466:ルールは守ろう。
ふう。
結構たくさん食べたし、もう良いかな。
「シルク、もう…… ありがと」
もう良いよって言おうとしたら既に目の前にハンカチを持った手が来ていたので、大人しく口を閉じて拭われておく。
相変わらず話が早くて助かるよ。
「ぴーちゃん様も、もうよろしいので?」
「ぴぅ」
シルクに食べさせてもらったりカトリーヌさんに食べさせてもらったりしてたぴーちゃんが、わたしも拭いてーって感じで顔を出してきた。
自分じゃ足を使うか直接お皿に顔を持っていくかしないと食べられないし、タオルとかも普通には持てないもんなぁ。
……待てよ?
今更ながら、この子ってどうやって自分で服を着てるんだ?
上は裸っていうかもふもふに覆われてるから着てないけど、下は私と同じようなのをちゃんと付けてるんだよね。
私が思ってる以上に器用に足が使えたとしても、位置的に無理そうだし。
本来の住処にはシルクみたいなお世話してくれる存在が居るんだろうか?
もしくは単純に複数できゃいきゃいと着せっこしてるのか。
……まぁ別に良いか。
「さてと。……って何してんですか」
「あ、食べ終わった?」
それじゃお仕事しますかーと思って横を見たら、兎さんは皆と一緒になって珠ちゃんを可愛がってた。
まぁ良いんだけどさ。うちの子可愛いし。
「はいはーい。妖精さん達の蜜の直売コーナー、始まるよー。欲しい人はお金を用意して、他の人の邪魔にならない様に並んでねー」
「並んでる間に何が欲しいか決めといておくれよ。列が止まっちまうからね」
おばちゃんが手を叩いて兎さんの言葉に続ける。
うん、一杯並んだままだと他のお店にも迷惑だし、サクサク進めないとね。
今日もネタなのか本当に美味しいのかよく判らない野菜を差し出されつつも、気にせずにカトリーヌさんから受け取った蜜をぺとぺとかけていく。
覚えてたら現実で試してみようかな……?
いや、やるにしてもこっちでだな。
この人達が普通に食べてるとは言っても、食べ物が無駄になる可能性が無くは無いんだし。
「はいそこー、蜜を塗るのはこのお店で買った物だけだよー」
鞄からフランスパンを取り出した人に兎さんの警告が飛ぶ。
ていうか丸一本出されてもこっちは一滴しか無いんだから、せめて切って持って来なさいよ。
「はいはい、大人しくしまったしまった。主催者のルールには従わないと、追い出されちゃうよ?」
「ま、この市場ではオススメ出来ない行為だねぇ」
えーと言う参加者をたしなめる兎さんに、おばちゃんが補足する。
……いや周りのおじさん達、そんな【妖精】に逆らうのかみたいな顔しないで良いですから。
どうせこの人達も実はめっちゃ強いんだろうから、普通に怖いよ。




