355:次の部屋へ行こう。
あれ? そういえば……
「てかさっきお姉ちゃんの匂い確認した時って、もうコレットさんも指曲げてましたよね?」
「はい」
すぐ近くに居たはずなのに、お姉ちゃんのイチゴの匂いしか判らなかったんだけど。
あー、でもコレットさんだしなぁ。
何があっても「この人だから」でなんか納得できちゃうんだよね。
「どうしたのだ?」
「あぁいや、それなのに嗅がせてもらうまで全然判らなかったなぁと思いまして」
「あぁ、そういう事か。察せているとは思うが、コレットがつい癖で遮断していただけだな」
「職業柄、常日頃から必要以上に己を認識させる事を控えておりますので」
もう無意識に能力使っちゃってるレベルなんだな……
そういえば魔力もお友達になってるのに普通程度にしか感じられないし。
姿も魔力も出す音とかも、「見えてる」んじゃなくて「見せてくれてる」って感じかな?
「あー、あくまで自分は裏方ですって感じですか?」
「そうですね。簡潔に言えば主の邪魔をせぬ様に、という事です」
コレットさんがお姉ちゃんの問いに一言で同意する。
ていうかこのゲーム、老廃物は無いけど体臭は有るんだな。
隠れてても嗅覚の鋭い魔物とかだと見つかっちゃうんだろうか。
あぁ、でも動物の匂いとかぴーちゃん達の匂いとか、普通に有ったな。
それなら人間にも有って当たり前か。
きつい匂いをさせる事なんて無いから、手に乗ったりしてても意識するほどじゃなかったんだろう。
「考え事してる時に、雪ちゃんが隣の部屋でお掃除始めると気になっちゃうもんなぁ」
「私は別に従者じゃないから良いんだい」
あとそれお姉ちゃんもお互い様だからね。
たまに何か倒して「わーっ!?」とか言ってるじゃん。
「さて、ではそろそろ次へ行こうか」
「はい。次はどこへ?」
「風呂の横にタオルなどを置いている部屋が有っただろう? そこへ頼む」
「はーい」
アリア様に返事をしてコレットさんの手に乗ったラキを回収しようと思ったら、なんか目を離してるうちにコレットさんのウサ耳の間に配置されてた。
……うん、まぁ乗せていってくれるなら構わないけどさ。
二人を乗せてスーッと移動するシルクの後ろを、ぴーちゃんやカトリーヌさんと一緒に追いかける。
「私もぴーちゃんに乗せてもらえばよかったよぅ……」
……移動速度に差の有るお姉ちゃんが、小走りでついてきながらぼやいてる。
まぁすぐそこだから、ちょっとだけがんばれ。
っと、ドア開けてあげなきゃね。
「はい、到着ですね」
「うむ。シルク、降ろしてくれ」
一声かけて降ろしてもらい、ふむふむと言いながらシルクの作った棚や自分が置いていったタオルなどを確認していくアリア様。
一通り見終わったら、今度はマッサージ台を念入りに調べてる。
なんだろう、細工師としての対抗心でもくすぐられるんだろうか。




