52:光を放とう。
とりあえず妖精の魔力は体に入れたら猛毒だって事はよく解った。
あととっても気持ち良いらしい。死ぬけど。
吹きかけるだけなら活性化するし、用法・用量を守って正しくお使い下さいって感じだな。
しかしスキル習得に協力どころか、実験動物みたいな扱いになっちゃってる気がする。
デスペナのお詫びの筈なのに、逆にデスペナ増やしてるし。
「ゆっくり入れてもダメでしたね……」
「うん、せっかく手伝ってもらったのにごめんね?」
「ペナルティも上乗せしちゃって、本当に申し訳ないです」
「いやいやいや! 流し込んでってお願いしたのは私だし、妖精さんは何も悪くないよ!」
「そう言ってくれると助かりますけど」
「むしろ気持ちよくしてくれてありがとうだよ! もう一回やってもらいたいくらい゛っ」
あ、拳骨が落ちた。あれは痛いぞ。
「調子に乗るなこのバカ! 二回目をやってもらっただけでも貰い過ぎな位だっつーの。本当にありがとう、妖精さん。あとはこっちで頑張るよ」
「あ、いえ。大した手間じゃありませんし、大丈夫ですよ」
実際二回目なんて気を付けてゆっくり流してたから、百点もMP使ってないし。
「ったぁー…… うぅ、ごめんなさい」
かなり痛そうだし、結果も出せなかったから最後に癒してあげようかな。
いたいのいたいのとんでけー、ってね。
「ふわぁ、痛くなくなったぁ! ありがとー!」
ほんと落差激しいなこの人。
「どういたしまして。それじゃ、練習頑張ってくださいね」
「うん! あっちの隅っこでやってるから、何か手伝う事があったらいつでも言ってね!」
「こっちが邪魔したせいで、長々と時間取らせちゃってごめんよ」
「いえ、指が混ざってなくても驚いただけで暴発してた可能性もありますし。そもそも怒られたのも自分のせいですから」
裏庭でMP消費する為ならともかく、中庭で使ってちゃ怒られても仕方ない。
ここの花壇にはもう雑草も殆ど無いから、MPがあふれる事は無い筈だからね。
「そう言ってくれると気が楽だよ。それじゃ、俺はあいつが暴走しない様に見張ってるから」
「頑張ってください」
あんな唐突に動かれると止めるのは至難の業だと思うけど。
そういえば名前とか聞いてないな。私の方もなんか普通に「妖精さん」って呼ばれてて名乗り損ねた。それ名前じゃないぞ?
まぁいいか。また関わる事があれば名乗りあう機会もあるでしょ。
関わらなかったら必要ないし。
さて、何だっけ? そうだ、【光魔法】だ。
魔力で光を放てばなんとかなるんじゃない? とか考えてたんだっけ。
てか今更だけど私、放出しなくても体内で練れば光れるじゃないか。
そういえば、スキル枠は空けておかなくても大丈夫なのかな?
確かもう十九か二十くらい覚えてる筈だし、念のため【弓術】とかを外してからにしようか。
……いや、なんで【光魔法】あるの? あれか? さっきの暴発の時か?
それくらいしか無いよなぁ。あの後って魔人さん砕いたり溶かしたりしてただけだし……
まぁいいや。気にするだけ無駄だって事はもう解ってるし。
とりあえず【弓術】と【鑑定】を外しておこう。
【鑑定】、せっかく初期で取ったのに全然使ってなかったな。
外すときに何か妙な物が見えた気がするけど気のせいだろう。気のせい。
いやうん、仕方ない。確認しておくか……
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【血肉魔法】 Lv:1 VIT:Lv*2 INT:Lv*3
【吸血】
接触した対象から血液を吸い取り使用者のHPを回復する。
手や足などで使用することもできるが、口からの吸収に比べ回復効率が格段に落ちる。
使用者のINTと対象のMNDを基準に成否と効果量を判定する。
なお、同意を得た対象に使用する場合には必ず成功する。
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うあぁ、これ確実にアレのせいじゃん。
【吸血】は【吸精】のHP版って感じか。でも私、HPが減るのって【施肥】くらいなんだよな。
それ以外でHPが減ったのって翅もがれた時くらいか?
てか血肉って言うけど最初は血の魔法しかないのね。
まぁ一応魔法だしセットしておくかぁ……
スキル枠が埋まってても取得できるって確認出来ちゃったし。
あ、でも自動でセットされたら取得出来た時に判り易いんだよな。
急に操作が楽になったりするし。何か取得する時は空けておくようにしよう。
しかし既に覚えてたとなると、どうしたものかな。
やるつもりだったことがいつの間にか終わってると、次に何やるか迷う。
いつもと違って実際に動かして覚えた訳じゃないし、レーザーポインタみたいに出来るように練習するか。
さっき崩した物より大きな、自分が入れる程度のかまくらを作って中に入る。
スキルは取れてると言っても動かし方も判らないし、人差し指の先に魔力を集めて光らせて操ってみよう。
むーん。よし、とりあえず光った。
あっ、【光魔法】使えば良かったんじゃ…… まぁいいや。今更だし。
で、この指先の光をー、周囲に放たずに指の延長線上に向けてー、ぺかー。
うん、出来た。相変わらず無駄に適性が高い。
よし。どんどん指先に魔力を流して、光量を増してみよう。
おー、懐中電灯みたいな事になってる。また一つ便利になってしまったぞ。
もっと収束させてみようか。きゅきゅっと。
……あっ、まずい。焦点になってる所の壁が赤くなり始めた。
にゃんこのおもちゃにそんな破壊力は要らないんだよ!
うん、こんなものかな。
色も意識してみたら変えられたので青色にして、地面に置いた矢に当て続けても熱くならない程度の威力に調整した。
よし、これで暇なときに珠ちゃんと遊べるぞー。今まで一方的にモフモフするだけだったからな。
しかしポチにはどうしようかなぁ。取って来ーいとかは私じゃ無理だし、一緒におさんぽしかないかな?




