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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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430/3659

430:感覚を聞こう。

「ではお願いします」


「はーい。元に戻った時すこし浮いてると思うんで、着地に気を付けてくださいね」


 お姉ちゃんの時に忘れてた注意点を告げ、はいという返事を聞いてから解除する。

 おっと、今度はあっちを忘れてた。


「ライサさん、近くに居ると何があるか判らないんで、少し離れておいてください」


「はい」


「……お前忘れてただろ」


「ちゃんと言ったから良いんです」


 いちいち指摘し(ツッコま)なくても良いじゃない。

 あ、実体化しはじめた。




「生き延びました……!」


「おう、お疲れさん」


 ぐーっと背伸びをする様にバンザイして、無事元に戻れたことを喜ぶキャシーさん。

 ……うん、怪我とかしてないから無事だな。


「最後のは酷いですよ、ライサさん……」


 キャシーさんが、じとーっとライサさんを見て文句を言う。

 まぁあれ、完全にうっかりミスだし言いたくもなるよね。


「ごめんなさい。お昼と夕食を奢ってあげるから、許してくれない?」


「絶対ですからね!」


 それで良いのか、キャシーさん。

 まぁ本人が喜んでるならそれで良いか。

 ここ数日は無給だったっぽいから、お金に困ってるのかもしれないし。



「ところで、石化は受けてる側からはどんな感じだったんだ?」


 ジョージさん、それ聞いてどうすんの?

 まぁ一応知っておく、というか記録しておくのかな。


「え? あー、なんて言いますか、指一本どころか視線すら動かせませんけど、それ以外は普通でしたね」


「ほー」


 相槌を打つジョージさんと、無言でメモを取るライサさん。

 【妖精】のスキルで起きる事だからそっちにも書いておくのか。



「前は見えるし耳も聞こえて、周囲の魔力も感じられるし頭がぼんやりするとかもなかったです」


「魔法の発動は試したのか?」


「周りに人が居ない時に一応やってはみましたけど、何も起きませんでした」


「ま、そうだろうとは思った。完全に受ける事しか出来なくなるんだな」


「なんか私もよく解りませんけど、頭の中で喋ったらその子たちには聞こえてたみたいですけどね」


 うん、石にした本人でその子たちを喚んだ本人な私もよく解んない。



「いやー、それにしても、ある意味では快適だったかもしれません」


「あん?」


「だって、お腹は空かないし疲れる事も無いし、先輩たちが綺麗にお手入れまでしてくれるんですよ? ただ誰とも話せないから、周りに人とか居ないと暇なのが難点ですけど」


「いや、良いとこだけ見りゃそうだろうけどよ……」


 若干困惑気味なジョージさん。

 うん、まぁそうもなるよね。

 罰を与えたはずなのに、なんだかんだで楽しんでるし。




「ふむ、では明日からロビーを飾る美術品に転属してやろうか?」


 あ、二階の窓からアリア様がニヤニヤと悪い笑顔で覗いてる。

 ……いやあれ、自分は仕事で忙しいのに楽しそうでずるいぞって顔だな。


「……少し魅力的な提案です」


「いや、それ普通に考えたら一種の処刑だと思うんだが……」


 何故か乗り気なキャシーさんに、引き気味にツッコむジョージさん。

 ていうか言ったアリア様もちょっと引いてるし。

 冗談で言ったのにって感じかね?

 うん、私も正直無いと思う。



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