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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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353/3658

353:部屋に入れよう。

「しかしこうして見ると、雪ちゃん家ほんとでっかいねぇ」


 玄関の前まで来て、お姉ちゃんが家の外観を見渡して呟いた。


「うむ、頑張ったからな」


 得意気に胸を張るアリア様。

 あんまりのけぞるとシルクの腕から落ちますよ?

 お互いにそんなヘマはしないだろうけどさ。


「アリア様、頑張りすぎなんですよぅ……」


「元のサイズであれば、作業が細かいだけで労力はさほどではないからな。言う程ではないぞ」


「いや、細かさもなんですけどね」


 そりゃ確かに外壁とかも普通に手で持てる程度だろうけどさ。

 それでも普通はそう簡単に作れる物じゃないでしょうに。



「まぁとりあえずいらっしゃいませ、かな」


 開いておいたドアをくぐり、シルク達に入ってくるように促す。


「お邪魔しまーす。わー…… ってそういえば、階段が無いんだけど?」


 ぴーちゃんの背中から降りてホールに立ち、きょろきょろするお姉ちゃん。


「いや、だって私達飛べるし。階段有っても使わないもん」


「あ、そっか」


「階段は細かい上にスペースを食うからな。取り払えるのは作る側としても作業量と自由度、双方の面から見て助かる」


「あー、そういう見方もあるのか」


 確かに通常サイズで見ても階段って地味に色々と大変そうだよね。

 強度とか角度とか一段の段差とか、角の滑り止めとか手すりとか。

 あ、角度は段差次第だからセットか。



「では…… というかシルク、降ろしてくれないのか?」


 家に入って私がドアを閉めても、そのまま腕に乗せられているアリア様とコレットさん。


「あー、多分移動は全部運ばれると思いますよ。私も普段そうされてますし」


「ふむ。まぁ無理に歩きたいというわけでは無いから構わんが」


「シルク様、私はあくまでただの従者ですので……」


 コレットさんの申し出に目を閉じて「だめですー」と首を振るシルク。

 メイドさんだろうと何だろうと、ここでは「お客様」だからお世話しますって事かな?

 ていうかコレットさんを「ただの」って言うのは無理が有ると思う。


「コレット、害が無い限りはしたい様にさせてやろうではないか」


「はい、姫様がそう仰るのであれば」


 ……コレットさん、仕方ないって感じで言ってるけどシルクの抱っこ、結構気に入ってない?

 さっきもアリア様と一緒にぷにぷにしまくってたし。

 表情も声も常に平静を保ってるから、感情は読み取りづらいけどさ。


 

「じゃ、どこ見ますか?」


「ふむ…… とりあえず、そこの部屋に入ってみてくれるか」


「はーい」


 ホールに面した一室を指されたので、ドアを開けに向かう。


「私が開けようか?」


「いや、別に良いって言うかお姉ちゃんも一応お客様じゃないの」


 開けながら背後についてきていたお姉ちゃんにツッコんでおく。

 今は大人しく案内されてなさい。


「むぅ、一応とか言われた……」


「いや現実だと一緒に住んでるから、お客様って感じがあんまりしないし」


「あー、それもそっか」


「まぁそういうわけで、私がやるからのんびりついて来れば良いと思うよ」


「はーい」


 返事をしつつ、何故か私の肩をぐにぐに揉んでから部屋に入っていくお姉ちゃん。

 別に構わないけど何がしたいのだ。



「ふーむ」


「何か気になる点でもありましたか?」


 何も置いてない部屋に入ってきてシルクから降り、壁などを見て回るアリア様に声をかけてみる。


「うむ。流石にこのサイズで見ると、粗と言うか納得のいかない所が見えてくる」


 むぅ。綺麗だと思うんだけど、十倍の大きさでこれを作っちゃう人から見ればそうなるのか。


「本音を言えばすべて回って手直しをして行きたいところだが……」


「いやいや十分満足してますっていうか、私からじゃどこがおかしいか判らないくらいですから」


「うーん、私も判んないかな……」


 首を傾げるお姉ちゃん。

 レティさんなら【細工】やってたし判ったりするんだろうか。



「本腰を入れるとなると時間もかかるし、そうとなれば白雪も承知してくれんだろうから諦めるか」


「そうしてください」


 うん、ただでさえ貰い過ぎだって言ってるのに、これ以上こっちの借りを増やそうとしないでほしい。




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