379:絞ってあげよう。
「はい、目を閉じてー」
ぴーちゃんをシャワーの下に立たせ、ぬるま湯で全身を流していく。
ちょっと寝てたから髪にも結構染みてるな。
髪に指を差し込んで傷めない様に軽く洗い流し、続いて胸部のもふもふへ。
むぅ、ふわふわした羽毛だからしっかり染みこんじゃってるな。
気にせずに浸かってたって事は、多少お茶の匂いが染みついても大丈夫なんだろうけど。
まぁ出来るだけ流してあげた方が良いだろう。
【魔力武具】で目の細かい櫛を作って、流水にさらしながら羽毛の隙間からお茶をかきだす様に梳いていく。
片手を下に添えて付け根から先端に向けてスッスッと撫でるように整えていくと、気持ち良いのか構ってもらえるのが嬉しいのか、ほんわかと嬉しそうな気持ちになっているのが伝わってくる。
うん、とりあえず痛くはないらしい。
添えた手で塊を外側に寄せ、お山の隙間に櫛を差し込んで重なっていた部分も水洗いしていく。
これ、離す前に反対側も軽くやっておかないと、引っ付いた所から染みちゃって無駄になるな。
で、手を添えてる下側も……と思ったけど、ここ水を当てづらいな。
普通の家にあるシャワーみたいにノズルを引っ張ってこれないから、裏側を流すのが少し難しいよ。
ぴーちゃんをひっくり返すわけにもいかないしね。
あぁ、そうか。
自分で水を出せるんだから、櫛の先から水を出すようにすれば良いんだ。
毛の根元側から水を出せば、普通に流すのよりも洗いやすそうな気がするし。
というわけで櫛の歯先を【座標指定】し、そこから【大洪水】でぷしゃーっと水を発射だ。
「ぴゃっ!?」
「あ、ごめん。ちょっとくすぐったかったかな?」
「ぴぅー」
驚かれたので謝ったら「大丈夫ー」っぽいお返事が来たので、そのまま作業を続行。
手と櫛をくるくる入れ替えて、交互に支えつつ綺麗にしていこう。
反対側のふかふかも同じように洗い流し、櫛を消しておく。
あんまり目が細かいと、羽の方は上手く通らないだろうしね。
「はーい、ばんざーい…… ごめん、やっぱ片方ずつね」
「そりゃそうでしょ。ぴーちゃん疲れちゃうよ」
「むぅ、ツッコむのにいいタイミングで来る……」
いつの間にかシルクはコレットさんを洗い終わっていたらしく、お姉ちゃんが連れてこられたところだったようだ。
私のうっかりを聞き逃さず、きっちりとツッコんでくるのは何なんだ。
いや今のは私が悪いけどさ。
とりあえず片方だけ羽を上げてもらって、シャワーで水を含ませては両側から手で挟んで軽く絞り、上から下へと水とお茶を入れ替えていく。
やっぱり付け根って言うか、人の腕に当たる部分の方が敏感なんだな。
まぁそこから下って全部羽だし、歯とか爪みたいな物だもんね。
触られれば根元に感触が伝わるから判るけど、神経が通ってるわけでは無いんだろう。
良く知らないけど。
きゅっきゅっと地道に絞って、片側を済ませて反対側へ。
同じ様に黙々と絞り続け、終る頃にはお姉ちゃんを拭き終わったシルクが帰って来ていた。
「あ、先にカトリーヌさんやってあげて。私はぴーちゃん絞っちゃうから」
「ぴゃっ!?」
「いや、羽とかをぎゅーっとね? 変な事はしないよ?」
なんか驚かれた。
そんな雑巾みたいに絞ったりする訳じゃないんだから、怖くないぞ。
片方ずつ羽を出してもらい、先程洗った時と同じように根元から先端に向けて絞っていき、水気を落としていく。
うーむ、流石に結構な量の水が入り込んでるもんだな。
んー……
これ、ふかふかの水気も落とした方が良いよなぁ。
よし、左手で持ち上げて、右手の小指側で軽く押さえて根元からぐいーっと。
おおう、思った以上に水を含んでた……
ていうか下を持った感触からすれば、何もおかしくはないか。
続けて外側と内側、最後に下もぎゅーっとね。
いやカトリーヌさん、別に変な事してるわけじゃないしそんなジロジロ見られても困るんだけど。
このまま放っておいたら、脱衣場がびしょびしょになっちゃうから仕方ないんだよ。
ぴーちゃんもまだ髪濡れたままなんだから、あんまりすりすりしてこないの。
ていうか私の頭揺らしすぎると、上に居るラキに怒られちゃうぞ。




