431:今更気付こう。
「なんていうか、奇妙な人が多いですねぇ」
「いや、お前が言うなよ。まぁ確かに否定は出来ねぇけどよ」
私の呟きにジョージさんが呆れた顔でツッコんできた。
失礼な。いや、言い出したこっちの方がよっぽど失礼か。
「はい? あ、そういえばさっきは妖精さんの声が普通に聞こえてました!」
「いや遅ーなお前。こっちゃ気ぃ遣って小声で喋ってたっつーのによ」
私の声が聞こえないせいでジョージさんが突然発言した様に聞こえて、そこから私と話したことを思い出して驚きの声を上げるキャシーさんに、本気で呆れた顔で突っ込むジョージさん。
いやうん、理解してるものだと思ってた。
「ええと…… 縮んでいる間はあなたの声も小さくなっていたのよ? 同じサイズになったから、音量の基準も同じになっていたのでしょうね」
「あぁ、なるほどー」
ライサさんの苦笑気味な説明に、キャシーさんが納得して頷く。
……そういえば確かに二人とも声が小さかったな。
言われて気付いたって言ったら、またジョージさんにからかわれるだろうから黙っておこう。
「しかしキャシー、お前は本当に石化したいのか?」
部屋の中に向かって「もう少し良いだろう?」といったジェスチャーをしてからキャシーさんに問いかけるアリア様。
コレットさんに仕事してくれって言われたのかな?
「うーん、そうですねぇ。やっていただけるなら、それも良いかなーって感じです」
「ふーむ…… ま、まぁ、希望するなら考えないでもないが……」
キャシーさんの返事に引きつつ、一応前向きな返事を返すアリア様。
そんなマジかって顔するくらいなら、最初から言わなきゃ良いのに。
ていうかそれ、固めるの私なんだけど。
いや、別に大した手間でも無いし別に構わないけどさ。
「あ、ただ今度固めた時は、できれば表面に何か塗ってほしいですねぇ」
「ぬ? 何かあったのか?」
「白雪様に治して頂いた時、痛くは無かったのですが全身の皮膚にむず痒い様な感触がありまして。多分手入れで磨いていただいた時に表面が少し削れてしまっていたんだと思います」
「ふむ。それは確かに、長期間固めるなら保護しておかねば酷い事になりそうだな」
あぁ、お友達になってたおかげでヒリヒリせずに済んだのか。
いや、ヒリヒリで済む削れ具合だったのかは判らないけど。
……治したら全身の皮膚が無くなってたとか、怖すぎるから勘弁だよ。
いや、皮膚ならまだ良いけど目玉が削れるとかなりマズいんじゃ?
まぁ少なくとも、今は問題無いみたいで良かった。
「恐れ入りますが姫様」
「む?」
「固めるのは月末までお待ちいただけると助かります」
「ふむ。確かに、今は無駄に減らすほど人が余っていないか」
あぁ、罰だからキャシーさんを外してたけど、居ない間はその分他の人が忙しくなってたのか。
……私、ここの職員さんって猫撫でたり犬撫でたり人の訓練覗いてるイメージしか無いんだけど。
まぁ流石にそれじゃ回るわけもないし、ちゃんと仕事もしてるんだろうけどさ。
「ん、月末になると人が増えるんですか?」
少し気になったので、近くに居るジョージさんに聞いてみる。
「ああ、本国から次の船が来るんだよ。新しい開拓者や町に住みつく連中も乗せてくるから、町も賑やかになるんじゃねぇか?」
なるほど、開拓者って事は要するに人数制限緩和がオープン一週間後に有るって事か。
町の人も増えるなら家もたくさん建てなきゃだし、ライカさんは稼ぎ時だろうな。
……人が一杯増えるって事は、私が事故に遭う確率が跳ね上がるんじゃなかろうか。
まぁそこはこっちが気を付けるしかないよなぁ。
NPCの人達はともかく、事前に情報を仕入れないタイプのプレイヤーとかだと普通に触ろうとしてきそうだし。
ていうか最悪の場合、プレイヤーだと思われない可能性が有るし。
まぁそういう意味だと一番危ない目に遭いそうなのは、新規で何も知らずに【妖精】を引いたプレイヤーか。
船の来る時が近づいたら、アリア様に言って何か対策してもらった方が良いかもなぁ。
【妖精】だけじゃなくて他のレア種族も、知らなきゃ到着してすぐ死に戻る可能性が高いんだしね。




