470:お金を預けよう。
しかし素材かぁ。
今は…… 木材はともかく、他は何が足りないんだったかな?
よく考えたら、在庫の管理とか全くしてないや。
ああ、そこもシルクのお仕事なのかな。
多分聞いたら教えて…… って喋れないな。
まぁ把握してなくてもあんまり困ってないし、別に良いか。
「それじゃ、工房に行く前にお買い物していこうか」
……あれ?
なんか首振られた。
「ん? 欲しい物が有るんでしょ?」
私の問いかけには頷くシルク。
じゃあなんで否定したんだろう。
「白雪さんが練習に充てる時間を減らさずに済むように、『自分で買って帰るのでお金をお願いします』という事なのでは?」
あ、頷いた。
んー、別に良いんだけどなぁ。
きっちり時間が決まってるわけじゃないんだから、開始が遅くなってもその分終わるのも遅らせれば良いだけなんだし。
でも一応私のために言ってくれてるんだろうし、大人しく聞いておくか。
「それじゃ…… ってシルク、買うのは良いんだけど、どうやって持って帰るの?」
今はエリちゃん居ないから、あんまり大きな物は買えないんじゃないかな。
というか敷地外のシルクの力だと、銅貨もあんまり多いと厳しいと思うんだけど。
いや、荷物は私が一緒でも同じだったな。
我ながらどうするつもりだったのか。
まぁお店でお願いすれば家まで運んでくれそうではあるし、その辺の人に頼んでも【妖精】相手ならすぐに請け負ってくれそうだけどさ。
あんまりそういうのに甘えるのも良くないよね。
私なんて【妖精】じゃなきゃ誰も寄り付かない生き物なんだし、あんまり調子に乗るとしっぺ返しが怖いからな。
ていうかむしろゲーム内で何か起きるんじゃなくて、そのノリを引きずって現実でなんかやらかしそうで怖い。
ん?
珠ちゃんがにゃんって短く鳴いてきた。
「ええと…… このタイミングという事は、『私が持つから心配しないで』でしょうか?」
カトリーヌさんの言葉に同意するように、もう一度鳴く珠ちゃん。
あー、珠ちゃんならある程度は大丈夫かな?
見かけによらず力持ちみたいだし。
「うーん、それじゃお願いしようかな。銀貨だとおつりが重そうだし、十枚もあれば足りるかな?」
ボックスから銅貨を取り出しながらシルクに確認すると、首を振りながら片手を広げてきた。
十枚も要らない、五枚で良いよって事か。
まぁうちで使う素材なんて余り物の端材を譲ってもらえば事足りるし、変に良い物買わなきゃ安く済むもんね。
ていうかさっきも似た様なこと考えたけど、いくら私より力持ちとはいえ十枚もあれば重いか。
シルクの差し出す両手によいしょと銅貨を一枚置くと、シルクは襟元からもそもそと自分の服の中に銅貨をしまい込んだ。
それ、内側にポケットでもついてんの?
普段も袖とかから布を出したりしてるし、何か固定する仕掛けとかがあるのかね。
……なんか五枚全部入れ終わっても、外見上の変化が無いんだけど。
いくらシルクが私より大分大きいとはいっても、流石に五枚も入れたら判るはずなのに。
シルクの服の中、異次元にでも繋がってんの?
あ、種族の能力で【アイテムボックス】を持ってるんだろうか。
それなら納得…… でもないな。
有るなら珠ちゃんに運んでもらわなくて良いんだし。
私からお金を受け取り終わって、すーっと珠ちゃんの前まで下りていくシルク。
あ、「おねがいします」って感じでお辞儀した。
珠ちゃんの方が私の召喚獣としては先輩だし、一応立場が上なのかな?
……その背中にシルクの同期が我が物顔で丸まってるけど、その辺は気にしても仕方ないんだろう。
ん、なんかシルクの動作がいつもより少しだけ重い様な?
もしかして収納は出来るけど、重さが消えずに体にその分の負荷がかかる能力なのかな?
ボックスの劣化版みたいな感じで。
ま、なんでも良いか。
解ったから何かが起きるわけでも無いし。
とりあえずシルク凄いなーってくらいの認識で問題無いでしょ。うん。




