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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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368/3658

368:仕掛けてもらおう。

「にしても、そんな状態になって大丈夫なんですか?」


「む? ああ、護衛として、か?」


「問題が有ったらやらせてないってのは解ってますけど、一応」


「うむ、問題無いぞ。心配性だな、白雪は」


 ふふっと笑うアリア様。

 私が心配性っていうか、アリア様が大らかすぎるだけなんじゃないかなぁ?

 まぁそれだけコレットさんを信頼してるって事なんだろうけど。



「ふーむ。ではコレット」


 私の表情を見て納得が行っていないと思ったのか、アリア様が口を開く。

 げ、これ嫌な流れじゃない?


「試しに少しだけ見せてやると良い」


「かしこまりました」


 やっぱりだよ……

 何されるんだろう。



「では白雪様、これから仕掛けますので防いでみていただけますか?」


「え、ちょっ」


「痛みも危険もございませんので、どうかご安心を」


「それならまぁ…… どうぞ」


 攻撃されるんじゃなきゃ、まぁ良いけどさ。

 ていうかコレットさん、カップの中で膝を抱えて綺麗な姿勢で座ったままだけど、どう仕掛けてくるつもりなんだろう。



 そのまま少し待ってみたけど、コレットさんは微動だにしない。

 こっちが何か動いたら来るのかな?


「白雪様」


「はい」


「お気づきになられていない様ですが、既に取らせて頂きましたよ」


「……へ?」


「首に違和感はございませんか?」


「首? ……え、うわ、いつの間に……」


 言われて首に手を触れてみると、喉の左右というか頸動脈の上に一筋ずつ、お茶で線が引かれていた。

 触られた感触さえなかったんだけど……


 ていうかずっとコレットさん見てたけど、声かけられるまで水面は揺らぎすらしなかったぞ?

 ジョージさんがドア開けた時みたいに感知できない様にされてるのか、そもそも揺らさない様に動けるのか。

 いや、どっちでも良いな。どっちにしろ感知できない事に変わりないし。



「というわけで、どうだ?」


「あー、まぁ戻ろうと思えばいつでも戻れるって事は良く解りました」


 コレットさんって素手でも物を切ったりしてたし、その気が有ったらさっきみたいな感じで触られて、首から血をまき散らして死んでるだろう。

 いや、もしかしたら首から上が床に転がるのかもしれないけど。


「うむ、だから心配するでない」


「と言いますか【妖精】の方がその気で魔法をお使いになった場合、この状態でなくとも耐えられない事には変わり無いかと」


「あ、そうか」


 当たれば死ぬのは元々だったよ。

 うん、当たりさえすればだけどね。




「それともう一つ」


「はい?」


 え、まだ何かされるの?


「白雪、試しに形だけで良いから私を攻撃しようとしてみろ」


「なんかやる前から大体察せるんですけど」


「はは、まぁ体験した方が良く解るだろう? 好きなタイミングで、黙って仕掛けて良いぞ」


 アリア様が笑って「ほれ来い」と指で手招きする。

 むぅ、そう言われたらやってみるしかないか。



「ふぃっ!?」


 いくぞーと意識して体を動かそうとした瞬間、脇腹を指でぷにっとつつかれた感触が。

 ビクッてして変な声が出ちゃったよ……


 コレットさんの方を見ると、先程と同じ姿勢のままで座って微笑んでる。

 むぅ、やっぱり出入りした形跡がない……

 水面は静かなままだし、カップの周りにお茶も落ちてないし。


 でもさっきの感触、一瞬だけど確かに指だったと思うんだよなぁ。

 多分わざとだろうけど、マスカットの香りのお茶も付いてるし。



 試しにもう一回、コレットさんの方を見ながら……


「ひぁっ」


 またしても体を動かそうとした瞬間に、今度はお尻をぷにっとつつかれた。

 うぅ、やっぱり動いてる様に見えない……

 ていうかコレットさん、こっそり面白がってない?


「はっはっは。どうだ、仕掛ける事すら出来んだろう?」


「むぅ、仕掛けようと思って動いた時だけきっちり止めてくるんですね……」


 私の反応も含めて、面白そうに見ていたアリア様が得意気に言う。

 無意識にアリア様の方を向いたり、普通に近寄る分には何もされないもんなぁ。


 ……近寄りながらもう一回試してみたら、右足をむにゅって揉まれた。



「えーと…… コレットさんも触ります?」


「はい、是非」


 試しに足を指さして聞いてみたら、真顔で頷かれてしまった。

 むぅ、実は触りたかったのか……




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