397:恥をかこう。
リハビリルームで目覚めた……というか移動したのでギアを外して横に置く。
よーし……
「あれっ?」
今日は脅かされないぞーとバッと振り返って背後を確認したけど、後ろに誰も居なかった。
別にそこで待機してるわけじゃないのか。
「いらっしゃいませ」
「ほぅぁっ!? あ、どもです……」
せっかく振り向いたのに、最初に向いてた方から声をかけられてしまった。
これ私バカみたいじゃない?
「せっかくなので今日も来てみました」
「はい。歩いてこられますか?」
「あー、いえ、今日はその辺の物をいじるだけで済ませま……何してるんだろう」
なんか壁の向こうから、お姉ちゃんの「んわー!」って声が小さく聞こえてきた。
別の部屋に振り分けられるけど同じ施設に居るって感じなのかな?
「ええと…… 通路を駆け抜けている最中、障害に躓いて転がった様です」
「本当に何してるんだ……」
また変にはしゃいでるのか、お姉ちゃんは。
別にそこまで面白い所でも無いだろうに。
「ていうか、よその部屋の事言っちゃって良いんですか?」
「あちらでミヤコ様に確認は取っておりますので」
「あ、なら良いのかな」
……思いっきりすっ転んだところに現れて、他の人に何が起きたか教えて良いですかって聞かれるのか……
かなり恥ずかしいぞ、それ。
「誰にでも確認を取るわけではありませんが、白雪様とミヤコ様は関係者であると判断出来ますので」
「まぁそうでしょうけど、どういう情報からなんです?」
ちょっと気になるので確認。
まぁプレイするための会員登録で個人情報を入力してるんだし、運営が見ようと思えばすぐ判るだろうけど。
規約多くてちゃんと全部読んでないから、そういう判断の為に情報見て良いのかは知らない。
そういうの、きちんと読んだ方が良いのは解ってるんだけど長すぎてなぁ……
「一番判りやすい物としては、白雪様のプレイヤーIDがミヤコ様の招待用の物であるという事ですね」
「あ、そう言えばそうだった」
お姉ちゃんのテスター特典で先着順の筈の枠に入り込めたんだっけ。
……あれ?
そういえばアヤメさんとレティさんは誰を招待したんだろう。
まぁ私の詮索する事じゃないか。
使ってないだけかもしれないしね。
「ミヤコ様の状態異常が白雪様の使用した魔法によるものである事と、ログアウト位置が白雪様の住居である事もですね」
「あー。ていうかよく考えたら、昨日話してた時自分でお姉ちゃんって呼んでましたね」
「はい、そうですね。それも判断材料の一つです」
ゲーム内で呼んでるだけならわざわざこっちをチェックしてないとだけど、ここで自分で言っておいてなんで判ったのかって、アホなのか私。
「ま、まぁ色々あって身内だって事で確認したと」
ちょっと恥ずかしいので打ち切る事にした。
「はい。ちなみに双方の同意が有りましたら、お互いの部屋同士を接続する事も可能です」
「えっと、どういう理由でその機能が?」
「先に慣れた方が後発の方の修正をお手伝いされたい場合などですね」
「あー、なるほど」
あとは一緒に始めて二人とも修正が必要な時、一緒に慣らしていったりって感じかな?
「まぁ今日はそっちは良いか。それじゃ、こっちはこっちで道具を借りますね」
「はい。御用がありましたらいつでもお声かけください」
机の上の物をがちゃがちゃといじり始める。
特に用事は無いけど、どうせ居てくれるなら話し相手になってもらおう。
……これ、お姉ちゃんの方の邪魔にならないよね?




