427:支えてあげよう。
「じゃ、治療するんでこっちに出してください」
「……はっ、失礼しました。どうぞ」
ずっと見つめていられても話が進まないので、ライサさんに手を出すようにお願いする。
ていうかあれ、キャシーさんからすれば結構怖いんじゃないかな?
縮むのには慣れてないだろうし、顔が大分近いし。
何より相手が、初対面の【妖精】をお菓子で釣って自分の家に連れて帰ろうとする様な人だし。
「一気に治療した方が良いのですよね? では私も反対から吹かせて頂きますわ」
「うん、お願い。あ、キャシーさんを立たせてもらって良いですか?」
カトリーヌさんの申し出を受けつつ、ライサさんにお願いして動かしてもらう。
自分で出来なくも無いけど、その為にはライサさんの手を踏まなきゃいけないし。
いや、この人の事だから喜びそうだけどさ。
普段は危ないから、こっちからじゃないと触れる事すら出来ないんだし。
まぁ、今はサービスしなくても別に良いだろう。
どうせこの後、キャシーさんと一緒に【妖精吐息】を手に浴びるんだから。
かしこまりましたとキャシーさんの頭を摘まんで持ち上げ、手の上に足から降ろすライサさん。
……キャシーさん、あれ生きた心地がしないだろうな。
多分石化してなかったら、くにゅって感じでほとんど抵抗もなくまっ平らに潰れてるだろうし。
死にはしないけど、だから大丈夫だってものでもないよね。
「立たせておくのは難しいものですね……」
ライサさんが指を離すと傾いて倒れそうになり、その度に自分の体よりも太い指で摘ままれたり押さえられたりするキャシーさん。
……うん、なんか今の状況が一番の罰な気がしてきた。
治ったとたんに泣き出したりしない事を祈ろう。
「倒れない様にそのまま押さえておけば良いんじゃねーか?」
「それ治った瞬間に押し潰しちゃう可能性があるって、解ってて言ってますよね?」
横から提案してくるジョージさんに、とりあえずツッコんでおく。
そんな「本当にやったら面白いな」みたいな顔で言われたら、反応せざるを得ないじゃないか。
「では、私が後ろから支えておきましょう。持ち上げる事は大変でも、そのくらいでしたら私の力でも問題ありませんので」
「すみません。では、よろしくお願いします」
カトリーヌさんがライサさんの手の端で膝立ちになり、キャシーさんの肩を掴んで支えたところでライサさんが摘まんでいた指を離す。
よし、これで治療が始められるかな。
寝かせたままでも吹けなくはなかったけど、背面とそっち側の内臓だけ石のままで死亡なんていう事故が怖いもんね。
「さて、それじゃ行くよー」
「タイミングは合わせた方が良いのでしょうか?」
「んー? まぁ、そこまでしっかり合わせなくても大丈夫じゃないかな」
「では、白雪さんが吹いたのを見てからこちらも吹きましょうか」
「あ、うん。それじゃ、改めて……」
息を吸いながら指を立て、雑なカウントダウンをしてゼロで一気に吹きかける。
おー、石の表面にすーっと肌の色がついてきた。
この調子なら、割とすぐに治せそうだな。




