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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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338/3713

338:お友達になろう。

「いやいやー、きっと大丈夫だってー」


 完全な棒読みでエリちゃんのツッコミに反論してみる。


「雪ちゃん、自分でも全く信じてないよね」


「アリア様の話で思い当たる節が有り過ぎるしな」


「うん……」


 正直名前だけでもうお腹いっぱいだよ。

 どう考えてもまともな魔法じゃないもん。



「うぅ、でもどうせ覚えたんだから役場で見せなきゃいけないから…… ええい、仕方ないっ」


 えいやっとパネルをタッチして詳細を開く。


──────────────────────────────

 【神隠し(スプライトアウェイ)】 基本消費MP:100

  この魔法の発動から三十秒以内に対象の額に五秒間触れ続けることで、MPを追加消費してその相手を「お友達」にする。

  消費するMPの量は対象の能力などにより変動し、使用中は追加消費量の30%が維持コストとなり回復が不可能となる。

  発動時のMP消費量の増減により効果の強度を調整でき、発動後にも「お友達」に触れた状態で追加のMPを消費することで調整が可能。

  なお事前・事後調整による総消費量の変動が維持コストに影響することは無い。

  「お友達」は対象の死亡、使用者の死亡、使用者による解除のいずれかによってのみ解除され、その他の手段(ログアウトを含む)で打ち消す事は出来ない。

──────────────────────────────


「いや閉じずに見せてくれよ」


 ……そっとパネルを閉じようとしたらアヤメさんにツッコまれたので、しぶしぶ広げて手渡した。


 しかし維持コストが必要になるものが多いな。

 あーいや、【召喚術】も【純魔法】も別に【妖精】のスキルじゃないや。

 私がわざわざそういうのを使ってるだけだった。



「えーと、雪ちゃん……」


「聞きたくなーい」


 お姉ちゃんのとても何か言いたげな態度に、両耳を押さえて首を振る。


「あっはっは。うっさんくさーい」


「ええい、エリちゃんうるさいよぅ」


「しかしこれは中々……」


 うーん……と困った様な笑顔になっているカトリーヌさん。

 ……まぁ、しばらくしたらこんなのが自分のスキルに湧いて出てくるわけだもんなぁ。



「なんていうか、はっきりと解除する手段がないって書かれてるあたり酷いな」


「説明文で断言されてるって事は、本当に無いんだろうね」


 あー、基本的に嘘は書かれてないもんなぁ。


「てかこれ、お友達の所が粉の効果の時みたいに色違いになってるぞ?」


「あ、ほんとだ。……見なきゃダメ?」


「ダメって事は無いけど、どうせ雪ちゃん気になって見ちゃうでしょ?」


「……あー、そうかも」


 うん、多分今見なかったとしてもどうせすぐに見る羽目になるだろう。



「こっち貸してー。えい」


 アヤメさんの持っているパネルをこちらに向けてもらい、色違いの文字をタッチして新しいパネルを開く。


──────────────────────────────

 この状態異常にかかっている間、【妖精】の加護によりHP、MP、SPの回復量が30%増加し、通常時の肉体に比例した展延性を獲得し、痛覚信号が90%減少し、死亡時のペナルティが70%減少する。

 ただし魔力を扱う行動のほぼ全てにペナルティが科せられ、通常通りに行使することはほぼ不可能となる。

──────────────────────────────


 ……なにこれ。回復量アップに肉体強化に痛覚カットにデスペナ七割引きて。

 とりあえず、どうせ見せてって言われるんだしアヤメさんに渡してしまおう。



「えっ、うっわ、なんなんだよこの凄まじい効果は」


「いやいや雪ちゃん、いくらなんでもこれおかしくない?」


「だよねぇ…… まぁ一応マイナス効果も書いてあるけど」


「ユッキーユッキー、これ頭にハッキリと『状態異常』って書いてあるよ?」


「だまらっしゃい」


「はーい」


 見なかったことにしたいところを指摘するんじゃない。

 実際に見るまでの短い間くらい、デメリットの有る強化魔法くらいのイメージで居たいじゃないか。

 ……いや、そもそも名前の時点で頓挫してたな。



「雪ちゃん、この展延性を獲得っていうのは?」


「なんだろ。いや展延性が何かは知ってるけどさ」


 引き延ばしたり潰したりする力に対する強さ……っていうか粘り強さだったよね?

 ちゃんと覚えてないけど。


「まぁ体が強くなるって事で良いんじゃないか?」


「かな? メリットはメリットでまとめて書いてあるっぽいしそうなのかな」


 わざわざペナルティは分けて書いてあるんだし。



「ま、下のデメリットだけじゃどう考えても足りないし、どうせ書かれてない巨大な罠が有るんだろうけどな」


「うぅ、否定したいけどそうとしか思えない」


「いっその事、これも使ってみればハッキリするのではありませんか?」


「まーそうだねー。よっし、それじゃ……あれ?」


 カトリーヌさんの提案に乗っかってエリちゃんがまた実験台になろうとしたタイミングで、ソニアちゃんの部屋のドアが開いた。



「待て待て、そんな面白そうな事を私抜きで始めるんじゃない。私にも見せるが良い」


 出てくるなりそれかい。

 てかどうやって察知したんだ……って考えるまでもなくジョージさんか。

 アリア様が中に居たんだから近くには居るんだし、どうせまたこっそり見ててアリア様に教えたんだろう。


「あー、それは構いませんけど」


「あ、待って待ってー。雪ちゃん、私にやってみて?」


「え、何でいきなり? 危ないかもしれないのに」


「大丈夫大丈夫。事故が起きても経験値がちょっと減っちゃうくらいだし」


 まぁステータス減少はこれからログアウトだから関係ないけどさ。


「いや、それだけでも十分問題だと思うけど?」


「ま、やりたいって言ってるんだしやってやれば良いだろ」


「んー、パーティー組んでるアヤメさんがそう言うなら、別に私は良いけどさ」


「私も良いよー。あんまりペナルティ重ねすぎてたら、おにくが痛んじゃうかもしれないしねー」


 いつもの事だけど自分の体を食材みたいに言うんじゃないよ。

 



「じゃ、アヤメちゃんこれお願いね」


「あいよ」


 上着やカバンなど、外せるものをあらかたアヤメさんに預けて身軽になるお姉ちゃん。

 服は初期装備の奴じゃないみたいだけど、まぁ流石にここで着替えるわけにもいかないし、わざわざ着替えに部屋を借りるのも面倒なんだろう。


「よーし、それじゃこの辺で良いかな?」


 お姉ちゃんがテーブルから数歩離れて、よいしょと屈伸運動をしながら聞いてきた。


「うん。じゃ、じっとしててねー」


「はーい」


 お姉ちゃんがまっすぐ立って体の力を抜いた所で近寄って行き、顔の前で【神隠し】を発動する。

 おお、なんか両手がぽわって光ったぞ。

 これをお姉ちゃんのおでこに押し付け続ければ良いんだな。



「……んむー、なんかちょっとひんやりして気持ち」


 うわっ!?

 私が額に触れてる感想を述べていたお姉ちゃんが、その途中で突然白い光に包まれた。

 おお、完全に真っ白になって中が見えない……


 ん、あれ、なんか落ちていった…… って、あれ着てた服じゃないの?

 え、今お姉ちゃん裸?

 いや、流石に下着は無いな。 ……いや、それでも問題だと思うけど。


 あ、光が動き始めた。

 え、あれ?

 光がいくつもの欠片に別れてふわっと散っていったけど、そこにお姉ちゃんの姿が無い。

 ……え、死んだの?



 あ、いや、まだ終わってないな。

 散った光がまた集まって来た……ってなんかおかしいぞ。

 私が触れてた額の有ったあたりに次々集まってきて、どんどん密度が増していってる。

 おぉ、だんだん人の形になって来た……けど……


 いやうん、私から見てもかなり小さい。

 七十センチとちょっとって所?

 お姉ちゃんの元々の身長から考えると、【妖精】の半分も無いスケールだろう。



 お姉ちゃんの形になった光がだんだんと弱まり、少しずつ中が見え始めると同時にゆっくりと下降し始めた。

 っと、これ放っといたら多分そのまま落ちていくな。

 加速がつく前にわしっと正面から両手で腰を掴む様に持って、転落を防ぐ。

 ……うん、思いっきりお尻握っちゃってるけど仕方ないよね。

 落ちるよりはマシだろう。


 そういえばちゃんと服着てるな。

 あ、これ多分初期装備のだ。最初に会った時着てたし。

 エリちゃんが死に戻りした時もだけど、こういう時は勝手に初期装備が装着されるのかな。


 ん、目を開けたな。とりあえず声をかけてみよう。


「おーい、大丈夫?」


「わっ、雪ちゃんがいつもよりおっきい!」


 いつもよりってなんだ。

 そりゃ確かに現実だとお姉ちゃんよりかなり大きいけどさ。

 流石に今の状態と比較できるほどおっきくないよ。



 てか妙に声小っちゃいな。

 あ、【妖精】の声が聞こえないのと同じ現象か。


「いや、お姉ちゃんが小っちゃくなったんだよ」


「あー、なるほどー…… ってちょっ!?」


 ん?

 頷いて視線を落としたと思ったら、なんかいきなり慌て始めた?


「ちょーっ、ちょちょっちょっと、まっ、ちょまっ、ままままてまてまて待って待って」


「わわっ、何々いきなりどうしたのお姉ちゃん」


 両手でおへその近くにある私の親指をがっしり握りしめてきた。

 すっごい取り乱してるみたいだけど、なんだっていうんだろ?



「ちょ、ちょっと待って、はは、はなさっ、ないでっ、ねっ!?」


「え? あ、うん」


「たたたた、たか、すぎっ」


「あ」


 ……そうか。

 私はもう慣れたけどここ、私のスケールでも五階くらいの高さだった。

 お姉ちゃんから見ればさらに倍の十階で、しかも今は足がついてない上に自力で飛ぶ事も出来ない、命綱も無い、と。

 そりゃ怖いわ。




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