408:大きくしてあげよう。
「で、あいつは何やってんの?」
「さっきシルクに行ってもらったから、すぐに出てくると思うよ」
「おっはよー」
お、言ってるそばからお姉ちゃんだけ出てきた。
シルクは中でバスローブとかを片付けてるのかな?
「おぉ、本当に小さくなってますね」
バルコニーに出てきたお姉ちゃんを見て、レティさんが立ち上がって歩いて来た。
「待ってレティちゃん、近い怖い」
「あ、すみません」
よく見ようとバルコニーにぐーっと顔を近づけてきたレティさんに、お姉ちゃんが抗議する。
ちゃんと喋れてるだけ、大きい相手にも大分慣れたみたいだな。
「しかし、相変わらず【妖精】の魔法は凄いものですねぇ」
「まぁその分消費も凄いみたいだけどな」
「だねぇ。【妖精】から見てもちょっと重めのコストかな」
「ま、そこまで連射するもんでも無いし問題無いだろ」
「そりゃね。こんなのそこら中でかけて回ってたら、すぐにお仕置きされちゃうよ」
これ、私が死ねば解除されるんだし。
ていうかまぁ、かけられたくない人は五秒も止まっててくれないだろうけどね。
無理矢理止めることは出来ると思うけど、そんな事したらその時点で逮捕だし。
「まぁそれはともかく、そろそろ元に戻って屋台に行かないか?」
「そうだね。おーい、シルクー……って早いね」
声をかけると同時に出てきた。
部屋で待機してただけ…… というかお姉ちゃんが寝てたベッドを綺麗にしてたのかな?
「浮いてから戻すんだっけ? シルクちゃん、よろしくー」
「そうそう。……浮かなかったらどうなるか試して良いかな?」
「いやー、事故が怖いし……」
「つーか事故られたら私らも困るから勘弁してくれ」
「それもそうか」
うん、万一デスペナとか貰ったら大変だもんね。
ログアウト前の夜ならまだしも、これから外に出て行くのにペナルティはマズいだろう。
「はい、戻すよー」
「いつでも良いよー」
お姉ちゃんが上空に連れて行かれたのを確認して、お友達状態を解除する。
あ、一応着地に注意しておいた方が良かったかな?
まぁ大丈夫だろう…… いや大丈夫かなぁ……?
「ほー、戻る時はこんな感じか」
「縮む時はどうなのです?」
「単にこれの逆って感じかな。頭の有った位置に出るっぽいから、立ったままやると誰かが受け止めないと怖い思いする羽目になる」
「あぁ、十数メートルの高さに放り出されるのですね」
「そうそう。あ、そろそろかな」
光になってたお姉ちゃんが実体化し始めた。
やっぱりちょっとだけ高かったかな。
「あいたっ」
……大丈夫じゃなかったよ。
何でその高さと速度で着地し損ねるんだ。
「何やってんだよ。ほら手ぇ出せ」
「うぅ、ぐねってなった…… ありがと」
足をひねって転んだお姉ちゃんを、アヤメさんが手を引いて立たせる。
あ、レティさんが回復してあげたみたい。
「言っておいてよぅ……」
「いや、忘れてたのは確かだけど、流石にあれで転ぶとか思わないじゃない」
「そりゃそうだ。あんたがトロいだけだろ、今のは」
「うぅ、ひどい言われようだよぅ」
「えぇと、その…… 今のは流石に擁護出来ませんね……」
「ぐむぅ」
レティさんに救いを求めるも、控えめにだけどばっさり切り捨てられるお姉ちゃん。
うん、まぁ今のは言われても仕方ないよなぁ……




