358:ナイフを渡そう。
「ぴぅ」
使ったタオルをまとめておいて椅子をボックスにしまい直したところで、ワガママ言う子をシルクに引き渡したぴーちゃんがぱたぱたと戻って来た。
タオルはそのまま戻すわけにもいかないし、置いておいてシルクに任せよう。
さて、ぴーちゃんが構ってほしそうにこっちを見てるけど……
ラキと同じくらいお願い聞くのも、なんかせっかく頑張ったラキに悪い気がする。
でも他の子たちはそういうおねだりする機会も無かったしなぁ。
他の子を放っとくのも不公平っぽい。どうしたものかな?
「うーん…… よし。それじゃぴーちゃん、しばらく好きに引っ付いてて良いよー」
「ぴゃー?」
「ほんとほんと。ほら、おいで」
少し離れて待機してたぴーちゃんに近付いて、頭を撫でてやる。
お、正面からしがみついてきた。
ぴーちゃんと違ってクッション無いけど、そこは勘弁してくれたまえ。
「はは。放っておかれて拗ねてしまったか?」
「まぁ好かれてるって事だと思いますし、悪い気はしないから良いですけどね」
ちくちくと何かを縫いながらこちらを見て笑うアリア様に、苦笑しつつ応える。
「それ、何を作ってるんですか?」
「今後の為に皆の分のバスローブをな。ぴーちゃん用の物も有るぞ」
「ぴゃ」
自分の名前が出て、嬉しそうな声を出しつつ私に引っ付いたまま振りむいて確認するぴーちゃん。
ああ、普通のだと袖に羽が通らないもんね。
バスローブって言うか貫頭衣って感じで、羽は出しっぱなしになりそうだけど仕方ないか。
ていうか今後の為って入り浸る気なんだろうか。
いや別に良いんだけどさ。
アリア様が作った家だしアリア様に貰った物件だし、元々貰い過ぎだと思ってるんだし。
「それはそうと、小さくなっている今ならラキの服を作る事が出来そうだと思ったのだが、ラキが着られそうな厚みの布が無くてな」
「あー、確かに。専用の糸で織らないとダメそうですねぇ」
「うむ。すまないが、手の空いた時で良いので少し作っておいてくれないか?」
「あ、はい」
ラキに着せる服に使う布ならそう大きくなくて良いだろうし、ちょっと頑張ればすぐに出来るかな。
ちょっと細かい作業になりそうだけど。
「おっと、あの織り機では少し目が粗くなってしまいそうだな。カトリーヌ、少し木材を用意してくれるか?」
「はい。白雪さん、作業場から少し頂いてきますわね」
「あ、うん。ってアリア様、今から作っちゃう気ですか?」
「いけないか? 簡素な物だからそう時間はかからんが」
「いえ、いけないって事はありませんけど……」
「では作らせてくれ。わがままばかり言ってすまんが、そちらの為にもなるから勘弁して欲しい」
「あ、いえ。迷惑とかではないんで、それは構わないんですけど」
また借りが増えるのかって事を気にしただけだし。
「あ、工具無いですよね?」
「おお、そういえばそうだな」
指示してもらって私が切ろうかと思ったけど、それだと精度がガタ落ちになりそうだ。
「じゃ、とりあえずこれをどうぞ」
果物ナイフくらいの刃物を【魔力武具】で作って、柄に軽く糸を巻いて見えやすくしてから刃を持ってアリア様に差し出す。
刃は出来るだけ薄くしてあるから、木材くらいなら抵抗なく切れると思う。
私と違って刃物も扱えそうだから、引っかかったりっていう問題も無いだろうし。
「っと、そのままじゃ置いておくのも危ないですね」
鞘とかないし、下手したら普通に置いても床に傷がつくかもしれない。
【石弾】で刃渡りより少し大きめの石を出して、少し魔力を流して転がらない様に形を整えてアリア様の横に置いておく。
「ありがとう。おお、ストンと入るな」
アリア様が軽く石に小刀を突き立てると、スッと根元まで入り込んで柄の部分で引っかかり、コンと軽い音を立てた。
……あ、やば。
「アリア様、ちょっと柄の端を持ったままでお願いします」
「む?」
横から石に触れて魔力を流し、刃が摩擦で抜けなくならない様に少し穴を広げておく。
まぁこっちは杞憂かもしれないけど、問題はもう一つ。
石からにゅーっと柱を生やして先端を枝分かれさせ、柄の前後に倒れない様にするための支えを作っておく。
「柄に糸を巻いたせいで上が重くなってたので、下手をしたらそのまま土台を切り裂いて転がっちゃいそうだったので」
「ふむ、確かにありえなくもないな。今の私なら怪我はしないであろうが、家が傷つくのは少し困るからな」
「まぁ小さい穴くらいなら簡単に塞げますけど、一応って所ですね」
本音は怪我しないって言ってもお姫様に刃物が転がっていくとか、そりゃヤバいでしょって事なんだけどね。
先に問題無いって感じで言われたら仕方ない。
……ていうか刺さってたとこの穴広げたの、少しでも違う角度で刺したら意味無かったな。
まぁ良いや。




