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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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77:照明になろう。

「さて、そこの新しい世界の扉を開こうとしてる奴は置いとくとしてだ。改めて解散って事でいいかな?」


 引き気味のまま問いかけてきたので頷いておく。

 扉を用意した本人が言うのもなんだけど、多分行かない方が良い世界だと思うんだ。もう割と手遅れな感じだけどさ。


「そうか。おーい皆、それじゃ今日はここまで。解散だ」


 口々に「おつかれーっす」とか「また明日ねー」と言いつつ、こちらに手を振って去っていく。

 未だに数人怯え気味だったのが気になるけど、話しかけに行ったら確実に逆効果だしな……


 ていうか【聴覚強化】持ってないだろうから、誰かに手伝って貰わないと話せないんだけどさ。

 溶かして食べたのに怯えてるんだろうから、耳元まで近寄らせてはくれないだろうしね。

 迂闊に近づいたりしたら、反射的にぺちっと叩かれて中身を撒き散らすのがオチだろう。




「それじゃ俺らも行くかな」


「頑張って稼ぎ直さないとね。それじゃまたね、妖精さん」


「ほれ、お前もボケッとしてないで行くぞ」


「んあー。もう私妖精さんちの家畜としてふぎゃっ」


 おお、脳天におじさんの拳骨が入った。舌噛んでないか?

 とりあえずナイスだ。来られても色々と困るわ。


「目を覚ませバカタレが。発言が危なすぎるわ」


「いったいなぁもー。流石に冗談だよー」


「さっきの様子見てたら冗談に聞こえねーんだよ。ってかさ、行くって言ったけど別にこのままここで訓練すりゃ良いんだよな」


「私もうMP無いよー?」


「MP使わない訓練だって色々あるだろ?」


「私は無駄に満タンだけどねー。HPはちょっと減ってる気もするけど」


「馬鹿な事を言うからだ」




 うん、兎さんたちはこのまましばらく訓練するみたいだな。魔人さんは休みたそうだけど。


「それじゃ私らも帰るかー。しかし結構暗くなったな」


「そうですね。場内は照明が点いているので問題ありませんが、表は大通りでも最低限の明るさなんですよね…… 誰か明かりになりそうな物を持っていますか?」


「あー、用意してないなぁ。まだ夜の探索する予定も無かったし」


「私もー。まぁ一緒に行動してるんだし当たり前だけどね」


「あ、それじゃ光ろうか?」


「は?」


 アヤメさんに凄い簡潔に聞き返された。



「いや、だから私が光ろうか? って」


「それは聞こえてるけど、どういう意味だ? 【光魔法】を使うって事か?」


「え? いや言葉通りにこう、ぺかーっと。【光魔法】は持ってるけど、許可取ってないから使えないし」


 両手に魔力を巡らせて、手首から先を光らせてみせる。


「おー、雪ちゃんの手が光ってる。それ【妖精魔法】?」


「いや、【魔力操作】で手の平に集めてるだけ。密度を高めると光るっぽいよ」


「へぇ。あー、確かにあの球も光ってたもんね。でも多分、普通の魔力の量じゃ無理なんだろうなぁ。それより雪ちゃん、蛍みたいで綺麗だねー」


 ほめられた。ん、なんかアヤメさんが考え始めたけど……



「蛍か…… なぁ、尻も光らせ」


「やらないよ!?」


 いきなり何を言うんだよこの人は。


「……られるのか? って聞こうと思っただけで、やれとは言わないよ。流石にね」


 いや、なんで聞くんだよそんな事を。すごくどうでもいいだろ。

 私も試したことなんてないから判らないけど、多分出来るだろうな。絶対やらないけど。


「これでしたら、夜道を歩くには十分な明るさですね。助かります」


「お安い御用ですよー。光るくらいだったらMPもあまり消費しませんし、【魔力操作】の訓練にもなりますから」



「良い事尽くめだねぇ。ただすっごい目立ってるけど」


「いや、もう目立つのは今更だし。あれだけマスコット扱いされてたら慣れないとやってられないよ」


「まぁ確かに慣れてないと、あれだけの人の中で抱っこされてすやすや眠ったりできないよね」


 うぐっ。


「可愛らしかったですねぇ。皆和んでいましたよ」


 むぐぅ。やめろ、掘り返さないでくれ。


「うぅ、晩御飯とぷにぷにベッドのせいだもん……」


「ほー、シルクちゃんに責任転嫁か。酷い親だなー」


「いや親ではないよ!?」


 まぁ確かに召喚者だし、保護者的な物ではあるかもしれないけどさ。



「あぁ、確かに向こうの方が母親っぽい感じにはなってたな」


「いやそういう事ではなくてね?」


「寝てる時、シルクちゃんに優しく頭なでなでされてたもんね。嬉しそうな顔で『……んふー』って言ってたよ、雪ちゃん」


「嘘ぉ!?」


「いえ、事実ですよ。ばっちり一部始終を見させて頂きました」


 うん、もうやだ。 帰ってお布団に入りたい。潜って団子になってしまいたい。

 いくらなんでも恥ずかしすぎるよー……



「んもー、もういいから行くよー! 置いてっちゃうよー!」


「待ってよー。あんまり急ぐと危ないよー?」


「そういえば白雪、もしかして今日は一度も死んでないのか?」


「あー、そうか。確かに今日はまだ死んでないね。死なない日っていうのは初めてだなぁ」


「そういう事を言うと大抵良くない事が起こるのでは?」


「大丈夫大丈夫。流石に今日はもう何もないでっと危ない、言ってる傍から看板に突っ込む所だった」


 危うく速攻でフラグ回収するところだったよ。流石にこれで死んでたらお約束すぎる。



「そこはやらかしておくべき所だろ!?」


「死ぬのが私だからって軽く言わないでよぅ。即死出来なかったらものすごく痛いんだからね?」


 まぁ大抵即死なんだけどさ。即死じゃなかったのって、ライサさんに翅をもがれた時くらいか?


「あー、うん、済まん。悪かった。流石に今のは良くないよな」


「うん、解ってくれたならいいよ。実際ぽんぽん死に過ぎて、羽毛よりも軽い命にしか見えないしね」


 本当、油断したら一瞬で死に戻りだからなぁ。特に今はお姉ちゃん達の足元まで照らすために普段より低めに飛んでるから、いつもより気を付けないとね。


「それに、今私が死んだら明かりが無くなっちゃうよ?」


「いや、それはまぁ確かに少し困るけどさ」




 さて、花園の中央部まで帰ってきた訳ですが一つ問題が。


「えーと、なんでこんなに人が?」


「うん、雪ちゃんが光ってたからじゃないかな?」


「誘導してる訳じゃないんだからさ……」


 ていうか殆どさっきの人達だな。あとは穴を埋めてた人達と初めて見る人が数人。

 怯えてた人までオドオドしつつも来てるし。怖いならわざわざ付いてこなくても……

 初めての人は多分、なんかゾロゾロ歩いてるから何かあるのかと思って合流したんだろうけど、別にこれから何かやる訳じゃないぞ?

 ともかく、全員引き連れて入っていくわけにも行かないし帰ってもらおう。

 いや別にここでログアウトして貰っても構いはしないけどね。



「お姉ちゃん、周りの皆に伝言をお願いしていいかな」


「うん、いいよ。ここは入れないよって事かな?」


「そう。この門から先は私有地だからって」


「それでしたら私が。皆様、この柵より内側は白雪様の私有地の為、許可なく立ち入る事はご遠慮願います。なお侵入者は私が排除させて頂きますので、ご留意くださいますようお願い申し上げます」


 ってモニカさん、どこから出て来たんだよ。というか何で帰ってきたのが解ったんだ。

 しかし警備も兼ねてるのか。突っ込み所が更に増えたよ。

 あと無駄にって言うか、変な丁寧さの警告も気になる。無理してない?


 っていうか自分で伝言頼んでおいてなんだけど、私が土地持ちって情報を確定しちゃったよ。

 中から出てきてるのは見られてるし、モニカさんを引き連れて蜜を集めてたから噂レベルではバレてただろうけどね。

 まぁ今更仕方ないな。脅したり力づくで奪えるような代物でもないし、気楽に行けばいいや。


 腕を組んで仁王立ちしてるモニカさんの横を通って中に入っていこう。

 後ろから「なんだ、帰ってただけかー」みたいな会話が聞こえてくる。

 うん、だから皆も散った散った。待ってても何も起きないよ?





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