395:大人しく寝させよう。
などと色々言っていると部屋に着いたので、ドアを開けてシルクを通してあげる。
中に入ったシルクがお姉ちゃんを片手に持ち替えておふとんをめくり、ぽふっと下ろした。
「ありがとね。……おー」
「いや何やってんの」
ばいんばいんと綿の上で跳ねて遊び始めるお姉ちゃん。
気持ちは解らないでも無いけどさ。
「わわっ、とっ、ぉわーっ!?」
「いや本当に何やってんの……」
跳ねているうちに少しずつずれてたらしく、斜めに跳ねてベッドから放り出されるお姉ちゃん。
まぁしっかりシルクがキャッチしてくれたけどさ。
「うぅ、ありがとうシルクちゃん……」
ぷにっと受け止めたシルクがお姉ちゃんをベッドに降ろし直し、そっと手を添えて横にする。
あ、おふとんかけた。
「シルクちゃんは優しいなぁ」
「いやうん、優しいには違いないんだろうけどさ。お姉ちゃんを見る目が完全にやんちゃな子供に対するそれなんだけど」
あらあら仕方のない子ねぇ、みたいな。
「……まぁ今の流れだと文句は言えないね」
「うん。普通に私も子供かって思ったし」
「ま、まぁとにかくお疲れ様だね」
あ、逃げた。
まぁ流石に今のは否定しようがないもんね。
「うん。それじゃシルク、行こうか」
呼びかけるとコクリと頷いてこちらに戻って来て、そのまま私を抱き上げる。
うん、まぁもう他に運ぶ人居ないもんね。
そうなるか。
「あれ、雪ちゃーん」
「ん?」
シルクがドアに手をかけようとしたところでお姉ちゃんに呼ばれて、ちょっと待ってとストップをかける。
「なんかログアウトしようとしたら、見た事ないメッセージ出てきたんだけど」
「あー、専用の部屋で感覚の修正とかって?」
「うん、それそれ。行った方が良いのかな?」
元々特殊な種族じゃなくても、似たような状態になったら出るんだな。
まぁ色々と感覚がおかしくなってたら問題だもんね。
「んー、縮んでから殆ど同じスケールの家に居るし、行かなくても問題無いとは思うけど」
「まぁ確かに、この中だけだと普段とあんまり変わらないね」
「うん。でもせっかくだし行ってみたら良いんじゃない? 普通の種族だと、殆ど行く機会は無いだろうし」
「あー、そうかも。使い方の説明とか有るの?」
「部屋に行ったらカメリアさん…… あー、キャラ作成の時に居たお姉さんが説明してくれるよ」
名前を憶えてないかもしれないし、一応補足しておこう。
お姉ちゃんの事だからスキップせずに普通に話しながら進めてそうだし、全く知らないって事は無いだろう。
「あー、あの人かー。よし、それじゃ行ってきまーす」
「はいはーい、おやすみー」
「おやすみー、っと」
ログアウトボタンをぽちっと押したお姉ちゃんが出ていったのを見届けて、ドアを閉めて自分の部屋へ帰る。
あ、ぴーちゃんがベッドに寄りかかってうとうとしてるな。
お茶でお腹いっぱいにでもなったんだろうか。
小声でお願いしてシルクに降ろしてもらい、そーっとぴーちゃんに近づいてほっぺをぷにっとつついてみる。
「ぴぁっ!?」
おー、良い反応。
ビクッと顔を上げて驚いた顔でこちらを見るので、ごめんねと頭を撫でておく。
ていうかラキはどこに行ったんだろう?
あ、居た。
私の枕の横でくたーっと伸びてお休み中らしい。
すごいリラックスしてるなぁ……
これ、つっついたらビックリして反撃されかねないな。
迂闊な事は止めておこう。
痛いのは嫌だし、やっちゃったラキも悲しむだろうし、何よりシルクが怖くなりそうだし。
私がちょっかい出したせいでお仕置きされたりしたら、流石にかわいそうだろう。




