486:妥協しよう。
疲れそうだし流石にあんなには要らないなぁと負け惜しみじみた事を思いつつ、撫でまわしたせいで乱れたぴーちゃんの髪を軽く整えておく。
そういえばぴーちゃんは揉まれてないんだな。
変に手出ししたら怒りそうだから自重したんだろうか?
まぁ私に手を出したから、結局怒られたんだけど。
「んじゃ、改めてお暇しますかね」
「あ、そうそう白雪ちゃん。調べた結果はジョージに伝えれば良いのかしら?」
「あ、そうでした。はい、主に知りたがってるのが役場の職員さんなんで、そっちに言ってもらえれば大丈夫です」
その辺の事言ってなかったよ。
知りたがってるのも役場の人だし、情報をまとめるのも役場の人だから、私が聞いて伝えるよりそっちの方が早いだろう。
結果が出た後に役場に行けば、何も言わなくてもライサさんが教えてくれるだろうし。
「はぁい。それじゃ、また来てねー」
「はい。ほらカトリーヌさん、立って立って」
はふーって顔して揉まれてるカトリーヌさんの二の腕をぷにっと摘まんでみる。
……おおう、そんなビクッとしなくても。
別に太いとか余ってるとかそういうんじゃないから。
「ぴゃっ!」
「あん。おねーさん悲しいわ」
すすすっと正面に近寄ってきて頭を撫でようとしたジェイさんの触手を、ぴーちゃんが羽ですぱーんと叩き落してる。
「まぁ色々やってますからねぇ。さっきお茶飲んだ直後なら、ちょっとくらい大丈夫だったんじゃないですか?」
ジェイさんは嫌っててもお茶は気に入ったらしく、ちょっと和んでたし。
「ああ、その後に白雪ちゃんにちょっかい出したから、元に戻っちゃったのね」
「痛くされたわけじゃないから別に良いんですけど、難しいですねぇ」
「……ぴゃっ」
ジェイさんの言葉に苦笑しつつ答えてたら、なんかぴーちゃんがむすっとした顔のまま少し頭を下げて前に出してきた。
「あら? 触って良いのかしら?」
「多分。んー、なんだろう」
再度怒らせない様に、そっと頭を撫でるジェイさん。
うん、不満げではあるけど大人しく撫でられてるな。
「白雪さんが良いと言っておられる事を理由に強硬な態度を取る事が、かえって白雪さんの迷惑になると判断されたのでは?」
「ぴ」
横からのカトリーヌさんの言葉に、一声鳴いて小さく頷くぴーちゃん。
「あー、なるほど。そこまで気にしなくても良いのに」
ダメだと思ったらちゃんと注意するし。
それが無いなら別に好きにしてて良いのだ。
「うふふ。怒る理由もそれを我慢する理由もご主人様のため。本当に良い子ねぇ」
「ぴゃっ!」
調子に乗るな、とばかりに頭を振って触手を振り払うぴーちゃん。
そりゃまぁ四本も五本も頭に引っ付いてきたらそうなるよ。




