405:誰なのか聞こう。
「まぁ要するにこれまで通りで何も問題無いって事だね」
「うん」
一言にまとめるお姉ちゃんに同意しておく。
声だけで怯えられなくなっただけマシってものだ。
「それと雪ちゃんが妖精さんだってことも判ったわけだし、ついてきた理由も解決だね」
「はい。すみませんでした」
「あー、良いって。あ、そうだ」
「は、はい!」
「いや、そんな緊張しなくて良いんだけど」
別に変な事言うつもりは無いからさ。
「大丈夫大丈夫。人に無茶な要求をする様な度胸、この子には無いよー」
「ええい、事実だけどうるさい」
「そ、その、なんでしょうか」
「あ、ごめん。嫌なら言わなくても良いんだけど、ゲームの中だと誰なのかなって」
「あー、雪ちゃんだけ知られてるのは不公平だって事?」
「いや、別段そういうつもりは無いけど。単に気になっただけかな」
そんな「言わなきゃいけない」みたいな感じにしないでほしい。
別に判らないなら判らないで良いんだし。
「えっと、その……」
「あ、無理にとは言わないよ?」
「い、いえ、言えないわけじゃないんですけど……」
「何か雪ちゃんには言いづらい理由でもあるのかな?」
「えっと…… 先輩が帰る時に一緒に侵入しようとしてる人が居ますよね」
「ん? あーあー。うん、居るね」
全く懲りない人が。
「それ、私の仲間なんです……」
あー、なるほど。
後ろの方で止めてたり、止められずにモニカさんに脅されてたりしてた中の一人か。
「あっはっは。それは確かに少し言いづらいねぇ」
「ご迷惑をおかけしてます……」
「まぁ警備してる人が頼もし過ぎるから、全然困ってはいないけどね」
昨日なんてアリア様の護衛の隠密部隊まで居たくらいだし。
「あの人、何で死ぬって解ってて乗り込んでくるのかな?」
「毎回入り口で捕まってるのにねぇ」
しかもけっこう容赦のない殺され方してるのに。
「一言で言うと、おバカさんなんです……」
心底呆れた感じが伝わってくるなぁ……
「そんなに雪ちゃんのお家に来たいのかな?」
「いえ、最初の一回はそうだったみたいなんですけど」
「次からは違うんだ?」
「はい。……どうやら、モニカさんでしたっけ? あの庭師さんとお近づきになりたいみたいです」
お姉ちゃんの問いかけで、非常にしょうもない動機が明かされた。
……いやうん、物理的には近づいてはいるかもしれないけどさ。
「うーん…… んー?」
流石のお姉ちゃんもコメントに困っている様子。
「いやー、あれじゃ嫌われるって言うか、敵だと思われるだけじゃないかなぁ……」
「私達もそう言ってるんですけどね……」
代わりに突っ込んでみたら、流石に他の人は解ってたらしい。
単純にあの人が話を聞かないってだけなんだろう。
「いつか根性を認めてもらえるかもしれない! とか言って聞かないんです……」
「ま、まぁ害は無いみたいだし…… うん、まぁ誰なのかは判ったよ。ありがとう」
正確に判ったわけでは無いけど、次に中で見かければ判るだろう。
「えっと、申し訳ないんですけど、モニカさんに容赦は一切しなくて良いですって伝えてもらえますか?」
「え、仲間なのに? 伝えるのは構わないけど……」
「あの人、『殺されるのは正直キッツイけど、直接触れてもらえるとかご褒美だわ』とか言ってるんで」
「うん、しっかり伝えとくね」
思ってた以上にダメな人だったよ。
ねこパンチ程度ならまだ気持ちも解るけど、限度ってものがあるだろうに。
まぁあっちだと、ねこパンチされたりしたら私消し飛ぶけど。




