342:復活しよう。
もふっと頭を埋めたお姉ちゃんの上に、両方の羽を被せて全身を覆い隠すぴーちゃん。
うーむ、かなりぬくそう。
「お姉ちゃん、そのまま寝ないでね?」
「うー、いっそそうしちゃいたいくらい……」
「ぴぁぁ……」
胸元で喋るから、ぴーちゃんがくすぐったそうじゃないか。
いや、声かけたの私だけどさ。
「も、もうちょっと待ってね」
お姉ちゃんがぴーちゃんの羽の内側でもぞもぞ動いて、くぐもった声を送ってくる。
「無理しない方が良くない?」
「一応、頭では大丈夫だって解ってるから。さっきみたいに慌てなきゃ問題無いと思う」
「ラキが怒ってたの、よく解ったでしょ?」
さっき直接言ってたけど、改めて聞いておく。
「うん…… あれは襲ったって言われても仕方ないね」
でっかいっていうのは、それだけで強くて怖いんだからね。
あ、ラキが腕を組んで「解れば良いんだ」って顔で頷いてる。
これでもう威嚇されなくて済むかな?
「よ、よし。ぴーちゃん、ちょっと開けてくれる?」
「ぴぅ」
お姉ちゃんの言葉に従ってぴーちゃんが羽の囲いを少し緩め、顔を出せるように前に隙間を空ける。
お、羽の上側を持ってそろーっと顔出してきた。
「ひぃ、やっぱでっかい……」
ひゅっと引っ込んで、またそろそろ出てくる。
……なんか見てる分には面白いな。
引っ越しとか買われたりで環境が変わった動物が、移動用の箱の入り口から周囲の様子をうかがってるみたいだ。
本人的には笑い事じゃない辺りも同じか。
「あんまり無理するなよ? 別に急がなくて良いからさ」
「うむ」
「だ、大丈夫大丈夫。ぴーちゃん、ありがとね」
「ぴゃっ」
羽を開けてもらって、ぴーちゃんから降りるお姉ちゃん。
あ、そういえば土足だったな。
太ももをぱふぱふ払ってあげてる。
「よーし、ミヤコちゃん復活!」
「ほー。それじゃ、もう一回やってみても良いか?」
「……やったらレティちゃんに同じ事してもらうからね?」
「うん解った、絶対にやんない」
……うん、まぁそうなるな。
でもそれ、そもそも縮めるのにアヤメさんの協力が必要なんだけどね。
いや、無理矢理できなくも無いけど、それは流石に怒るだろうし。
「しっかしまぁ縮んだな。親指と同じくらいか?」
「そんな太くないもん!」
「わかったわかった、小指な、小指」
お姉ちゃんが変な所に文句を言う。
まぁ確かにそうかもしれないけど、別に良いだろうに。
「ちょっと隣に指立てて、比べてみても良いか?」
「隣にドンッて突くのは止めてね?」
「ん、ダメか?」
「アヤメちゃん、自分の目の前に自分と同じくらいの柱が降ってきたらどう思う?」
「あー、うん。『あぶなっ!?』ってなるな。やめとくか」
実際、大体同じって判ってるんだからやる意味ないしね。
「そういやミヤコ、今更だけどさ。白雪が色々やらかすのは離れて見てるスタンスだったのに、なんで急に立候補したんだ?」
「ん? あー、雪ちゃんのお友達となればぜひ一番乗りしないとって思って。最初のフレンドはアヤメちゃんに先越されちゃったしさ」
「いや、そんな理由かよ……」
「ていうかお姉ちゃん、実の姉から友達って逆に離れて行ってない?」
「はっ、しまった!」
いや、まぁ姉妹じゃなくなるわけではないけどさ。
お姉ちゃんもそこに気付いて「まぁいいか」って顔になった。
「よーし、それじゃ色々調べよっか」
「協力してくれるとありがたいけど、良いの? いろいろ変な事になるかもしれないのに」
「ほら、もうこの際だし。私も気にはなるしね。……お手柔らかにお願いしたいけど」
「まぁ止めてって言ってくれれば止めるし、大丈夫かな?」
「うん。それじゃ何からやる?」
「んー…… 耐久試験?」
「いきなり変なの来た! ……まぁ確かに、さっきの事も有るし気にはなるか」
うん、どこまで大丈夫なのかは大事だと思うんだ。
「じゃ、じゃあまずは引っ張ってみる?」
人差し指だけを立てた手をおずおずと差し出してきた。
「あ、うん。痛かったら手を上げてくださいねー」
「それ止めてくれない奴じゃない?」
ツッコミをスルーして右手でお姉ちゃんの手を覆うように掴んで根元を固定し、左手で人差し指の先を摘まむ。
「それじゃ行くよー」
「うん、やっちゃって。……ゆっくりね?」
うん、そりゃまぁ、一気に引っ張って千切れたりしたら洒落にならないからね。
……おー、指の形が崩れる一瞬だけ抵抗を感じたけど、伸び始めたらにゅーっと柔らかく伸びていく……
「うぅ、変な感じだなぁ。こんなことになってるのに、ちょっと強く引っ張られたくらいの感触しかなかった……」
「うわー、これまだ伸びるの……?」
もう人差し指がお姉ちゃんの身長より長くなってるぞ……
糸みたいに細くなっちゃってて、いつ切れるかハラハラするよ。
「あっ、ちょっ、ストップストップ! なんかちょっとチクチクする!」
「あ、うん。……アヤメさん、これ普段のお姉ちゃんの指の長さくらいじゃない?」
「あー、そうだな。見づらいけど大体そのくらいだろ」
「お姉ちゃん、小指も試してみて良い?」
「う、うん。ちょっと怖いけど良いよ」
伸びきった人差し指をテーブルに置くと、ちょっとずつスルスルと戻って行ってる。
あー、やっぱり良い匂いしてるなぁ。




