かされていましたね」


「うーん…… なんていうか…… 出来るだけ関わらない方が良いっぽいね」


「それさえ無ければ、かなり良い人らしいんだけどな」


 その「それ」が大問題なんでしょうに。



「っていうかな」


「ん?」


「そういう表情で見てたって事は、さ」


「聞きたくないんだけど」


「多分目ぇ付けられたぞ?」


「聞きたくなーいよーう……」


「というか今までの情報から既に目を付けられていて、先程は自分の目で確認しにいらっしゃったのかもしれませんね」


「ぬわー……」



 勘弁してよ…… ただでさえ今はシルクとの関係修復で気が重いんだからさぁ。

 完全に自業自得なんだけどさ。調子に乗らせちゃった所からやり過ぎた所まで全部。

 正直な所完全に元通りになるとは思えないけど、せめて私が近づいただけで怯えない位には立ち直ってほしいよ。


「むぅ、困ったなぁ。さっきみたいにしてくれとか言って突撃して来たらどうしよう?」


「うーん、有り得ないとは言い切れないねぇ。なんせ雪ちゃんは可愛いからね!」


「いや、変な所でブッ込んでこなくていいから。むしろそれ言わなくていいから。そもそも今回のは可愛いとかそういうのじゃないでしょ」



「いえ、それも有りましてよ? このような無駄に大きな体だというのに、小さく可愛らしい妖精さんに為すすべなく蹂躙されるというのも、とぉっても素敵な事だと思いますわ……」


「うわっ、出たぁっ!?」


 ビックリしたー……

 建物の間から大きな体を優雅に滑らせ、私たちの前に現れる変態。

 よくあの隙間に入ってたな…… 体の幅ぎりぎりじゃないか。


「はい、出ましたわ。ごきげんよう、妖精さんと皆様方。(わたくし)、カトリーヌと申します」


「えっ、あっ、どうも。私は白雪って言います…… あ、言っても聞こえないかな」


「いいえ、ばっちり聞こえますわ。私への罵声を聞き漏らす事の無い様、【聴覚強化】は抜かりなく取得していますので問題なく」


 何その理由。

 あぁ、それで唐突に現れたのにちゃんと自分の話だって解ってたのか。



「ええっと…… それで、カトリーヌさんは何故ここに? というかなんでそんな狭い所に入っていたんですか?」


「はい、まずは何故ここにという質問からお答えいたしますわ。答えは簡単。白雪さんとお話する為に、先回りして待ち構えて居たのです」


「何故私たちの場所が?」


「先程工房へ向かうと仰っていたのが耳に届きましたので。盗み聞きなどよろしくはありませんが、やむを得ない場合もありますので」


 これはやむを得ない場合じゃないと思うよ?



「それと、何故狭い所に入っていたのかという質問ですが」


「あぁ、やっぱり何となく想像がつくので言わなくてもいいです」


「そうですか……」


 なんだ、言いたかったのか? でもどうせろくな理由じゃないし、聞いただけ損をする気がする。




「しかしそれなら、さっき普通に広場で話しかければ良かったんじゃないのか?」


「いえ、出ていくタイミングを逃しまして」


 あ、それは結構普通の理由だった。まぁそれより話を進めてしまおうか。


「それで、肝心のご用件は何なんですか?」


 多分これもろくでもない事なんだろうなぁ……


「先程の責めに、いたく感銘を受けまして」


 やっぱりだよ!



「えっと、あれを貴女にやることは……」


「えぇ、えぇ。解っております。皆まで仰らなくても結構ですわ。その方のサイズの箱でも大きく消耗していられたようですので、私のこの図体の収まるような箱を作る事などとても不可能でしょう」


「その通りですね。ですが、それでは一体?」


「私に【妖精】についてご教授願いたく思いまして」


 ん?


「ええと、どう繋がっているんでしょうか?」


「この巨体が収める箱が作れないのならば、私が小さくなれば良いと思ったのですわ」


「いや、収まってもやりたくはないんですけど……」


 ダメだこの人、やっぱり碌な事にならない。




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