402:落ち着いてもらおう。
よし、ゆっくりではあるけどちゃんとついて来てるな。
土下座されたままだと、こっちから触れるわけにもいかなくてどうしようも無いからなぁ。
そうしてるうちに人が通りかかったりすると、困った事になるのは判り切ってるし。
相手に合わせてゆっくり歩いて、公園に着いたらベンチを探す。
良かった、ちゃんと有った。
座れそうなのがブランコとか上に乗って揺れる奴とかしか無かったら、どうしようかと思ったよ。
「そこ、座って。大丈夫、何もしないから」
ゆっくりとベンチを指さして相手を直接見ない様に、視界の端に映るくらいの方向を向いて声をかける。
……ヤバい、ちょっと泣いてる。
うぅ、私何もしてないよぅ。
ていうか逆に被害者のはずなのに。
泣きたいのはこっちだよー……
……まぁ、とりあえず座ってくれたな。
じゃ、私も横に……
「ヒィィッ!?」
「いや、座っただけでしょ……?」
悲鳴を上げて反対の端に寄られてしまった。
一応私もあんまり刺激しない様に、間を空けて端っこに座ったのになぁ。
でもそこまで全力で逃げつつも、立ち上がらないのはアレか。
さっきの座れっていう指示に逆らえないのかな?
別に命令ではないんだけど。
「とりあえず、それでも飲んで落ち着いて」
正面を向いたまま、端に寄り過ぎて半分空気椅子みたいになってる女の子に声をかける。
「ひぅっ、ごごっ、ごめっ、なさっ」
「良いから。あとちゃんと座って」
「はひぃっ」
怯えつつとりあえず謝ろうとしてるけど、全然言えてないからまずは落ち着いてほしい。
……あと本人は必死なだけなんだろうけど、妙な声で返事しないでほしい。
笑いそうになるから。
ぼへーっと自分の分を飲んで、相手が落ち着くのを待つ。
しかしなんと言うか、何もしてないのに罪悪感がすごいな。
あ、飲み終わったみたいだな。
「で」
「ひっ」
ええい、話ができないじゃないか。
「んー、困ったな……」
「そのっ、あのっ、ごめん、なさい……」
あ、でも少しはマシになったのかな。
「いや、怒ってないから」
「えぁっ、あっ、このっ、お金っ」
怯えて俯いたまま、空き缶を指さして財布を取り出そうとする。
あー、止めなきゃ。
「いや、要らないよ」
「で、でも……」
「私がお金を受け取ってる姿って、カツアゲしてる様にしか見えないから」
「えぅ……」
これ以上通報されそうな要素を増やさないでくれという、切実なお願いだよ。
「だからそれ、しまって。私が困るから」
「は、はいぃ……」
……ていうかさっきこの子、普通に納得したな。
うん、まぁ無理もないけど。
「えーっと…… 今日、学校からずっとついて来てたよね?」
「ひぃっ…… ごめ、ごめんなさ、い……」
「いや、だから怒ってないってば」
むしろ、今うっかりそっち見ちゃってごめんって思ってるくらいだよ。
せっかく向き合わなくて済む様に同じベンチに座ったのに。
「ひぅっ!?」
おっと、このタイミングで着信か。
見るまでもなくお姉ちゃんからだな。
私の番号なんて身内しか知らないし。
「ごめん、ちょっと待ってね」
一応断りを入れてから電話に出る。
「はい」
「遅いけどどうしたの? 引受人、要る?」
「要らないよ……」
何で妹が逮捕された前提で話をするんだよ。
そんな頻繁にある事じゃないでしょ。
「そっちこそどうしたの?」
「いや、今日は雪ちゃんが帰ってこないと私も始められないからさ」
あぁ、そういえばお友達になってるもんなぁ。
ログインは出来ても外には出られないか。
……一応、誰かに殺してもらえば戻れはするけど。
「で、遅くなるなら二人に連絡しないとだから確認をね」
「そっか。あー、そうだ、ちょうど良い。たすけてー」
「え、何事?」
お姉ちゃんなら見た目優しげだし、落ち着かせるのも得意だろう。
「ちょっとトラブルかな…… 私じゃ怯えられて会話にならないからさ」
「えっと、代わりに相手から話を聞いてほしいって事かな?」
「そうそう。うちから高校に行く途中に有る公園に居るから、来てくれないかな?」
「んー、雪ちゃんの通る道で公園って言うとあそこか。うん、待ってて」
「お願い。それじゃ」
ぷつっと電話を切って、鞄にしまう。
……えーと、ぱっと見で判るくらい怯えてるな、うん。
「その、呼んだ人は私と違って怖くないから……」
「うぅ……」
自分の精神を犠牲にして宥めにかかる。
とりあえず泣くのは勘弁してください。




