386:可愛がられよう。
おっと、そんな事を考えているうちにアリア様の実体化が始まってる。
ん、ちょっと高かったかな?
まぁ実体化直後はゆっくり下りていくんだし、足首を痛めたりすることもないだろう。
ていうか痛める可能性が有ったら、コレットさんが受け止めるために待機してると思うし。
「ふむ……」
ふわりと着地して、体の各部をごそごそ動かしながら呟くアリア様。
「何か変になってます? 大丈夫ですか?」
「いや、特に問題は無いぞ」
「なら良かったです」
「しかし、今の今までその大きさだったと思うと、何やら妙な感じだな」
「まぁ普通はそんな体験する事なんて、まず無いでしょうしねぇ」
「うむ。……白雪、少しここに乗ってみてくれるか?」
「え? 良いですけど」
なんか左手に乗れと言われたので、素直に飛んで行ってぷにっと着地。
「うーむ、私もこの様な感じになっていたのだなぁ」
手の平に私を乗せて、いろんな角度からしげしげと観察するアリア様。
他意は無いんだろうけど、あんまり見つめられるとちょっと恥ずかしいぞ。
ってなんか右手が近づいて……
「ぉふっ。あの、触るのは良いんですけど、もう少し慎重にお願いします……」
「おっと、すまない。意識が逸れてしまっていた」
アリア様はちょっとお腹をつんってした程度の感覚なんだろうけど、こっちにしてみれば丸太でどつかれる様なものなんだからさ。
お友達になった人ならともかく、私は普通に壊れちゃうんだから気を付けてもらいたい。
まぁアリア様はよく解ってるはずだし、今のは本当についうっかりって所だろう。
ていうか下手に追及したりしたら、またなんか贈られそうで怖いし。
……って、なんかどこからか回復魔法が飛んできた。
まぁジョージさんだろうな。
どむっと押されただけだったから痛みは無かったけど、一応ってところかな?
「さて、すまなかったな。もう良いぞ」
「あ、はーい」
アリア様の手からテーブルへ戻……ろうとしたら、ソニアちゃんが手を出してこっちを見てた。
うん、そこに行けば良いのね。
「わーい……」
「いや、まぁ喜んでくれるのは良いんだけどさ。私、そんなに良いものじゃ無いと思うよ……」
無邪気な笑顔で喜ぶソニアちゃんに、一応ツッコんでおく。
「んーん…… 雪さん、ちっちゃくて、可愛い、よ……」
「むぅ」
素直に褒められると返事に困る。
現実だと可愛げなんて要素は一切存在しない顔だしなぁ。
「それに……」
「ん?」
「雪さんも、同じ、じゃないかな……?」
「同じ?」
「ん…… 自分じゃなかったら、可愛がると、思う……」
「あー、うん。まぁそれは否定できないかな」
実際さっきお姉ちゃんを縮めちゃった時も、ちっちゃくてかわいいなーって感じになってたし。
「だから、私も、可愛がる……」
「いやいやいや」
はっきりと宣言して、そーっと私の頭を撫で始めるソニアちゃんにツッコむ。
うん、言いたいことは解るけどさ。
それとこれとは別じゃない?
「だめ……?」
「うぅ、わかったよ…… でも、本当に気を付けてね?」
そんなしょぼんとした顔されたら、なんか私が悪者みたいじゃないの。
シルクと言い、小っちゃい子が悲しそうな顔するのはずるい。
「うん……気を付ける…… 雪さん、優しい…… ありがと……」
「ま、私から何かするわけでもないしね」
ほわっとした笑顔に戻って、諦めて手の上にぺたんと座った私をさわさわ撫でるソニアちゃん。
実際ちょっと恥ずかしいってだけで、テーブルの上に居るのも手の上に居るのもやる事は変わらないから問題が有るわけじゃない。
うん、妥協した私をそんな見ないでアリア様。
……なんか少し離れたところで、モニカさんがコレットさんに絞め落とされてる。
アリア様が元に戻ったから通してもらえたけど、ソニアちゃんと私の組み合わせを見て暴走しかけたんだろうか。
ってこれから登録作業しないといけないのに、担当者を落としちゃってどうするの。




