461:また開けてもらおう。
「お、ちょっと出来てる」
「本当ですわね。流石はシルク様、仕事がお早いですわ」
庭に戻って家を見てみると、何やら二階の玄関の前から柱に向かって、外壁沿いに一メートルくらいの幅の通路が造り付けられていた。
手すり付きの柵も付けてあるんだし幅は半分くらいで良いんじゃないかと思ったけど、それじゃすれ違う時にちょっと狭いか。
すれ違う様な状況が有るかは置いておくけど。
玄関の前だけ少し広くなってるのは、私達みたいに飛んで来る相手の着陸用スペースかな?
他の所と同じでも降りられなくは無いけど、やっぱ広い方が良いもんね。
でも肝心の梯子はまだ無いんだな。
まぁあんまり材料も無かったはずだし、多分足りなかったから他の事を優先してるんだろう。
玄関の前に飛んでいくと、それに合わせてシルクが玄関ホールまで出て来るのが魔力で感じ取れた。
あ、声かけようかと思ったらそのまま開けてくれたな。
「ただいま。これから市場に果物食べに行くけど、シルクも一緒に行く?」
一応確認してみると笑顔で頷いて、前に出てきて扉を閉めた。
自分で誘っておいてなんだけど、中のお仕事は放っといて大丈夫なのかな?
まぁ大丈夫じゃなきゃ放ってはおかないか。
めーちゃんとエリちゃんは居ないし、ソニアちゃんは判らないけど、私達だけじゃお土産持って帰らんないから今は良いかな。
家の前から飛び立ち、ぱたぱた飛んで庭を出る。
おや、門の所に兎さんが立ってるな。
どうしたんだろうと思ったら、珠ちゃん達のために門を開けようと待機してくれてたらしい。
いや、待機っていうか戻ってくるのを察知しただけか。
兎族だから耳も良いし、色々探知スキルも持ってそうだし。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「大した手間じゃないしね。それじゃ、いってらっしゃい」
「はーい。いってきまーす」
門を閉め直して手を振る兎さんに挨拶して、市場へ向かって移動を再開する。
お礼のスリスリをやってた珠ちゃんも、てってっと小走りで追いついて来た。
太郎、無駄にバランスとるの上手いな。
いや別に無駄じゃないけどさ。
……なんか少し離れた場所からモニカさんが悔しそうな顔で見てるのが視界に入った。
さっきの兎さんとのやり取りを見てて、そういう役目は自分がやりたいのにって事だろうか……?
兎さん、逆恨みで地味な攻撃されなきゃ良いんだけど。
いや、まぁいくらモニカさんでも、流石にそんな事はしないか。




