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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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392/3658

392:上司に叱られよう。

 よーしよーしと大きい動物を撫でるのと同じように、お姉さんの首をさすさすと撫でまわす。

 あ、口が開いてふあぁーって声が漏れた。

 おおう、声を出されるとけっこう喉が震えるな。

 まぁそこを震わせて音出してるんだし、当たり前の事か。


 ……頼むから、よだれは垂らしてこないでね?



「さて、こんなもんで良いですか?」


 首をぽぽんっと軽く二度叩き、ふわっと下がってお姉さんの視界に入る。

 音で何となく察せてたけど、しっぽがめっちゃブンブン振られてるな……


 上を見ていた顔を前に向け、こちらを見……

 たと思ったら、こてんと横に転がって仰向けになるお姉さん。

 いや私から見ればこてんじゃなく、ずどぉん……って効果音の方が似合う迫力だけどさ。

 見下ろしてるならまだしも、地表に居たからやや見上げるくらいの視点だったし。

 ていうか何してんだこの人。



「きゅーん」


「えー……」


 仰向けのままのけ反って、逆さでこちらを見て鳴き声を上げるお姉さん。

 だからそんなわんこみたいな声出されても、こっちは戸惑いの声しか返せないんだってば。


「えーと…… 服従のポーズ……? おなか見せてるし……」


 流石のお姉ちゃんも戸惑いつつも、一応推測して呟いてる。

 ほんとだ、ぺろっとおへその上まで服をめくってる。

 ……お腹冷えるよ? いや、そんな心配するような気温じゃないけど。


 そんな期待に満ちた目で見られても困るんだけどなぁ。

 どうしろって言うんだ。

 いやうん、多分これ、お腹も撫でてって事なんだろうけどさ。




「んぎゅふっ」


「おわっ!?」


 どこからともなく飛んできた布の袋が、お姉さんのむき出しのお腹にどすっと落ちた。

 あの形と重量感からして、多分砂か何かが詰まってるんだろう。

 ……砂鉄じゃないよね?


「おら、調子に乗ってんじゃねぇぞアホ犬。いい加減に仕事しやがれ仕事を」


 暗闇からジョージさんの声が響く。

 うん、ごもっとも。



「えーと、大丈夫ですか?」


 苦し気な声を上げていたので、一応安否を確認してみる。

 まぁ着弾でうめいた後は特に苦しむ様子もなく、普通にお腹から袋を降ろしてるから無事だろうけどさ。


「はい、大丈夫ですよぉ」


「喋ったー!」


「いやいや、それ普通の事だからね」


 まともな返事が返ってきたことに驚きの声を上げるお姉ちゃんに、一応ツッコんでおく。

 なんだと思ってたんだ。

 いやうん、わふっとか言われるんじゃないかとか、私も少しは思ったけど。



「ふふっ。ありがとうございました」


「あ、いえ」


 きちんと座り直して、正座でぺこりと頭を下げて礼を言ってくるお姉さん。

 最初に少し笑ったのは、そりゃ喋りますよーって事だろうか?


 しかしまともに喋ると、見た目と同じで優しい感じのする綺麗な声だな。

 こうして普通にしてると素敵なお姉さんって感じなのに……




「それでは失礼します」


「あ、はい。お仕事頑張ってください」


「ありがとうございます。ミヤコ様も、またいずれ」


「えっ、あ、はーい」


 お姉ちゃんの返事を待ってから、フッと消えて立ち去る犬のお姉さん。


「雪ちゃん、今のって私にも撫でさせるぞって事かな……?」


「いや、うーん、どうだろ……」


 正直、有り得なくはなさそう。

 まぁお姉ちゃん、犬は好きだし良いんじゃないかな。

 多分言ったら普通に返されるだろうから黙ってるけど。




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