471:心配しよう。
珠ちゃんとシルクがそろってこちらを向いて、いってきますと頭を下げる。
って太郎も一緒に行くのか。
珠ちゃんの背中の上でおてて振ってるし。
まぁ連れて移動できるのが珠ちゃんとぴーちゃんくらいだし、そうなるか。
シルクにも出来ない事は無いけど、ずっと抱っこしてるのは辛いだろうな。
「それじゃ、気を付けてね」
私の言葉に頷いて、まかせてくださいと胸を叩くシルク。
やっぱりそこにお金が入ってる様には見えないな。
カチャっとかいわなかったし。
「ちょっとくらい寄り道するのは良いけど、知らない人について行っちゃダメだよ?」
こくこくと笑顔で頷くシルク。
「変な人に追っかけられたら、お金や荷物なんて置いて逃げて良いからね?」
むぅ、頷くシルクの笑顔が少し苦笑気味になった。
こっちは心配してるだけだっていうのに、そんな「まったくごしゅじんさまったら」って顔しないの。
「白雪さん、そんなに心配せずとも大丈夫ですよ」
むぅ。
カトリーヌさんにまで笑われてしまった。
「みなさん、私達よりも物理的にはとってもお強いのですから」
「まぁそれはそうだけどさ。ほら、ちっちゃい子におつかい頼んでる様な気分になるじゃない」
「解らなくも無いですが、シルク様が困っていらっしゃいますよ」
「あー、いや、信用してないわけじゃないんだけどね」
サイズは私たちの倍くらいあっても、見た目が子供だからなぁ。
一緒について行くのも仔猫とハムスターだし。
「シルク様、追いかけて行かない様に白雪さんを捕らえておきますので、今の内に出発してください」
ちょっと待って、それくすぐったい。
人の翅を両脇に抱え込むんじゃないよ。
あ、シルクが良いのかなぁって苦笑いしてお辞儀してる。
こらー、ご主人様のピンチだぞー。
「んもー、そんな事しないってば。うん、いってらっしゃい」
「お気をつけて」
カトリーヌさんに捕まったままの私に手を振って、広場へ向けて移動するシルク達。
……今更だけど、太郎は乗ってるだけなんだしポチあたりに交代してもらえば荷物持ちが楽になったんじゃない?
でもなんかそれはそれで、大丈夫って言った珠ちゃんの顔を潰す感じになりそうだし、別に良いか。
「ほら、もう行ったから放してよー」
「白雪さんは少々過保護なのでは?」
「だってさー、小っちゃくてかわいい女の子と、にゃんことハムちゃんだよ? 手を出したくなる人が居てもおかしくなくない?」
「お可愛らしいのは確かですが、親バカな発言に聞こえますよ」
ふふっと笑われてしまった。
いやうん、確かにそうだけどさ。
腕を緩めてくれたので、前に移動してスルッと翅を引き抜く。
うおー、腕に擦れて地味にくすぐったい。
……なんか振り返ったら、カトリーヌさんの両肩にぴーちゃんの鉤爪が食い込んでた。
刺さってはいないみたいだけど、割と痛そうだな。
まぁ嬉しそうだし、そこは良いとして。
なんだろう、私に対しての攻撃みたいな行動をとってたからなのかな?
それ以上やると容赦しないぞ、みたいな。
あ、あっちも放した。
ちょっと残念そうなカトリーヌさんは放っておいて、私たちも移動し始めようか。
「んー、やっぱり心配だなぁ。ちょっと遠くから様子を見ない?」
「私たちの魔力ではまず気付かれるでしょうし、信用されていないとシルク様が傷付かれるやもしれませんので、それはやめておきましょう」
「ぴゃ……」
カトリーヌさんに普通に諭されてしまった。
ぴーちゃんにまでダメだよーって困った顔されてるし。
……まぁ確かに、シルクに気付かれない様に覗いたりなんて、私には出来ないけどさ。




