433:要望を伝えよう。
「やる前から死にかけてどうすんだよ……」
呆れつつも一応回復してあげるジョージさん。
まぁ実験するならするで、やってる最中に別の原因で死なれたら困るか。
「ありがとうございます。ジョージ様、せっかくですので破壊をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「あいよ。ん、これで切れってか?」
カトリーヌさんが【魔力武具】で作った自分よりも巨大なナイフの柄を、回復のためにしゃがんでいたジョージさんに差し出した。
どうせ死んで全回復する予定だからか、サイズも強度も大盤振る舞いだな。
まぁ普通の刃物で石を切るのは…… いやジョージさんなら普通にできそうだけど、刃が欠けたりしても困るもんね。
まぁこの人の持ってる品が、そんな脆い物とは思えないけど。
いや、別に脆かったとしても切らなきゃ良いだけか。
棒か何かで叩いたら、簡単に砕けるだろうし。
「はい。私が死ねば消えますので、判りやすいかと」
「いや死んだらそっちも消えるんだから、どっちにしろすぐ判るけどな。ま、切れ味が良いのは楽で良いけどよ」
落ちていた小石ごとゆっくりと地面を切り、滑らかに引き抜くジョージさん。
こりゃ良いなんて軽く言ってるけど、あれ私がやったら途中で引っかかって抜けなくなるんだろうな……
いや、そもそもど素人の私と比べて良い様な相手じゃないんだけどさ。
「さ、白雪さん。遠慮なくどうぞ」
「いまさら遠慮なんて無いけどね」
転がって手招きするカトリーヌさんの所へ向かう。
飛ばしたら周りも危ないから、直接吸わせるべきだろうし。
「ジョージ様、固まりましたら真ん中から二つにしていただいて、そこから少しずつ上に刻んで行っていただけますか?」
「ん? 別に良いけど、真ん中の次は首で良いんじゃねぇのか?」
「そんな勿体ない…… いえ、せっかくですので少しずつの方が、どの時点で死んでしまうかはっきり判りますので」
「言い直しても本音が隠れて無いじゃねーか。ま、もしかしたら心臓の時点で死ぬかもしれんしな」
「いや、普通の人はそこまで行かなくても痛みで…… 石化してても痛みで死ねるのかな……?」
ていうかよく考えたら、感覚が有るなら風化して崩れるのだって痛いなんてもんじゃないのでは。
風化なんてしたこと無いから解んないけど。
「どうなんだろうな。その辺はこいつじゃ判らんだろうし、他の奴で試すわけにもな」
「生身のままで胴体より太い角に貫かれて悦ぶ人ですしねぇ。まぁ解らないって事で置いておくしか無いか」
「では白雪さん、改めてどうぞ」
「はいはい」
転がったカトリーヌさんの真上に飛んでいき、上を向いた状態で静止してカトリーヌさんの顔の前に翅の先端を持って行く。
……よく考えたら、もしみじん切りになってもカトリーヌさんが死ななかったら、私が破片を吹いて生の状態にしなきゃいけないんだよなぁ……
さすがにそんなのはあんまり見たくないから、さくっと死んでくれると本当に助かる。




