326:お暇しよう。
まぁなんにせよお風呂入れて良かったって事で良いのかね。
いや、別にうちにたむろせずに他の人みたいに宿を取ったりすれば、普通に入れるんだろうけど。
……あ、でも必要ではない施設だし、安い宿だと無いのかな?
どっちにしろ今の私には縁が無いんだけど。
「うおぉぉ……」
「ふむ、すべすべですね」
「うふふ。保湿効果もバッチリよー?」
「いきなり人の首を撫でるんじゃない!」
突然正面から撫でられて、レティさんの頭をスパーンとはたくアヤメさん。
うん、まぁそうなるよね。
「本当だったらマッサージもしてあげたかったんだけど、まだまだ複雑な動きを同時にするのは難しくてねぇ」
「ほう、マッサージですか」
あ、アヤメさんがちょっと助かったーって顔してる。
まぁ間違いなくヌルヌルに這い回られることになるだろうからなぁ。
でもジェイさんマッサージ得意って言ってたし、多分やられたらやられたで複雑な顔して諦めるんだろうな。
「うふふ。レティちゃんさえ良ければ、フルコースで体験してみる?」
「おや、良いのですか?」
レティさん、自分も入りたかったのか。
まぁ問題点をスルー出来れば、とてもいいお風呂みたいだしね。
私が連れてきたって事で、少なくとも今回は危害を加えられる事も無いだろうし。
……いや、レティさんは多分一人で来ても大丈夫だな。
ジェイさんとかなり波長が合ってるっぽいし。
「もちろんよー。あら、でもお家に帰らないといけないんじゃないのかしら?」
自分で誘っておいてツッコむのか。
いや、単に忘れてただけだろうけどさ。
「いえ、私は白雪さんに同行していただけですので大丈夫ですよ。ここで別れても問題はありません」
うん、まぁ呼ばれたのは私……っていうか私とカトリーヌさんだしね。
元々ここに来たのも面白そうだから付いてきたってだけだし。
……いや、アヤメさんを放り込むためか。
「あら、そうなのね。それじゃ、そちらにどうぞ。おねーさん頑張っちゃうわよー?」
……頑張っちゃうって言われるとアヤメさんやぴーちゃんだとひどい目に遭いそうなのに、レティさんだとなんか大丈夫っぽい謎の安心感があるんだよね。
むしろ逆に勝ちそう。
「はい。あ、ミヤコさん」
「ん?」
「これ、頂いた物です。次のお昼にでもお願いしますね」
「おー、良いやつだ。うん、任せて!」
あぁ、さっきのレタスか。
こっちの【料理】当番はお姉ちゃんだもんね。
そういえば次のお昼って事はこっちで数日後になるわけだけど、しなしなになっちゃわないんだろうか。
まぁお姉ちゃんならともかく、レティさんが言うって事は大丈夫なんだろうな。
「なーんか雪ちゃんが酷い事考えてる気がする」
……なんかバレた。
こっち見てたっぽいし、顔に出てたのかな。
チラッと見ちゃったし。
「それでは皆さん、私はここで失礼しますね」
「あ、そのまま落ちちゃう感じ?」
「いえ、あちらには戻りますよ。ただ、私が戻るまでには皆さんログアウトされていると思うので」
あぁ、「待たなくて良いですよ」って一応言っておいた感じか。
確かにもうそれなりに遅いし、明日は平日だしね。
いやまぁ遅いって言っても、こっちでしばらく待ったとしても誤差だけどね。
どっちにしろ現実の日付が変わる前にはログアウトするんだし。
「あー、そういう事。うん、それじゃまたねー」
部屋を出て奥へ行くレティさんに、ばいばーいと手を振るお姉ちゃん。
「あっちの二人はまだやってんの?」
「そうね。まだしばらくかかりそうかしらねぇ」
ロクさんの問いかけに対し、ジェイさんが即座に答えてくれた。
こういう時、確認が楽で良いな。
ていうかさわりだけって言ってたけど話し込んじゃうんだな。
まぁお互いに楽しんでるなら何も問題無いか。
「そんじゃ置いてくか。一応先に帰るぞーって伝えておいてもらえます?」
「うふふ、任せて。それじゃ、お帰りはこちらね」
あれ、なんか入ってきたとこと違う所の壁が開いた。
「あれ、こっちじゃないんですか?」
お姉ちゃんも気になったらしく、ドアを指さして尋ねてる。
「うふふ。そっちに行っても良いけど……ね?」
うん、これ行っちゃダメなやつだな。
「よし、アヤメちゃんごー!」
「今のフリで行くわけが無いだろうが」
ゴインとお姉ちゃんに軽い拳骨を落とすアヤメさん。
今日だけで一体何発ドツかれてるんだろう……
「うぅ、おバカさんになっちゃう……」
「大丈夫だ。元々だから」
「雪ちゃーん、アヤメちゃんがひどいよぅ!」
「いやー、自業自得だと思うよ?」
少なくとも変にイジらなきゃ叩かれることは無いんだし。
むしろ何で解ってるのにイジりに行くんだ。
軽くやってくれてる内に懲りなさい。




