399:学校へ行こう。
お姉ちゃんへのツッコミも終わったので、諸々用事を済ませて就寝、起床。
むくりと起きて手を伸ばし、現実だと気づいて普通に立ち上がる。
しっかりしろ、シルクは居ないぞ私。
……うん、見られてなくて良かった。
お姉ちゃんが見てたら、散々からかわれた挙句にアヤメさん辺りにバラされるところだったよ。
流石に今のは恥ずかしい。
あー、しかし学校かー。
ちやほやされた後だから余計に憂鬱だけど、これが現実だからなー。
うん、仕方ない仕方ない。
むしろ怯えさせられる周りの人の方が不幸だわ。
自分の顔に文句なんて親に悪いってもんだよ。
……ていうかあんまり気にしてるとまたお母さんが拗ねるし。
「私に似ちゃってごめんね」と「でも沙雪、私よりはマシなのに」って。
こう言っちゃなんだけど、お母さんの見た目は私より更に凶悪だからなぁ。
あと、中身は逆に私以上に子供っぽい。
私も大概だってのは自分でも思うけど。
「雪ちゃーん、起きてるー?」
「はいはーい、起きてるよー」
「朝ごはん出来てるから、早くねー」
「はーい」
自分の親に失礼な事を考えてたらお姉ちゃんに呼ばれたので、さっさと準備を済ませてリビングへ。
「あ、そういえば雪ちゃん」
「ん?」
もくもくとご飯を食べてたら、向かいからお姉ちゃんが声をかけてきた。
「多分ゲームの影響なんだろうけど、声が大きめになってるから気を付けた方が良いよー」
「え? あー、確かにそうかも」
【妖精】やってる時は、大体大きな声を出すようにしてるからなぁ。
【聴覚強化】持ってても、大きめの方が聞こえやすいだろうし。
「雪ちゃんがおっきな声出すと、相手が余計に怖がっちゃうんじゃないのー?」
悪戯っぽい笑顔でからかってくるお姉ちゃん。
ふふん、その点は大丈夫なのだ。
「いや、外で口を開く事って無いし問題無いかな」
「うん、なんかごめん」
ていうかお姉ちゃん、私がぼっちなの知ってるだろうに。
迷惑が掛かるといけないから、なるべくお店にも入らない様にしてるし。
いやぁ、通販って便利だよねー。
……うちに来させられる配達のお兄さんには、ちょっと申し訳ないけど。
「それじゃ、行ってきます」
「はーい、気を付けてねー」
お姉ちゃんに手を振って、先に家を出る。
始業時間まではまだ結構あるけど、徒歩通学で時間がかかるので、早めに出ないと間に合わない。
とは言えそう遠くないので、電車とかを使って来る人よりは遅いんだろうけど。
まぁ徒歩で行けるからって今の高校選んだんだから、遠くないのは当たり前なんだけどさ。
電車やバスを使って、私が乗る便だけがら空きになってしまったら申し訳なさすぎるし。
……まぁ、いつも歩いてる道は不自然なくらい誰も居なくなっちゃったけど。
多分危険物が通過するからって避けられてるんだろうなぁ。
ぶつかったりする危険が減るのは、こっちとしても助かるけど。
ぼーっと黒板を眺めながら授業を受ける。
ただし先生を直接見ない様に気を付けつつだけど。
目が合うと涙目になる先生とか居るからなぁ……
……あっちからすれば、もう寝ててくれて良いからって感じなんじゃなかろうか。
普段は露骨に答える順番を飛ばされてるけど、たまにうっかり私を当てた先生がクラス中から「なんてことを……」って目で見られてたりするし。
いや、普通に答えるし別に文句無いから。
もう一年以上居るけど、暴れたりした事は一度も無いでしょ?
いや、今まで無かったからってこれからも無いって事にはならないって感じなのか?
交通事故だって大体そんな感じで起きるんだろうし。
ふー、やっと帰れるー。
椅子を引く音が大きかったりするだけで身構えられるから、迂闊に動くことも出来なくて神経使うよ、ほんと。
私がもっと図太ければ楽なんだろうけどねぇ。
しかし、なんか今日はいつもとちょっと違う視線を感じた気がする。
教室ではいつも通りなんだけど、移動中とかに数回。
……もしかして、【妖精】の私を見たプレイヤーが学校に居るのか?
いや、人数絞られてる状態のゲームで、プレイヤーが全国に散ってるんだからそんな偶然はそうそう無いだろう。
うん、残ってても迷惑だしさっさと帰ろう…… って教室掃除の当番だよ……
正直、学校でこれが一番困る。
一緒に当番になった人が可哀想って意味で。
サボって帰るわけにはいかないから私はちゃんとやるんだけど、良いからもう帰ってくれって空気がめっちゃ出てるし。
こっちとしても申し訳ないから帰ってくれて良いんだけど、私に押し付けるのが怖くて帰れないらしい。
こっちが帰って良いよって言えば良いんだろうけど、言っても怯えられて余計帰ってくれなくなるだけだし。
うん、これ以上怯えられない様に気を付けつつ、さっさと済ませて帰ろう。
長引かせない方が相手の子のためだ。




