436:戻せるか試そう。
とりあえず、手に持った石板を地面に置き直しておこう。
いくらそんなに大きくないとはいえ、石なだけあってそれなりに重いし。
「なあ」
「はい?」
「それ、お前が吹いたらどうなるんだ?」
「……判りませんけど、あんまり試したくは無いですかね」
唐突に嫌な疑問を持ち出してくるジョージさん。
せっかく綺麗な板になってるのに、要らない事してグロい物に変えたくは無いぞ。
「まぁそりゃそうだが、さっきのコイツみたいに余波が当たる事も有るだろうし、一応知っておいた方が良くないか?」
「あぁ、確かに……」
もし戻るんだったら、これを誰かが持ってる時に【妖精吐息】をかけたら、手の上が酷い事になったりするかもしれないのか。
……手の上ならまだ良いけど、お財布やポケットの中だと悲惨だな。
そこまで息の効果が届くかは知らないけど。
「んじゃ、一応やってみますか。……戻ったらどうしましょう」
「ん? 花壇にでも埋め…… いや、お前の魔法で焼いてその辺に埋めとけば良いだろ」
何で花壇は考え直したんだ。
……あぁ、花が変な物を養分にして、おかしな成長とかされたら困るからか。
私を名指しするのは、死体でも魔法に強いかもしれないからかな。
単に普通の火を持って来れば良い気もするけど、問題無く焼ける人が居るならそっちにやらせた方が早いし。
「……お、良かった」
覚悟を決めて【妖精吐息】を吹いてみたけど、生の状態に戻る事は無いらしい。
「本体が死んだ後なら変化はしないらしいな」
「その様ですね」
ふーんと言った感じに呟くジョージさんと、相槌を打ちつつメモに書き込むライサさん。
あぁ、これも一応記録しておくんだ。
まぁ当然か。
「さて、そんじゃ戻るかね」
「はい。ありがとうございましたー」
立ち上がって膝を払うジョージさんに頭を下げる。
「あぁ、どうせお前が来るからって花壇の雑草は残してあるから好きなだけ食って良いぞ」
「お、それはありがたいです」
……でもそれ、職員の仕事がこっちに来ただけとも言わないかな。
まぁ良いんだけどさ。
仕事を押し付けられたんだとしても、MPって言う報酬がちゃんと有るんだし。
ていうか、お金あげるから吸わずにむしってとか言われる方が困る。
「では、私も受付に戻らせていただきます。お疲れ様でした」
「あ、はーい。ライサさんもありがとうございましたー」
本人は喜んでやってるっぽくても、私のせいで仕事が増えちゃってるからなぁ。
いや、それは私がどうとかいうより【妖精】って種族のせいとも言えるけど。




