407:起こしに向かわせよう。
「……まぁとりあえず、入ったらシルクを向かわせるからゴロゴロしてて」
「はーい。って起きちゃダメなの?」
ドアを少しだけ開けて顔を覗かせてくるお姉ちゃん。
普通に開ければ良いだろうに。
「いや別に良いけど、着替えたままでしょ? もともと着てた服、どこに置いてるかシルクしか知らないんだよ」
「あー、そっか」
私の場合は机に置いてあったり懐にしまってたりだけど。
もしかしたらお姉ちゃんのも机に…… と思ったけど、置いてあったならそっかって言わないな。
あの部屋は何も無かったから、まず机を置くところからだし。
気付かなかっただけって可能性も無くはないけど。
「こっちから雪ちゃんの所に行くのは?」
「そりゃ別に構わないけど、特に意味無くない?」
どっちにしろシルクにやってもらう事には変わりないんだし。
「まぁそうなんだけどね。もしかしたらシルクちゃんに阻止されるかもしれないし」
「ん?」
「いや、一応私もあの家では部外者みたいなものだしさ。『ごしゅじんさま』のお部屋に侵入を許してくれるかなーって」
「あー、確かに。通して良いよーって言えば大丈夫だろうけどね」
何も言わなかったら「大人しくしてなさい」って感じで、抱っこされて部屋に連れ戻されるかも。
「まぁ言ってはみたけど、ゴロゴロしてれば良いならそうするんだけどね」
「じゃあ別に良いじゃないの……」
「あっはっは。じゃあ中でねー」
「はいはい」
お姉ちゃんが顔を引っ込めてドアを閉めたのを確認して、ギアを用意してベッドに転がる。
さて、中だと数日経ってるはずだけど、何か状況は変わってるかな?
知ってる予定はカトリーヌさんのベッドの様な何かが届いてるくらいだけど。
あ、あと塔が出来てるのかな。
……あー、やっぱりなぜかおふとんがぬくい。
でもお姉ちゃんを戻さないといけないし、あんまりのんびりし過ぎてもいけないな。
まぁ向こうも二度寝してそうな気もするけど、お姉ちゃん一人ならともかく組んでるアヤメさんやレティさんが困るだろう。
……レティさんは嬉々としていじくりまわしそうだから、困るのはお姉ちゃんかもしれないけど。
「おはよ。今日も一日よろしくね」
シルクを呼んで挨拶して、抵抗する事の無駄さを知っているので脱力したまま待機する。
うん、相変わらず良い手際だ。
「それじゃ…… うん、お願い」
こちらが口を開くとすぐにお姉ちゃんの部屋の方をちらりと見て、笑顔で頷いて部屋を出て行った。
話が早くて楽だなぁ。
さて、私はバルコニーで待機してるとするかな。
着替え終わったらシルクが連れ出して来てくれるだろうし。
「おはよー」
表に出ると庭に二人が居たので、とりあえずバルコニーの端から手を振って挨拶しておく。
「おはようございます」
「おーす。結局あのままだったんだってな」
「うん。アヤメさんが帰った後も色々有ってね」
「ああ、大体はミヤコに聞いたよ」
「面白そうな時に別行動を取ってしまいました……」
結構本気で残念そうだな。
まぁ確かに色々と面白くはあるだろうけどさ。
「あー、まぁ別にいつでも使えるんだから良いだろ?」
「そうそう。ところで、あっちはどうだったの?」
「とても良かったですよ。全身をほぐして頂いたおかげか、こちらでは日を置いているはずですが、それでもすこぶる良い調子ですね」
「あー、マッサージの後って良いよなー」
……アヤメさん、わかるわーって顔してるけど、ちょっとだけ悔しそうなのは何なんだ。
あぁ、自分の時は痛い思いしたのに……って事かな?




