352:家に迎えよう。
「さて、まだしばらくこうしていたいのは山々だが、そういうわけにもいくまい」
ポチの背中の上で毛皮と羽毛をもふもふと堪能しつつ、アリア様が切り上げようと言う。
……言葉とは裏腹に、全く動く気が有るように見えないんですけど。
ぴーちゃんの羽、掴んだままだし。
「姫様、ぴーちゃん様が戸惑っておいでですので」
「む、すまんな」
コレットさんにツッコまれて羽から手を離すアリア様。
なんかぴーちゃんが羽を引っ込めて良いのか迷ってた様子。
「よしよし、乗せてくれてありがとうな」
アリア様がポチから降りて正面に歩いていき、そっと顔を撫でる。
そういえばよく考えたら土足で背中に乗ってたんだよね。
まぁポチは全く気にしてないけど。
「で、だ。白雪、ミヤコ、まだ時間は有るかな?」
「はい? 時間でしたら問題は有りませんけど、何かあるんですか?」
お姉ちゃんも問題ないと返事をする。
別にゲーム内で翌朝までかかったとしても、現実だとちょっとだけ夜更かしになるだけだしね。
「うむ。せっかく小さくなったのだから、この視点で家の中を見てみたくてな。構わないか?」
「あ、はい。もちろん大丈夫ですよ」
元々内装まで全部アリア様の作った家だしね。
見られて困る様な物も無いし。
「私も見たいなー」
「ていうかお姉ちゃんにも確認したって事は用事が有るって事だし、行くしかないんだけどね」
じゃなきゃわざわざ確認しないと思うし。
「あー、それもそっか」
「いや、無理にとは言わんがな?」
「雪ちゃんの巣を見てみたいのは本当なんで、大丈夫ですよー」
「はいはい巣って言わないの」
さくっと流してぴーちゃんにお姉ちゃんを、シルクにアリア様たちを家の玄関まで運ぶ様にお願いする。
入り口が四階くらいの高さに有るから、少なくともお姉ちゃんは自力じゃ入れないだろうしね。
「では頼む」
「失礼します」
それぞれに一声かけてシルクの腕に座る二人。
いや、なぜ早速ぷにぷにするのか。
まぁ当のシルクは優しく微笑んでるから、別に構わないんだろう。
「よろしくね、ぴーちゃん」
「ぴっ」
こっちは普通におぶさって、全力でしがみ付いてる。
ぴーちゃん、人に頼られて嬉しそうだな。
「ラキ、こっちおいでー」
放っといても自分で支柱を駆け上がってくるだろうけど、せっかくだから運んであげよう。
「で、ポチは…… うん、エリちゃんと遊んでて良いよー」
「やたー」
なんかエリちゃんも触りたそうだったし、可愛がってもらいなさい。
「んー、いーもの見られたし、私はそろそろ抜けて寝るねー」
「はーい、お疲れ様ー」
「うむ。おやすみ、めーちゃん」
ログアウトを告げるめーちゃんに手を振る。
いーものっていうのは、小っちゃいのがわんこの周りでわちゃわちゃしてる姿かな?
おー、なんかずっとめーちゃんが立ってた所、居なくなるとぽっかり空間が空くなぁ。
まだそこに来て間もないけど、物理的に大きな存在だから消えると結構な違和感が。
ていうか根っこの有った場所の土どうなってるんだろ。
居たところに穴とかも無いし、不思議な力で何とかなってるのかな?
「さて、それでは行くとしよう」
「はーい。シルク、ぴーちゃん、よろしくね」
お客様の輸送を二匹にお願いして、私は玄関のドアを開けに先回り。
例によってシルクの両手が塞がってるからね。
「エリシャ、少し頼みがあるのだが」
「はいはーい、何でも聞くよー」
「管理小屋の設備を借りて、湯を沸かして三杯分ほど茶の準備をしておいてくれ」
「はーい」
ポチを撫でながらしゅたっと反対の手を上げて、ちょっと待っててねと言って管理小屋へ向かうエリちゃん。
うん、嫌な予感がするっていうかこれ、ほぼ確実にみんなでお風呂の流れだよね。




