473:並んで練習しよう。
棚からお手本と私達用に作られた道具を借りてきて、机のすみっこに広げて作業を始める。
練習用の薄くて小さい銅板、なんか来る度にどんどん数が増えてる気がする。
こんなの他に使い道無いだろうし、なんか申し訳ないなぁ。
せめて無駄にしない様に、真面目に頑張らないとだ。
いや、別にそうじゃなくても真面目にやるけどさ。
カトリーヌさんと二人並んで、お手本を見ながらコンコン叩いていく。
うーん、相変わらず難しい。
「大体合ってる」程度にはなるんだけど、ぱっと見で解るくらいの違和感が残るんだよなぁ。
……ってカトリーヌさん上手いな。
一つ目から既に私のより完成度が高いじゃないか。
多分スキルは取ってないと思うし、現実側での経験者なのかな?
まぁ隣の人が上手いからって私がどうなるわけでも無し、練習を続けるか。
無くすほどの自信もまだ無いし。
いや、なんかコツとか盗めるかもしれないし、意識するだけはしておこう。
気になり過ぎて自分の手が止まっちゃ意味無いし、視界の端に収めておく程度で。
む、そう思った瞬間に作業を中断してお礼を言いに行ってしまった。
まぁ良いか。
一枚目をひとまず完成させ、ふとぴーちゃんはどうしてるかなと思って作業場を見回してみる。
あ、なんか優しそうなお姉さんの所で可愛がられてるっぽい。
作業の邪魔にならない様にって言ったのに仕方ないなぁ。
まぁちょっと見た感じ、作業の合間にちらっと見て撫でてるだけっぽいし、そこまで邪魔をしてるわけでも無いのかな。
お姉さんに貸してもらったのか、綺麗な石を持って嬉しそうに見ながら座ってるだけだし。
さて、そっちばっかり見てても仕方ないので、こっちも次のを作るとしよう。
作業速度もカトリーヌさんに負けてるし。
別に勝負じゃないから良いんだけど。
更に二枚の銅板を叩き終えて、再度ぴーちゃんの方を見てみる。
……なんか決めポーズ取ってお姉さんの正面に立ってるんだけど。
あぁ、モデルやってって頼まれたのかな……?
お姉さんの手元に、立ってるぴーちゃんと大体同じ形に削られた石柱が有るし。
おぉ、凄い勢いで削られてどんどん形が近付いて行く。
スキル持ちはやっぱり凄いなぁ。
いや、単純に経験も練習量も私とは全然違うんだろうけどさ。
あのペースなら、私たちが帰るまでには大体出来上がってるだろうな。




